この歌をいつも歌っている人。


貴方は誰なの?


ひろりんちゃん、、

彼は君の恋人だと思う。


私の恋人?



ああ、そうだ。

1年前の交通事故で

昏睡状態に陥ったひろりんちゃんを

毎日ああして見舞っている。


1年前の交通事故ですって?

何の事なの?


私が交通事故にあったのは

高2の夏休みよ。


家族で交通事故にあって

その時、両親は亡くなったって

話したわよね。


ああ、聞いたよ。

ただそれは、あくまで

ひろりんちゃんの記憶に過ぎない。


実際は、

ご両親は重傷を負ったものの、

命には別状なかった。


ただ、後部座席のひろりんちゃん

1人だけが運悪くぶつかって来た

トラックと座席に挟まれて

瀕死の状態になった。


ひろりんちゃんは、

すぐさま救急搬送され

命は取り留めたものの、

意識が戻らずもうすぐ1年になる。


じゃ、夢の中で病院のベッドに

寝ているのは、、


そうだ。

あれはひろりんちゃん、

君自身だ。


そんな、嘘よ!

私は大人になって、こうして

子供の時から憧れていた

天文学者になったんだから。


じゃ、質問するよ。

ひろりんちゃんは

昨日、何を食べた?


え?昨日?

昨日はえ〜っと、、



僕は今、

昼間は金平糖、夜は僕の姿で

ずっとひろりんちゃんと

一緒にいるけど、

ひろりんちゃんが飲んだり食べたり

している所を見たことが無い。


それに、食事だけじゃない。

お風呂は?トイレは?


第一、

着替えさえしていないよね。


着替え?

着替えもしていないですって?


ああ。

君は何時も同じ服装だ。


しかも着ているのは

研究者用の白衣ではなく、

ただの割烹着。

自分の姿をよく見てご覧。


か、割烹着だわ、これ!

そ、そんな、、

ひろりんちゃんは、驚愕のあまり 

その場にへなへなと座り込んだ。


ごめん。

急に驚かせ過ぎたね。

改めて説明しよう。


ひろりんちゃん、

君は1年前に交通事故に遭い、

生死の境を彷徨っている。


そして、本来なら死んで

魂の存在になってから作り上げる

自分の世界を、ひろりんちゃんは

うっかり先に作り上げてしまった。


自分の世界?

此処が?


そうだ。


憧れの天文学者になった

自分が居る世界。


ひろりんちゃんは

その無意識に作り上げた

自分の世界で意識を取り戻した。


この世界は現実ではなく

ひろりんちゃんが作った世界だから

当然、ご両親は居ない。


それを辻褄合わせのように

自分ではなく、ご両親が交通事故で

しかも亡くなったのだと認識した。


本来なら、これは一過性の現象で

さほどかからずに作り上げた

世界の辻褄が合わなくなり

意識を取り戻す筈なのに、、


ひろりんちゃんは、

自分が作り上げた

自分が憧れの天文学者になって

活躍すると言う世界に

すっかり満足して、


此処から

出る事を忘れてしまった。


しかも、毎日見舞いに来る彼が


あんなニュースを

枕元で語りかけるから、


その現実のニュースのイメージも

加わり、架空である筈の

ひろりんちゃんの世界の

リアリティが増した結果、


この架空の世界での

ひろりんちゃんは

より生き生きとし、、


現実でのひろりんちゃんの

容体は悪くなって行った。



今日は2024年7月1日。

このままだと君は

7月7日に脳死判定の結果、

事実上死ぬ事になる。


私が、、死ぬ?


そうだよ。

このままならね。


来年7月5日に巨大彗星が

地球に衝突すると決まって、、


それに備えて各国が協議して、、


我が国でも、

首相が声明を出して、、


そんな事も全て

この架空の世界の中での

話だったなんて、、


そうだ。

現実的には、巨大彗星の衝突は

まず間違いなく起こらない。


星同士が衝突しないように

常に気をつける。


それが僕ら

星の精の仕事の1つだから。


それでも衝突する時は、

星の寿命だと言われているよ。


だけど、僕はまだ若い。

地球には衝突しないよ。


何故貴方は私の前に現れたの?

貴方も私が生み出した

この世界のイメージなの?

ううん、それは違う。

僕はイメージじゃなく

ちゃんと存在する。


僕はひろりんちゃん、君を

本当に幼い頃から見て来たんだ。


可愛い子が、僕たち星を

一所懸命見てるなって、

何時も微笑ましく眺めてた。


ところがある日、

君は事故にあった。


病室の窓から覗いたら、

生気もなく機械に繋がれて

横たわっている君が見えた。


そして、傍には

泣きながら君の手を握る

彼やご両親の姿が。


1ヶ月経ち、2ヶ月経っても

君は目を覚まさない。



どうしたのかと

君の意識を探ったら、

君は生と死の狭間に作った

この自分の世界に満足して


何時までもそこに

留まっていると知った。


このままでは君の命が危うい。


そして、僕は強い決心で

此処に来たんだ。


そう、自分の命を

引き換えにする覚悟で。

次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像と動画をお借りしました🙏