その時、早駆けの馬の足音が

聞こえて来た。


田鶴〜!

田鶴は何処じゃ〜!


亀!あそこを見よ!
あそこに倒れておる者、
あれは、、


田鶴じゃ!


田鶴!


その場にいた山賊達と

乱闘になった一行。

しかし、何とか全員を

取り押さえる事が出来た。

そこへ、、


おとわ、直親様、、

遅う御座いました。


田鶴様は、私を庇い

命を落とされたのです。


もう少し早う来て下されば、、

田鶴様がこのような目に遭わずに

済みましたものを、、


瀬名!

何を白々と申しておる!

あのような文を残しておいて

今更何を申すのじゃ!


文?何の事です?


そなた、田鶴の部屋に文を

残していったではないか!



おとわはそう言い、持っていた文を

瀬名に叩きつけた。

瀬名は文に目を通すと、


田鶴様の命を貰い受ける?


いいえ。

このような恐ろしい文を

私が残す訳が御座いません。


私を陥れる為に

私の名を語った者の仕業では?


何故そなたの名を語って

そのような真似をしなければ

ならないのじゃ?



それは、井伊の皆様をここに

おびき寄せる為ではありませんか?


皆様が総出で此処に来られたと

言う事は、

今、お屋敷は手薄では?


おお、麓から煙が上がっておる。

何処ぞが燃えているのでしょう。


確かお屋敷には、しの様の亡骸も。

焼けてしまえば帰れませぬな。

魂は何処を彷徨うのやら、、


フフフ、アッハハ!


瀬名!

この妖女め!

直親が瀬名目掛けて太刀を

振り下ろそうとした。


亀!

斬ってはならぬ!



どうしてじゃ?

この者はもう人間とは言えぬ。

魔物じゃ!


それでもならぬ。

瀬名を斬るなら、

それは元康様じゃ!



瀬名を元康様の元へ引っ立てよ。

瀬名の処分は

元康様が決めるのじゃ!



フフフ、、

そなた達に私は捕らえられん!


魔王様、サタン様、

我にお慈悲を。

この場より

どうかお救い下さいませ。

ところが、、

瀬名がそう叫んだ瞬間に、


息絶えていた筈の田鶴の身体が

ゆらりと起き上がった。


瀬名様、、良かった!

大丈夫だったんだね。


田鶴、、?

驚愕の表情で田鶴を凝視する瀬名。


瀬名様は綺麗で優しい方。

私も何時か瀬名様のような

おなごになって、

竹を喜ばせたい。   


そなたはもう

死んでおるのじゃぞ!

どうなっておるのじゃ?

その問いに答える事もなく

田鶴は話し続けた。


瀬名様は私の憧れ、、

みんな瀬名様の事を悪く言うけど

私は瀬名様が大好き。

これからもずっと!


さっきから一体何を申して、、


瀬名様!

また、色々教えてね!


田鶴の言葉を聞いているうちに

瀬名の目は涙で一杯になった。


魔王とやらは迎えに来ぬのか?

、、、、、

無言のまま瀬名は

家臣達の手で捕らえられ、

引っ立てられて行った。

それを見届けたおとわは、、


しの、もう良い。

田鶴の身体から出て来い。


おとわが声をかけると、

田鶴の身体からしのが現れ、


同時に田鶴の身体はその場に

再び崩れ落ちた。


これはどうした事じゃ?


これはな、しのと私の謀じゃ。

皆に分からぬよう

しのと話をしてな。


瀬名が魔の力を操っている事。

田鶴が最後まで瀬名を信じて

逝った事を聞いたのじゃ。


に対抗するは善。

瀬名に田鶴の持つ善なる心

ぶつけてみようと思うてな。



案の定、魔の助けを借りられぬ

有様であったな。



それに、亡骸が燃えれば 

魂が迷うてしまうしのに、

身代わりの身体を

与える意味もあった。



しの、南渓和尚の所まで

田鶴の身体を目印にするのじゃ。



そなたのおかげで、

瀬名を捕えることが出来た。

南渓和尚の読経で

もう成仏するが良い。



はい。そう致します。


それでは田鶴は?

田鶴の魂はどうなったのじゃ?


田鶴の魂は、、

何処へ行きおったのか、、


そう言うと、おとわは

改めて田鶴の亡骸を見た。


最期にこのように男達に

手荒な真似をされた憎悪は

純粋な田鶴を魔と化すやもしれぬ。


そうなる前に、魂を見つけ

供養出来れば良いのじゃが、、



田鶴、、

次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像をお借りしました🙏