叶わなかった我らの想い、、

そうか、田鶴と元康様は

我らの現し身なのじゃな!

直親の胸で泣いている田鶴を

優しく見守るおとわ。

しかし、一方では、、


直親様、、私ではなく、

あの者の側に居るじゃと?

祝言はどうなるのじゃ!



あのおなご、、

元康様の想い人か何か知らぬが、

私の直親様をたぶらかしおって!

許さぬ!

断じて許さぬぞ!


かくなる上は、、そうじゃ!

しのはその場を急ぎ立ち去った。


亀、しのが悪鬼の如く表情で

走って行きおったぞ。


構わぬ。

あのおなごの事など

わしはどうでも良い。


大方、お館様(おとわ父)や

奥方様(おとわ母)に

わしの不実を

告げに行ったのであろう。


いっそこれで祝言が

取り止めになってくれれば

ありがたいのじゃが。

それを聞いた田鶴は、


あの、、

亀は祝言を挙げたくないの?


ああ、そうじゃ。

わしが愛しておるのは

おとわ1人じゃからな。


じゃ、どうして2人は祝言を

挙げないの?

おとわは亀を嫌いなの?


田鶴、私も亀が好きじゃ。

だが色々事情が有るのじゃ。


そんな!

好き合う亀とおとわが

結ばれないなんて、、

田鶴は再び涙ぐんだ。


田鶴、そなたは

百姓の娘であったな。


うん。


武家と言うものは、己の想いだけで

動けぬものなのじゃ。


どうして?


今のそなたに武家のあれこれを

話してもきっと分からぬ。


そう、、一言で言えば

祝言はお互いの想いを

叶える場ではない。


家と家を結び、両家の和平を

約束する為の儀式なのじゃ。


だからわしも、

どのように不服であっても、

あのしのと祝言を挙げねばならぬ。


しかし、その務めは果たしても

我が心までは誰にも縛れまい。

そう言う事じゃ。


和平?儀式?

嫁御に行くとは、

祝言を挙げるとは、

そのようなものなの?


ああ、大抵はな。


大抵?



大抵と申したのは、田鶴が嫁ぐ

元康様は違っておいでだからじゃ。


元康様はな、真の愛を持て

そなたを望んでおられる。


家と家の結びつきでもなく

和平の約束でもない。


あの方は田鶴をただ愛しく想い

共に暮らしたいとお思いじゃ。


だから、田鶴は安心して

元康様に嫁ぐが良い。


だがその前に、我が井伊で

しっかり武家の作法を学ばねばな。


うん!

私、一所懸命頑張る!


フフフ、、

はい。

わたくしは

しっかり精進致します。

じゃ!


あ、そうか!

あ、いえ、そうで、、


左様で御座います。

じゃな、田鶴。


はい。


フフフ!

アハハハ!

3人の楽しげな声が辺りに

響いていた頃、、


あのおなご、、

断じて許さぬ!

神よ、人の許嫁をたぶらかす

あのおなごに神罰を下したまえ。


私の愛する直親様が、

あのおなごを嫌い私を愛すよう

どうかどうか、どうかどうか!


おや、そこに居るのは

しの様ではありませんか?

そこで何をしておいでじゃ?


瀬名様!


今日はおとわに会いに

参ったのじゃが、、


只事ではないお顔。

いかがなされた?


ああ、瀬名様、、

しのは泣き出し、

瀬名に事情を話した。


なんと!

元康様の想い人であるそのおなご、

直親様をたぶらかしたと?

それは真の事か?


はい。

元康様に似ていると

直親様に取り入った挙句、

元康様に会えぬのが寂しいから

と甘え、、


甘えて同衾しておる。

そう言う事なのじゃな?


はい。

あの直親様に親しげな様子は

間違いなく同衾しておりましょう。


それは何とした事!

そのようなおなごを元康様は!


瀬名様、元康様を?

今川氏真様とのご縁談は?


破談じゃ!

他のおなごと祝言をあげおったわ!


だから今は、元康様を

好いておられるのですか?


そうじゃ。

しかし、元康様は

心に決めたおなごがおると

公言しておられてな。


そのおなごがここ井伊に居ると

聞き、どのようなおなごか

見に参った次第。


それが、元康様にも愛されながら

他の男に身を任すなどと、、


元康様が知れば即座に

直親様共々斬首じゃろうて。


しのはそれを聞いて驚愕した。

次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像をお借りしました🙏