こうして瀬名は帰って行った。

ある陰謀を胸に。



そして帰宅後、
今川の館に居た元康に、


元康様!
少しよろしいですか?


これは瀬名様、
そのように急いでどうなされた?


いえ、あの、、
今日故意にしております
井伊のおとわ様に会いに
参ったのですが、、


おお、井伊と言えば、
わしの田鶴が世話になっている
所ではないか!


田鶴様、、
確か元康様の想い人で
いらっしゃるとか、、


何じゃ!そなたの耳にまで
入っておったか。


ええ、、まぁ。

ですが今日、井伊で
その田鶴様について
おかしな噂を耳に致しまして。

おかしな噂?


はい。
おとわ様の幼馴染に
井伊直親様と言う方が
いらっしゃるのですが、、

それはもう、驚くほど 
元康様に似ていらして。


その直親様に、田鶴様が
懸想されていると言うのです。


他の男に懸想?
田鶴が?
それは真か?

私も井伊のおなごの1人に
聞いただけですので、
真偽の程は定かでは無いのですが、


そのおなごは、
直親様の許嫁だそうで、
祝言も近いのに、田鶴様が
直親様に言い寄って困ると
申しておりました。

何じゃと?
言い寄り困るとな?


はい。
何でも、元康様と離れ離れに
なり寂しくて堪らぬと、
直親様に言い寄っておるとの
事でした。


瀬名様にそう話した
おなごの名は何と申す?


しのと申しておりました。


しの、、
直親様の許嫁なのじゃな?


はい。
このままでは祝言はどうなるのかと
大層困った様子で御座いました。

して、直親様は
どう申されておるのじゃ?


それが、しのに聞いた話では
泣いて縋ってくる田鶴様を
突き放すのは余りに哀れだと
悩んでおられますそうで、、


幼馴染であるおとわ様も、
思いがけぬ事態に心を痛めて
おられると聞きました。


ですので、元康様にこの場を
納めていただく以外に
方法は無いと思いまして、、


瀬名様、
よくぞわしに知らせて下された。
恩にきるぞ!


いえ、そんな、、
元康様ほどの方を蔑ろにする
そのおなごに
腹が立っただけですわ。


元康様、貴方様はおなごの憧れ。


その貴方様の愛を
独り占めにした上に
他の男に言いよるとは、、
断じて許しがたい
振る舞いに御座います。 

瀬名様、、

そなたには改めて礼の機会を。

今日はこれにて御免。


そう言うと元康は、

足早に屋敷の外へ。

そして、


急ぎ井伊へ参る!
誰かついて参れ!


そう言うと数名の家臣を連れて

一路、井伊へ向かった。


そんな事とは知らない
井伊の館では、忽然と姿を消した
しのの捜索で大騒ぎだった。
おとわや直親も捜索に加わり、、


しの〜!


しの〜!


どうじゃ?見つかったか?


いや、何処にも姿が見えん。


一体何処に行かれたのじゃ?


しのさんって、さっきこっちを
睨んでいた人?


ああ、そうだ。


私が亀をなどと呼んで

甘えたからね。


わしが甘えろと申したのじゃ。
田鶴は何も悪くない。


そうじゃ!

全て亀が言い出した事。
田鶴は気にしなくて良い。


しかし、本当にしのは
何処に行ってしまわれたのじゃ?

そこへ、、


急ぎ頼もう! 

我らは今川義元様が家臣。


ここにおわすは、

今川義元の養子松平元康様。


井伊直盛様にお目通願いたい!


田鶴!

元康様じゃ!


え?竹!

あ、いえ元康様!


しかし、元康は田鶴を

一瞥しただけで

直ぐに館に入って行った。


あれ?どうしたのかな。


田鶴との祝言を早めたい。

そんなお話で来られたのでは?
緊張しておられたのだろう。


いや、しかし、、

あの雰囲気は、、

すると館の方から、

井伊直盛の声が響いて来た。


おとわ!

直親、田鶴も来い!

次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


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