そうか。

わしもずっと許嫁を探しておる。


幼き頃に出会った許嫁。

わしの初恋の相手じゃ。


忘れな草がよく似合うので、

わしは忘れな草の君

呼んでおった。



忘れな草の君、、

忘れな草、、あ!


あ、あの、、

先ほどヒヒも話しました通り、

私達は貴方が生きた世の

400年余り先の世から来た者。


だから、貴方の生涯を

歴史として全て知っています。


貴方の正室は築山殿。

築山殿亡き後は朝日姫。


失礼を承知でお尋ねしますが

つまり貴方は

忘れな草の君と呼んだ許嫁と

結ばれる事は無かった。


それは何故ですか?


娶る前に死んだからじゃ。


娶る前に、、


何が理由でお亡くなりに

なったのですか?


それがそなたに何の関係がある?


関係?

大いに関係あるのよ!

多分だけど、、


その通りなんです。

私達にとって、貴方の許嫁が

どんな理由で亡くなったかが

とても重要なんです。


どうかその方の

亡くなった理由を教えて下さい。

SAKURAとヒヒの熱意に

押されて、元康は重い口を開いた。


あれは、わしがまだ今川義元の下に

おった頃じゃ。


今川からは何じゃと?

織田と今川の桶狭間の合戦の前、

大高城の救援を命じられ、


簡単に言ってくれるの!


丸根砦・鷲津砦を

織田から奪還する為に

先陣を務める事になったわしに、

戦の守りを届けようとした許嫁が、


その道中、賊に襲われ殺された。


少しでも早く

わしに護符を届けようと、

山道を急いでおったらしい。


山賊にやられたと聞いた。

見つかった時にはもう既に

事切れていたそうじゃ。


わしが許嫁の死を知ったのは

桶狭間の合戦の最中であった。

そう話すと元康は

ハラハラと涙をこぼした。


わしをそのように想うてくれた

許嫁の事が不憫で仕方ない。


側に居れずに済まなかったと。

そして、もうそなたから2度と

離れまいとこの手で抱きしめたい。


だから、わしは今もずっと

許嫁を探しておるのじゃ。



そうでしたか、、

では、その方を私も探します。


何じゃと?

そなたは自分の許嫁を探して

いたのではなかったのか?


それは、、

貴方が探しておられる許嫁は

私が探している許嫁と

一緒に居るからです。

改めてSAKURAは、

元康に説明した。


貴方の許嫁とは知らず、

先程はその女などと失礼な言い方を

してごめんなさい。


先ほど話した女性が

貴方の探している許嫁なんです。


では、私の許嫁が死後そのような

復讐の悪鬼と成り果て、

男達を動物に変えて喰らっていた

と、そう言う事なのか?


はい、そうです。

神仏の力でそうなったと

聞きましたが、貴方に事情を

伺い、神仏が力を貸した理由が

分かりました。


貴方の命の無事を想う一心で

1人で暗い山道を護符を届けに。


その道中で野卑な男達に襲われ



挙げ句に命を絶たれ、

どれほど無念だった事でしょう。



それでも私は感じます。

例え殺され肉体から抜け出ても

魂はきっと護符を携えて

貴方の元へ駆けつけたと。



お陰で貴方は傷一つ負わずに

勝利した。


その後の目覚ましい成功は

史実通り。


その間、彼女は呪い続けた。

何人も。何百人も。

いえ、何千人かもしれませんね。


そして、ある日

後に私の許嫁となる僧侶と

出会ったのです。


僧侶の清い心で貴方の許嫁は

救われたと、やっと本当に

死ぬ事が出来ました。

ですが、呪いは消えなかった。


どうしてじゃ?

死を持って呪わしい身の上から

解放されたのではないのか?


私達も

最初はそうだと思っていたわ。

だけど、気がついたの。


この呪いは、

彼女自身が幸せにならないと

解けないのだと。


つまり、

死んだだけじゃ駄目なのよ!


今は、私の許嫁が側にいる事で

幾分幸せを感じていらっしゃる

ようなんですが、、


だけど、そんなのじゃ駄目!

ほら!見て!


ヒヒは人間に戻った手を元康に

見せた。


呪いによってヒヒに変えられたけど

私も本当は人間。


だけど、貴方の許嫁が幾分幸せを

感じている程度じゃ、

此処までしか呪いが解けないのよ!


貴方が彼女に会わないと。

貴方でなければ、彼女は充分に

幸せを感じる事は出来ない。


そう言う事だと思うんです。


次回も引き続きお楽しみ下さい🌸🐎


内容は全てフィクションです。


画像と動画をお借りしました🙏