おとわ様、

話の続きを聞かせてくだされ。


分かりました。


それではもう1度、しのにその時
何が遭ったのかを振り返ると、

あの時、悪鬼の如く
走り去ったしのが頼るものは
神仏だったのではと思うのじゃ。


あの古井戸の辺りは
鎮守の杜に繋がっておる。


だから、その辺りへ出向き、
神仏に祈りを捧げていた折に


そこで、瀬名と偶然

出会うたのであろう。


そして、その場の勢いで
瀬名に田鶴と亀が不実だと
訴えたは良いが、、


元康様に知らせると話す瀬名の

言葉に、そうなれば田鶴はともかく

愛しい亀がどうなるのかと

我にかえり、、


瀬名に話した事は忘れてくれ。

或いは、真ではないなどと

縋ったのではなかろうか。


では、あの古井戸の辺りで

しのが瀬名様と出会い

そのように話した事が

真であったとして、

何故斬り捨てられなければ
ならんのじゃ?


それは、しのが生きておれば

元康様にこの話が出来ぬから。



元康様が怒りのあまり

井伊に来られても、しのが



あの話は真ではありませぬ。

瀬名様にもその時

そう申し上げております。


などとしのに告げられれば

瀬名の目論見は

全て水の泡じゃからな。


怒りに任せた元康様に

田鶴とわしを

斬らせる目論見じゃと?


そうじゃ。
まぁ、お前は本当はどうでも 
良かったが、事の成り行きで
と言う所じゃろう。


それより瀬名は、
田鶴をどうしても
亡き者にしたかったのじゃ。
田鶴が居れば、元康様の嫁御には
成れぬものな。


田鶴の不義を知った元康様は
怒りに任せて
田鶴と亀を手打ちに致す。


瀬名は傷心の元康様に取り入り

まんまと嫁御の座に。


瀬名はそう目論んでおるのじゃ。


何故、瀬名様は
竹の嫁御になりたいの?


そうじゃ!
それに今川真氏との祝言は
どうなったのじゃ?


もしかしたら、
今川真氏との祝言は
無くなったのやもしれぬな。


だから竹と、、
そうね、、
竹は姿の良い人だもの。


姿が良いだけじゃない。
とても男らしいし、優しいし。


あんな素敵な人は

どこにも居ないんだもの。
瀬名様が好きになって当然だわ。

田鶴は不安の余り泣き出した。


田鶴、これはあくまで
私が勝手に思い巡らせている事。
真かどうかは定かではない。


でも、結局竹は私を斬らなかった。
このまま私が居たら、
瀬名様は竹の嫁御になれないわ。

一同がハッとした。


次に狙われるのは、
田鶴、お前じゃ。


え?

確たる証は無いが、
しのを殺めた賊は瀬名の家来。
命じたのは瀬名であろう。


そして、この読みが正しければ
次は必ず
田鶴の命を狙って来る。


おとわ!
わしは今日から
田鶴と行動を共にしよう。


そうじゃな。
確たる証が無い故に瀬名を
捕える事は出来ぬが、、



2度とこのような事が
我が井伊の領内で起こらぬよう
皆で守りを固めましょうぞ。


相分かった。
一方その頃、今川の屋敷では、

元康様、、元康様、、


瀬名様、どうなされた?


此度の事、、
誠に嫌な想いをなさいましたな。


それでも、全てしのと言う
井伊のつまらぬおなご1人の
戯言であったと聴き及び、
私も安堵致しました。


瀬名様が安堵とな?


はい。
私も井伊で元康様の想い人で
在らせられます
田鶴様にお会いしました。


何とも可憐で可愛らしい
おなごでいらっしゃる。
元康様が好いておられる訳が
よく分かりました。


それ故に、、

直親殿との不実の噂に心が痛み、

元康様にもあのように心乱れたまま

噂をお伝え申しましたが、、


疑いが晴れて
本当によう御座いました。
私もやっと安堵したのです。


そうであったか。
瀬名様、
そなたは心の優しい方じゃな。


これから夫になられる
真氏様は誠に幸せ者じゃ。


いえ、そのような、、
元康様は、
私を買い被っておいでです。


わしの田鶴も、早うそなたのような
教養と嗜みを身に付けてくれれば
良いのじゃが、、


根が百姓の娘なので、
苦労しておるわ。


そうですか、、
でも元康様の為に
日々精進されているのですね。


何と健気な、、


瀬名様?
泣いておられるのか?


あ、、このような場で涙など、
申し訳御座いません。


実は、真氏様との縁談は
破談になりまして、、


え?それは何故に?


次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


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