おとわ、、

そなたは賊の目星はついておると

申しておったな。

それを話してみよ。


はい、父上。


そして、おとわは

皆の前で話し始めた。


まずは時を遡り、
順序立ててお話します。


事の発端は、
田鶴が勘違いするほど
亀と元康様がよく似ておった事。


そうであったな。
井伊に来て直ぐ
そう申しておった。


アハハハ!

可愛い田舎娘が

やっと到着したようじゃの。


竹!

いえ、元康様!

田鶴は、直親に抱きついた。


何だ!

一緒に来る事になっていたんなら、

どうして

そう言ってくれなかったの?


そして、慣れない場所で
心細い思いをしておる田鶴に
亀が優しく寄り添った事。


わしは、田鶴のその辛さを

田鶴の身を案じている元康様に

成り変わり、少しでも

和らげてやりたいと思う。


田鶴、、そなたが晴れて

元康様と暮らせる日が来るまで、

わしが元康様の代わりに

そなたを守ろう。



ありがとう、亀。



その2人を見たしのは

ショックを受けた。

恐らくこのような心持ち

であったのでは、、


直親様、、私ではなく、

あの者の側に居るじゃと?

祝言はどうなるのじゃ!



あのおなご、、

元康様の想い人か何か知らぬが、

私の直親様をたぶらかしおって!

許さぬ!

断じて許さぬぞ!


そして、嫉妬に駆られたしのが

悪鬼の如く形相で

走り去るのを見たのが、

しのを見た最後となった。


亀、しのが悪鬼の如く表情で

走って行きおったぞ。


構わぬ。

あのおなごの事など

わしはどうでも良い。


大方、お館様(おとわ父)や

奥方様(おとわ母)に

わしの不実を

告げに行ったのであろう。


しかし、しのが父上や母上の
ところに参ることは無かった。


ああ、そうじゃ。


ええ、見ておりませんよ。


しのは、我らが見送った後

瀬名に出会うておる。



そうじゃな。

元康様は此度の一件を

瀬名様から

聞いたと申されていたからな。


とすると、

しのに最後に会ったのは瀬名。

そして、瀬名の護衛達。



血糊の具合から、

しのが斬り捨てられたのは、

我らがしのを見た直ぐ後。


その時分に、

井伊の人間でない者で

刀を持った者は?


それは、、


おお、そうじゃ!

瀬名様の護衛の者達じゃ!


おとわ!

お前は瀬名の護衛が

しのを斬ったと申すのか?



いえ、それは分かりませぬ。



しかし、誰が斬ったにせよ

何故しのが斬られなければ

ならないのじゃ。


その理由が分かれば、

賊が何者かも

自ずと分かりましょう。


おとわ!

しかしお前は

賊の目星はついておると

言うておったではないか。


それをこれから見極めたいのです。

私が付けた目星が正しいのかどうか

皆で吟味致したいと存じます。


私は、しのが斬られるに至った

裏には間違いなく瀬名が居る。

そう思うております。


元康様の嫁御の座を狙うておる

瀬名にとって、

田鶴は邪魔でしかない存在。


ならば、此度の田鶴と亀の醜聞は

真であれば、瀬名にとって

渡りに船となりましょう。



え?あのお姉さんが?

竹を?


そうじゃ。

あやつは元康様を狙うておる!


おとわ!

戯けた事を申すでない!



瀬名はわしの妹、佐名の娘。

お前の従姉妹なのだぞ!


それを、

しの殺しの賊扱いをするとは、、

いくらお前の言葉でも許さぬぞ!



では父上!

この際はっきり申し上げましょう。


此度の一件、

その原因を作った本当の咎人は

父上なのですよ!


何じゃと!

この父が咎人じゃと?

いきなり何を申すのじゃ!

気でも狂いおったか!



いえ、狂ってなどおりません。


ただ、此度の原因は、

好いてもいない者同士に

祝言を挙げよと命じた父上に

咎が有ると申しておるのです。



その不幸な縁組が、

亀を自暴自棄にさせ、しのを

嫉妬で苦しめる事になった。


その結果、人ひとりの命が

失われたのですよ。


勿論、しのの命を奪ったのは

父上ではない。


ですが、奪う原因を作ったのは

父上だと申しておるのです。


黙れ!黙れ!黙れ!

これ以上、つまらぬ戯言を申すなら

お前であっても斬って捨て、、


突然、直盛の声が出なくなった。

焦るが余り顔を真っ赤にして

叫ぶが一向に声が出ない。


祟りじゃ、、

しの様の祟りじゃ、、

その場に居た誰からともなく

そんな声が湧き上がった。


誰か、、

殿を寝所にお連れするのじゃ!

私も共に参ります。


おとわ、この母は

貴女の言葉を信じます。

続きを皆に聞かせなさい。


はい、母上。

直盛はお付きの者に支えられ、

奥方と共にヨロヨロと

その場を去った。

後に残された重臣達は、


おとわ様、

話の続きを聞かせてくだされ。


分かりました。

次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像をお借りしました🙏