手もこんなに温かいのに、

私の手を握り返してくれる事は

もう2度と無いんですね。

そう言うと文子は号泣した。


裕之さん〜!


文子さん、、

貴女がこのように悲しむと

分かっていたから、


及川さんも、


裕之さんのご両親も、



貴女に裕之さんの事を

知らせなかったのです。


皆さんのお気持ちが

分かりますね。


は、はい。


それでも、僕は貴女が真実を

知る権利があると思いました。



それは、貴女にとって

裕之さんが

かけがえのない存在だからです。


そのかけがえのない存在が、

行方不明だと言うほど

残酷な事はありません。



ですから、僕は貴女にとって

例え辛い現実であっても

きちんと真実を知らせるべきだと

感じたのです。



はい。

先生が仰る通りです。


裕之さんが行方不明のままなら、

私の心は一生

落ち着かなかった事でしょう。


でも、こうして裕之さんが

私の元へ帰って来てくれた。


それがどんな姿であっても

これ以上嬉しい事はありません。


裕之さんのお母様。

明日からも毎日

裕之さんに会いに来て良いですか? 


勿論、勿論ですとも!


ありがとうございます。


文子さん、、

1つだけお尋ねします。

貴女は裕之さんに残りの人生を

全て捧げるおつもりですか?


此処に居る裕之さんのお母様も

及川さんもそれを危惧なさって、、


貴女はまだ若い。


人生を新たにやり直す事は

幾らでも出来るのですから。

すると、、


先生、私はもう2度と

裕之さんから離れません。


どんな時も

裕之さんの側に居ます。


意識の有る無しは関係ない。

裕之さんと一緒。

それが何より大切な事なんです。



裕之さんが私の全てだから。

文子は泣きながら、

三浦に笑顔でそう告げた


そうですか、分かりました。

皆さん、文子さんの幸せを

1番に考えていらっしゃる。


僕も同感です。

それでは、僕はこれで。


先生、

もうお立ちになるんですか?


はい。

これで僕の仕事は

終わりましたから。


今日の夕方の汽車で

この地を発とうと思います。


それでは、

今からホテルに寄って

松方社長にご挨拶して来ます。



先生、、


文子さん、裕之さんのお母様、

お二人ともどうぞ

お身体に気をつけて。



裕之さんのご回復を

心から願っております。



そうして、病院を出た三浦。

すると背後から、、

先生!

先生〜!


文子さん?

どうしました?


先生!

裕之さんが!


先ほど私が手を握って

裕之さんの名前を呼んでいたら

目を開けて、、


ん?文子か?


ここは?


裕之さんが

意識を取り戻したんです!


ですが、もう

医者は意識が戻らないと、、


そうなんです。

お医者様も診て下さって、


奇跡だって、、


そうですか。

文子さんの愛が奇跡を呼んだのかも

しれませんね。



本当に良かった。

どうぞ末長くお幸せに。


ありがとうございます。

先生、今日の夕方の汽車でと

仰いましたね。   



きっとお見送りに参ります。

それではその時に。


そして、三浦はホテルに戻り
松方社長にも別れを告げた。


裕之の意識が戻った?


ああ、それは良かった。

文子はそれはそれは

喜んでいたでしょう。


え?

先生はお帰りですって?


はい。

これで仕事も終わりましたので。


そんな、、

そんなにお急ぎにならなくても

良いじゃありませんか!


まだ先生を熟女パブにも

お連れしておりませんのに、、


アハハハ!

その節はお気遣いを

ありがとうございました。


是非連れて行って

頂きたかったんですが、


次の仕事が詰まっているので、

今日の夕方の汽車で帰ります。


そうですか、、

先生にもっとゆっくり滞在して

頂けると思っていたのですが、


お仕事でしたら、

仕方ありませんな。


いえ、ゆっくり

滞在させて頂きました。


8月の初旬からこのホテルに、、

それが、もう9月。

季節も夏から秋へ変わりました。


このような素晴らしいホテルに

ひと月あまりも滞在させて頂き、


生涯忘れられない優雅な気分を

味あわせて頂きました。


松方社長、

本当にお世話になりました。

この素晴らしいホテルを

これからもどうぞ

守っていかれて下さい。


次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像と動画をお借りしました🙏