さぁ、参りましょう!



うん!


田鶴は瀬名と共に屋敷を出た。


一方、瀬名が忍び込んだ事も、

田鶴が瀬名と共に屋敷を出た事も

知らない直親は、

しのの亡骸に語りかけていた。


しの、、今更そなたに

謝ったところで詮無い話じゃが

それでも謝らせてくれ。


わしは、そなたを嫌うておった

訳ではない。


ただ、おとわを好いておる故、

そなたに優しく出来なかった。


だが、めおとになれば

少しずつにでも心を通わせ

いつか本当の夫婦になれば良いと。


その時間はこれから幾らでも

有るものと思うておったのに、、


それがまだ、

祝言もあげておらぬのに

このような事に、、


しの、、

そなたは、わしの妻になる為に

一所懸命であったの。



わしが笛を吹いたら、

慌てて鼓を持って駆けつけたり、


わしに作った弁当の出来栄えが、

どうしても納得出来ぬから

返してくれと泣いて謝りに来たり、


私はおとわ様と比べて

何処が違うのかと尋ねたから、

同じおなごと言う以外は

全て違うと答えたら、

落胆のあまり腰が抜けて

立てなくなった事もあったな、、


しの、そなたは、、

特に純粋な所は、おとわと言うより

田鶴に良く似ておる。


生きておればきっと

田鶴と良き友に

なったのであろうな、、


しの、、

本当に済まなかった。


そなたを何故もっと

知ろうとしなかったのか

それが悔やまれてならぬ。

直親はそう呟き涙を流した。

すると、あたりの空気がスッと

冷たくなり、、


直親様、、


し、しの!

戻って参ったのじゃな!


直親様、

私が怖くないのですか?


怖いわけがなかろう。

そなたはわしの許嫁ではないか!


そなたに謝りたくて

仕方なかった。


そなたがこのような目に逢ったのも

みんなわしのせいじゃ!

本当に済まん。


わしがそなたを

最初から愛せておれば、、


直親様、、

先程からのお言葉、

全て聞いておりました。


うれしい。

初めて私に優しい言葉を

かけて下さいましたな。


しの、、

そなたを殺めたのは

一体誰なのじゃ?


私は、瀬名様の家来に

斬り殺されました。


どうして?


瀬名様は、私が話した

直親様と田鶴様についての邪推を

真ではないと告げたら激昂されて、


同衾と申したのは、

この私の勝手な思い込み。


真では御座いません!


何じゃと!

そなたの偽りと申すのか?


は、はい。

ただの出まかせに御座います。

すると、瀬名様が


井伊のおなごが、、

この今川の私を

虚言でたぶらかすとは、、


そう言って、側にいた家臣の方に


このおなごを即刻斬り捨てよ。

そして、そこに有る古井戸に

投げ込むが良い。


今川の重臣関口の子、

この井伊の当主

井伊直盛を叔父とする私を

たぶらかすは

今川と井伊を侮辱したも同じ。

覚悟しやれ!


そう仰ったのです。


そんな、、

そんな理由で、、


しの、、

そなたが此処に戻ったと言う事は

そなたの恨みが

晴れたと言う事か?


いいえ、不意に邪魔が入り

恨みを晴らす事が

出来ませんでした。


ですが、瀬名様は必ずや

田鶴様を狙って此処にやって来る。


だから、此処に戻って

待っておれば、、

そう思って戻って来ました。

直親は、しのの言葉にハッとした。


そうじゃ、田鶴!

田鶴は何処じゃ?


田鶴!田鶴!

田鶴は何処じゃ!

そこへおとわが

寺から戻って来た。


亀!

何を騒いでおる?


おとわ!

田鶴を見なんだか?


田鶴?

部屋ではないのか?


それよりも、どうして

そのように慌てておるのだ?


おとわ様、、


しの!

そなた、戻って参ったのじゃな!


おとわ、その話は後じゃ!

急ぎ田鶴を、、

一行は田鶴の部屋へ。

そこには、、


これは、、

そこには瀬名が書いた文が

残されていた。


井伊の皆様、

田鶴が命、

この瀬名が貰い受ける。


亀!田鶴が瀬名に、、

次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像をお借りしました🙏