先夜、らこちゃんが「なう」で呟いてくれて、急いで付けたテレビで、久しぶりに観ましたの。
1986/アメリカ・西ドイツ/107分
監督・脚本】ジム・ジャームッシュ
撮影】ロビー・ミューラー
音楽】ジョン・ルーリー
出演】ジョン・ルーリー/トム・ウェイツ/ロベルト・ベニーニ
私はこの監督がとても好きなの。
ナイト・オンザプラネットも、ブロークン・フラワーズも、コーヒー&シガレッツという短編も。
ロードムービーというジャンルというのが在るのか、移動していく、流離うって感覚も好きなんですの。
むかぁしの、テレビのルート66ってアメリカ映画とか、ローハイドとか。イージーライダーとか、テルマ・アンド・ルイーズも、旅芸人の記録だってある意味そうでしょうか。
ストレンジャー・パラダイスについては、前にも記事にしたんですが、この映画もジャーミッシュ・ワールドですの。
オープニング、街並みを捉える流れるようなロビー・ミューラーのカメラ、被さるトム・ウェイツの『Jockey Full of Bourbon』、黒白のざらりとした感触。
もうこれだけでもうジャーミッシュの世界です。
それぞれはめられて刑務所に入れられた二人の男が刑務所で出会い、同じ部屋に後から入って来たのは片言の英語を話すイタリア人。扮するのがジョン・ルーリー、トム・ウェイツ、ロベルト・ベニーニとくれば、面白くないわけがありませんよね。
ダウン・バイ・ロウって刑務所隠語で、気の合う仲間みたいな意味。3人のやりとりだけでも、いつまでも観ていたいぐらい。中でも一番の傑作は“I scream,you scream,we all scream,for ice cream”の合唱なの。。一緒になって歌いたくてたまりません。
あっさりと脱獄に成功してからも、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』と同じように、ストーリーなんてたいした意味はありません。
愛すべき人物、その場の雰囲気を、そこに流れる空気を満喫する映画。
沼地を歩く3人、沈みゆくボートを眺める3人、刑務所の部屋と何ら変わること
のない、見つけた小屋のベッド。
ベニーニが話すお母さんとウサギの話、別行動を取った3人を順に捉えるカメラ、
焚き火で一人うさぎを焼くベニーニの下に凍える二人が同時に現われる呼吸、“偵察”に行ったベニーニを遠くから眺める二人。
ホイットマン、ベニーニの英語の手帳、ビリヤードの8番ボール、書き出したらキリがない愛すべき場面の数々ですの。
それでも一番は、映画史に残る印象的ラストシーンでしょうか。
上着を交換し、握手すらしない二人、そしてジョン・ルーリーのこの一言、「お前が選べ、俺は反対に行く」
故淀川長治氏が「椅子から立ち上がることを忘れさせてしまうほどの見事さ」と
、讃えた極上のラストシーンです。
何かを強く訴えるようなメッセージは、何も無いの。人は独りで人生を歩いて行くもの。
時に知り合い同じ時を過ごしてもね。
どこか覚めた淡々とした視線が、不器用に生きていく人の背を、
優しく眺めているんですの・・