Momo Acupuncture Clinic / Ise
身体を修理していく、ということ
院長コラム
開業して5年が過ぎました。
勤めていた頃、流れ作業で患者さんを診て処置していくことが苦痛でした。
針を打って、パルスをかけて、
楽になっていようがいまいがその日は終わり。
また来週来てください、と永遠に来院を促していく。
そういうやり方にずっと違和感がありました。
開業したら、目の前の患者さんに集中して、
最短で治っていくようにじっくり身体を修理していきたい。
そう思っていたので、自然と今のスタイルになりました。
針を刺したあと、患者さんはだいたい目を閉じてリラックスしてくれています。
そのあいだ、私はずっと身体を診ています。
鍼灸院のなかには、針を刺したら部屋を出て放置するスタイルのところも多くあります。
「置鍼(ちしん)」といって、針をそのまま一定時間置いておく方法で、その間に術者はほかの部屋で別の患者さんを診に行く、というやり方です。
効率という点では理解できますが、私にはそれができません。
針が入ってからも、身体はどんどん変化していきます。
筋肉の緊張がゆるんできたか、
呼吸が深くなってきたか、
顔色や手の温度はどうか。
そういったことを確認しながら、次の判断をしています。
ツボを取る順番も、身体の状態を診ながらその都度変えています。
最初に想定した順番通りに進むことは、むしろ少ないくらいです。
患者さんの反応を確認しながら
「ここに針を打ったらどうですか」
「さっきより楽になりましたか」
とやりとりしながら進めていきます。
症状が取れるツボを患者さんと一緒に確認していく、というイメージです。
身体が変化すれば、こちらの動きも変わります。
だから施術中はずっと手を動かしています。
部屋を出てしまったら、そういった変化を見逃してしまいます。
だから何人も同時に診ることができません。
施術中は目の前の患者さんにずっと集中しているので、他の方に意識を向けることができないのです。
ひとりの施術が終わってから次の方をお迎えする、というのがもも鍼灸院のやり方で、完全予約制にしているのもそういう理由からです。
予約が取りにくいとおっしゃる方もいて、それは申し訳なく思っています。
ただそこだけは変えられないので、どうかご理解いただけますと幸いです。
もうひとつ、絶対にしないことがあります。
「前回と同じだからこれでいい」と決めつけることです。
30年やっていると、ついパターンで動きたくなることもあります。
この症状ならこのツボ、この患者さんにはこのやり方、といった具合に。
ただ同じ患者さん、同じ症状でも、先週と今週では身体の状態が違います。
生活の変化、睡眠、ストレス、気候……
いろいろなものが身体に影響しているので、毎回ゼロから診るようにしています。
針を通して身体が「今日はここですよ」と教えてくれる感覚があります。
それを感じ取りながら進めていくのが私のやり方です。
施術中に何をしているのかと聞かれたら、
「ずっと身体と話しています」と答えています。
身体の声を聞きながら、少しずつ修理していく感覚です。
痛みや不調のある部分だけでなく、全身をしっかり整えていく。
30年やってきて、それが一番しっくりくる表現なのです。