おとわ!

直親、田鶴も来い!

3人はお館様である井伊直盛の前に。

田鶴に尋ねる。
直親に懸想しておるとは真か?


え、、、
私が亀、、直親様を?
それは違います!


では、直親にも尋ねる。
許嫁のしのを差し置き、
田鶴を嫁御に選ぶつもりか?

田鶴は元康様を想うております。
それを私の嫁御になどと
考えた事も御座いません。


ただ、私と元康様は似ている。
田鶴がそう申しましたので、、


この井伊に来て心細い想いを
されているご様子を見て、
ならば何時でも私を元康様じゃ
と思って元気を出して下され。

田鶴が元康様に嫁ぐ日まで
私が元康様の代わりに
そなたをお守りしよう。
そうお伝えしました。


ただただ田鶴を哀れに想い

そう申した迄のこと。

神仏にかけて、そこに一片の

やましい気持ちも御座いません。


おとわ、おとわは2人を見て

どうなのじゃ?

2人は不実では無いのか?



不実の反対に御座います。

直親は、信心深く情に厚い男。


見知らぬ土地の他人の中で

いきなり暮らす事になった

田鶴の事情を知り、直親は

我ら井伊の誰よりも温かく

田鶴を迎え入れたのです。


大体、田鶴が直親に

懸想しているなどと、、

誰がそのような馬鹿な事を

申しておるのです?

すると、直盛の後ろから

元康が現れた。


馬鹿かどうかは知らぬが

この話は、直親様の許嫁しの様が

今川の瀬名様に話した事じゃ。


わしは瀬名様から話を聞き、

真偽を確かめに急ぎ参った次第。


事の成り行きによっては、

田鶴と直親様を成敗する為にな!


成敗じゃと!

直親に手出しすれば貴殿も此処から

生きては戻れまいぞ!

井伊の面々がいきり立った。


そんな事は覚悟の上じゃ!

それでもわしは、田鶴と直親様の

不義を許してはおけぬ。


お待ち下され!

元康様は今、我らの話を聞いて

どう思われたのじゃ?


しの1人の言葉と我ら3人の言葉。

どちらをお信じになるのじゃ?


おまけにその3人の内の1人は、

貴方を慕う

田鶴の言葉なのですよ。


元康様の嫁御になる為

慣れぬ武家作法を学びながら

おなご1人で見知らぬ場所で

頑張っておる田鶴を

何故信じてやれぬのじゃ? 


それは、、


元康殿、お願いで御座います。

今一度、田鶴ときちんと

話しおうて下され。


此度の話、大方

しのが嫉妬の余りについた

戯言で御座いましょう。


ならば、

そのしの殿は何処じゃ?

しの殿に聞けば真偽の程が

はっきりするではないか。


それが、しのは先刻より

行方知れずなのじゃ。


行方知れず?


皆で探しておるが見つからん。

自分のついた戯言が怖くなり

身を隠したのでは、、


どちらにせよ、引き続き

探しておるところじゃ。


そうか。

では見つかり次第、

お目通り願おう。


元康様、、

先程からずっと泣いていた田鶴。


元康様、

少し休んで行かれては。


そうじゃな。

それが良かろう。


元康様、まずは田鶴と

話す事が先決であろう?


田鶴と共に、

こちらに来て下され。


おとわは元康と田鶴を

離れ座敷に案内した。


こちらで心ゆくまで

話されたが良かろう。


これはかたじけない。


田鶴、わしはそなたを信じる。

怖がらずにわしの側に来い。


うん!

若き恋人達は、

離れ座敷に入って行った。

そして此方では、、


しの、、

なんて事をしてくれたのじゃ!

あわや今川と対立する所であった。


今川の勢いには勝てぬ。

そんな中、今川義元が養子、

元康様を返り討ちにしたとあらば、

今川との戦は避けられん!


戦になれば、妹の佐名を嫁がせた事

田鶴を預かった恩義など

何の価値もない。

我が井伊は終わりじゃ!


しの、、

幾ら嫉妬したからと言って

どうしてあのような戯言を

今川の瀬名様に聞かせたのじゃ。


あの時、瀬名様が急ぎ帰ると

申したのは、

このせいだったんじゃな。


急ぎ帰り、

元康様に知らせようと、、

しかし、どうしてそこまで?


亀、分からぬのか?


何じゃと!

おとわは分かるのか?


当たり前じゃ!

亀は鈍いのう。


田鶴は元康様の想い人。

その想い人である田鶴の醜聞を

元康様の耳に入れて

得をするのは誰じゃ?


得をする?


不実な田鶴を斬り捨てた後に

元康様は、必ずや知らせてくれた

瀬名に感謝する筈じゃ。


その機を逃さずに、

傷心の元康様に取り入り籠絡。

そのまま嫁御の座に、、

それが瀬名の筋書きであろう。


いや、しかし、、

瀬名様は、今川義元の子息

今川氏真様との祝言が

決まっているのでないのか?


その筈なのじゃが、、

きっと何か裏がある。


裏が?


ああ、そう思えてならぬのじゃ。


そうおとわが話していた頃

今川屋敷の瀬名は、、


魔王様、サタン様、


我にあのようなお告げを下さり

ありがとう存じます。


落ちぶれるだけの今川氏真など、

もうどうでも良い。

仰せの通り、あの男を必ずや

私のものにしてみせます。


あの男、松平元康。

後の天下人徳川家康を!

次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像と動画をお借りしました🙏