魔王様、サタン様、、
これでこの男は私のもの。
私はこの男の妻になりまする。


後は田鶴の始末じゃ!

ところが、、

う、ううん、、

呻きながら元康は起き上がり、


瀬名様、かたじけない。

急に血の気がひいたような

気分になり申した。


そうで御座いましたか。

いきなりお倒れになり

心配致しましたが大事ないご様子。

誠によろしゅう御座いました。


ですが元康様、、

田鶴様が居なければ

私を嫁御にすると言うお言葉は

覚えていらっしゃいますか?


ああ、勿論!

そなたの頼みの一言を

しっかりお伝え申したぞ。


これで田鶴の一件の礼が出来た。

そなたも気持ちが落ち着かれたか?


え?

ああ、まぁ、はい。


あの、、何かご気分が変わられた

などは御座いませんか?


いや、至って良好!

いつもと変わりない。

何故そのような事をお尋ねに?


それはその、、そう、、

先程お倒れになられましたので

後から大事になっても

いけませんので

お尋ねした次第で御座います。


そうか、やはりそなたは

よく気がつく。


そなたの美しいかんばせ(顔)も

さることながら、教養も嗜みも

充分に備えておられる。

誠に素晴らしき女人なり。


瀬名様、

わしを好いて下さるそのお心、

ありがたく頂戴仕るぞ。


元康様、私を顔も美しい。

教養も嗜みも備えておると

お褒め下さり

ありがとう御座います。


ああ、その通りじゃからな。


では、どうして私を嫁御に

選んで下さらぬのですか?


田鶴様は、

百姓の娘と聞きました。


私は田鶴様に比べて

何が劣っておるのでしょうか?


劣っておるなどと笑止千万!

瀬名様と田鶴など、

同じおなごとして比較にもならん。


田鶴は何もかも

瀬名様に劣る事ばかりじゃ!


では、どうして?


そうじゃな。

それは田鶴が

わしに向ける一所懸命。


わしを見ては

直ぐに泣いたり笑ったり。


何時も気持ちを隠さず

わしを一所懸命に恋慕う田鶴が

可愛くて堪らぬ。


わしに向けるその一所懸命を

何時迄も見ていたい。

だから、わしは

田鶴を娶る事に決めたのじゃ。


そ、そうで御座いましたか。

元康様を一所懸命、、


それは確かにお可愛らしい事。


しかし、一所懸命だけでは

武家の奥方は務まらぬから、

井伊で武家の作法を教わって

おるところなのだが、、


どうなっておるのか、

困り果て泣いてはおらぬかと

何時も気を揉んでおる。


だが、此度の一件で、

思いがけず井伊を訪れる事になり

おとわ様や直親様が田鶴の力に

なって下さっている事を知った。

ありがたい限りじゃ。


井伊には足を向けて眠れぬわ!

ハハハ!


あの、、

本当にどこもどうも

御座いませんか?


私の事を見ても

何とも御座いませんか?


瀬名様を見て?

ちゃんと見えておるが?


そうですか。

それでは本当に大丈夫かと

存じますので、私はこれで。


そうか。

また心煩われる時は

いつでも遠慮なく参られよ。


はい、ありがとう御座います。

こうして瀬名は部屋を出て行った。
そして自室に戻った瀬名は、、

どうしてあの男には
サタン様の術が効かぬのじゃ?


このままでは、
元康を手に入れられぬ!

その時、辺りの空気がスッと

冷たくなった。


何じゃ?

急に辺りが冷えて来たではないか。

これは如何に?

すると、その瀬名の言葉に

答えるように、、


その理由は、

私がお側に参りました故、、


し、しの様、、

そなたはもう死んでおる!

早う冥土に帰れ!


貴女の一言で

無惨に斬り殺された私を

よう覚えていて下さった。


そう、これから冥土に参ります。

貴女様と一緒にな。


何じゃと!

私は元康を手に入れて、この世を

おなごの天下に変えるのじゃ!

邪魔立てするでない!


本気でおなごの天下などと

思い描いて

いらっしゃいますのか?


魔物にそそのかされておるとも

知らずに。


魔物はそなたを使い

この日の本を

転覆させたいだけじゃ!


それに元康様は、

そなたの手には入らん。


どうしてそう分かるのじゃ?



元康様は田鶴様への愛に

満ちておいでじゃ。

邪悪な力など

一切効かぬ程の強い愛にな。


さぁ、瀬名様、

共に冥土に参りましょう。


私に近寄るな!



近寄るな!

次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像をお借りしました🙏