これからは

しの様の菩提も弔うよ。


そうじゃな。

皆でそうしよう。


後はな、、

亡き者に心配をかけない

生き方をする事じゃ。


心配を?


そうじゃ。

亡き者があの世で安心して 

過ごせるよう、残された者は

涙を拭いたら再び

しっかり生きて行かねばならぬ。


それでも、私、

時々は寂しくなって

おっとう!おっかあ!

って泣いてるよ。


そうか、そうか。

それでも構わぬ。


泣きながらでも

田鶴が生きて行く姿を

父上も母上もあの世から

見ておられることだろう。


田鶴は頑張っているな、

あの子はきっと大丈夫だ、そう

安心しておられるのではないか。

直親の言葉を聞いた田鶴は、、


おっとうやおっかあが

本当にそう言ってくれたみたい。


会いたいな、、

おっとうとおっかあに。

会いたいな、、

寂しそうにそう呟く田鶴に

直親は優しく、


田鶴、父上と母上には

直ぐにでも会える。


無理に泣き止まずとも良いから

心の中で

お2人を思い浮かべてみよ。


うん、、思い浮かべた。


どんな顔をしておられる?


2人とも笑ってる。

私に笑いかけてる。


そうか。それが今の

父上と母上のご様子じゃ。

お元気そうで何よりじゃな。


田鶴の涙に濡れた顔に

微笑みが広がった。


亡き者とは、そんな風に

心と心で繋がっておるもの。


これからは寂しくなれば、

何時でも心の中に
父上と母上を探せば良い。


父上と母上は、

その身からは離れられたが、

田鶴の中でこれからも

田鶴と共に生きて行かれるのじゃ。


そう分かれば
寂しくは無かろう?


本当だ!

亀!ありがとう!


そうだ、、じゃ、しの様とも

心の中で会える?


ああ、会えるとも。

わしも、しのと話したい。

あの者に詫びたい気持ちで

いっぱいじゃから。

そこへ、しのの弔いの準備が

出来たと声が掛かった。


さ、参ろう。


うん。


間もなく南渓和尚も来て下さる。

皆でしのを送ってやろう。


は!


そこへ和尚が現れた。


しのの亡骸を見ると、


酷い旅立ちであったようじゃな。


一体、何があったのじゃ?


しのは何者かによって殺害され、

古井戸に投げ込まれていたのです。


そうであったか。

それは誠に哀れな、、


わしがこれから読経するから

迷うで無いぞ。


そうじゃな。

和尚、懇ろに弔いを頼む。


直親、祝言は挙げてはおらぬが

しのはお前の許嫁。

夫として前に出て見送ってやれ。


はい。


そして、葬儀が始まった。


ところが、、

読経をしていた南渓和尚が

突然、立ち上がり叫んだ。


しの!

何処に行くのじゃ!

そして、屋敷の外に目を向けて


行ってしまいおったわ。


行ってしまう?

あの者は死んだのだぞ。

一体何処へ行ったと申すのじゃ?


恐らく自分を殺めた者。

自分が憎んでおる者の所へ。



どうしても恨みを晴らしたい。

そんなしのの魂が、このまま

成仏する事を拒んだのじゃ。

南渓和尚はそう呟くと

後に残されたしのの亡骸に、


悔しくて堪らぬのじゃな。


ならば、思う存分暴れて来い。


その代わり、気が済んだら

必ず此処に戻って来るのじゃぞ。

わしがそなたを成仏させてやる。


おとわ!

しのの身体はそのままに。

身体はしのの魂が戻る際の

目印じゃ。


帰り道が分からねば、

しのが迷うてしまうからの。


大方、魂はすぐ戻る。

良いな、頼んだぞ。


分かりました。


それではわしは、
しのの魂が戻るまで
寺へ戻って待つとしよう。

そう言うと、南渓和尚は寺へ

帰って行った。


おとわ、、

そなたは賊の目星はついておると

申しておったな。

それを話してみよ。


はい、父上。


そして、おとわは
皆の前で話し始めた。

次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像をお借りしました🙏