わしまでとは?

田鶴が怨霊になったと申すのか?


いえ、はっきりした事は何も。

ただ、絶命し肉体から

魂が抜けたまま居なくなり

成仏もしておらぬようなのです。


成仏せぬとは、未だこの世を

彷徨っておると言う事か?


はい。

そうやもしれぬと

皆で心配しております。


ですが、元康様まで田鶴を探して

この世を彷徨っては、

今度は元康様が

怨霊になってしまわれます。


ですので、元康様にはぜひ

冥土(黄泉の国)を

お探し願いたい。


そこに田鶴の魂があれば

元康様も安堵出来ましょう。


冥土で田鶴を探す為にも、

元康様自身が

怨霊になってはなりませぬ。


瀬名に会いましても、決して

憎悪の念をお抱きにならぬよう

お気をつけ下さいませ。


相分かった。

これも全て田鶴の為じゃ。

おとわ様の言う通りに致す。


そして、

元康は瀬名の枕元に立った。


わしが手を下すまでもない。

この者はもう死にかけておるわ!


そう笑いながら話す元康の顔が

不意に歪んだ。


どうされたのですか?


この者は悲しみに満ちておる。

それがわしの魂に伝わって来る。


よし、1つ

この者と話をしてみよう。


元康の姿が瀬名に重なり

消えて行った。


元康様が亡霊だなどと、、

先程からわしは

夢を見ているようじゃ。


何の、もうしのの亡霊を

見ておるではないか。


それはそうなのじゃが、、


そうじゃ、しのは

亡霊だと気がついたのに、

元康様の事は

どうして気づかなんだのか?



それは簡単じゃ!

亀はしのの死を知っておった上で

しのに出会うたから亡霊じゃと

直ぐ分かったのだ。


元康様がよもや死んでおられるとは

思いもよらぬ事だったであろう?


ああ、勿論じゃ!

先日お目にかかり、元気なお姿を

拝見したばかりであったから。


それにしても元康様、、

お亡くなりになられたとは、、

これから松平家も

どうなるのじゃろう。


一方、瀬名の意識に

入り込んだ元康は、、


瀬名様、、瀬名様、、

此度はどうしたのじゃ?


元、、元康様!

瀬名は驚愕の表情で後ずさった。


何処へ行かれるのじゃ。

此処はそなたの心の内。

何処にも逃げ場は無かろう。


そなたの悪巧みは全て聞いた。

その上でわしはな、

そなたと話をしたいのじゃ。


私の企みを
もう知っておられるなら、
今更何の話がありましょう。


わしはな、
そなたの悲しみの理由が
知りたいだけじゃ。


何故そのような事を

お知りになりたいのです?

その悲しみが、そなたを魔物に変え
わしの田鶴を
死に追いやったからじゃ。
 
出来るものならこの場で
そなたを叩き斬ってやりたい。


生きておれば

本当にそうしたであろう。


生きておれば?

元康様、、


そうじゃ、
わしはもう死んでおる。


第一、生きておればこのように
そなたの心の内に入れるものか!


では、話を聞くなどと申されながら
実は私に復讐しに参ったのですね。


復讐、、そうじゃな。
しかし、それはそなたの
悲しみの理由を聞いてからでも
遅くはないわ!


さぁ、話すのじゃ!

わしの田鶴を死に追いやった

原因をな!

元康の勢いに恐れをなした

瀬名は少しずつ話し始めた。


この世は男の天下、、

おなごにはひとときの安らぎや

自由も有りませぬ。


言われるがまま嫁ぎ、

不要となれば離縁されるのは

運の良い方。

斬り捨て御免なる者も、、


例え仲睦まじく暮らしていても、

力のある男に執心されれば

我が母上(佐名)のように、


無理やりに離縁させられ、

見知らぬ男の元へ再び嫁がされ、

要らぬとなれば自害させられ、


おなごなど心の無い道具。

男の慰み者で御座います。


私自身も今川氏真に

あっさり捨てられました。


私は、そんなこの世を

おなごの天下にしたかった。


もう2度とどのおなごも
泣かずに済むような、、

氏真に捨てられ、屋敷中から

陰で笑われておると知った私は

何時しか自分の中の醜き想いに

囚われて行きました。


そしてある夜の事、、


口汚く呪いの言葉を吐いている

私の前に現れたのです。


サタンと言う名の神が。


サタン?


はい。

異教徒の神だと

名乗っておりました。


そなたの願いを叶えて進ぜよう。

私をサタンと呼びにくければ

魔王と呼ぶが良い。

次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像と動画をお借りしました🙏