若者への精神刺激薬(メチルフェニデート、アンフェタミン)投与は、

 精神病を誘発するリスクを高める

 

 という研究が「The New England Journal of Medicine」という雑誌に2019年3月に発表されました。

 

 メチルフェニデートとアンフェタミンのいずれかを処方された13~25歳のADHD患者の、2004年1月1日から2015年9月30日まで(ほぼ11年半)の、保険請求データに基づいたコホート研究で、メチルフェニデート投与群・アンフェタミン投与群、それぞれ110,923人という大規模なものです。

 

 結果は、精神病の343エピソードに一致した集団は、メチルフェニデート投与群で0.10%、アンフェタミン投与群で0.21%。

 

 つまり、メチルフェニデート(コンサータ)を服用している若者の1000人に1人、アンフェタミン(ビバンセ)を服用している若者の1000人に2人が、精神病を発症しているということです。

 これは、アメリカ国立精神衛生研究所などが資金提供をして行われた研究ですが、対照群との精密な比較ではないため、エビデンスレベルは十分に高いとは言えないという前提はあります。

しかし、すでに2007年、FDAは製薬会社に対して、精神刺激薬(メチルフェニデートとアンフェタミン)がさらなる精神病や躁病を引き起こす可能性があると添付文書に記載するように求めています。

日本においてもアンフェタミンが2019年12月に「解禁」となり、さらにコンサータの処方件数は右肩上がりです。

これら精神刺激薬が、1000人に1人の割合で精神病患者を作り出している、としたら……。何とも恐ろしい話です。

 

 しかし、考えてみれば、もっともな話なわけです。

コンサータ(ビバンセ)はドーパミンを増やす働きがあります。

 それらの薬は、ADHDの起こる原因――ドーパミンが少ない――という仮説に基づき処方されるものですが、その仮説は仮説にすぎず、製薬会社の影もちらつくものです。

 としたら、コンサータ(ビバンセ)の服用は単に脳内のドーパミン濃度を高める結果を招くだけ……

統合失調症とドーパミンの関係を考えれば、精神病誘発のリスクが高まるのは当然とも言えます。(統合失調症の陽性症状は、脳内のドーパミン濃度が高すぎるために出現するといわれています。よって、抗精神病薬はドーパミンを受け取る受容体に蓋をする働きがあるのです)。

 

  ADHDと診断されて、コンサータと一緒に抗精神病薬(リスパダール等)が処方されている子どもが結構いますが、薬の作用機序だけを考えると、かなり矛盾していることになります。ドーパミンを増やしつつ、同時にそのドーパミンの受け取りを遮断しているわけですから。

 ともかく、精神刺激薬の服用は、食欲減退による身体的成長へのリスクのみならず、心臓への負担(心臓突然死)についてもすでに言われており、さらに精神病リスクも高まる。

 そのような薬の服用が、学校を舞台に、強制とまではいわないにしても、気軽に口にされています。

 子どもたちに「stimulants=覚せい剤」を与えるリスクについて、今一度、大人が立ち止まって考えるべきではないでしょうか。

 

 ちなみに、厚生労働省が出しているオープンデータからコンサータの処方錠数を数えてみたのが、以下の表です。

 第4回NDBオープンデータ 2018.3~2019.4 

 

 

0~19歳の男女に1年間に処方されているコンサータの処方合計

およそ1600万錠

 

 ここでの数字は錠数なので、処方されいてる人数はわかりませんが、これらを飲んでいる子どもたちが、1000人に1人の割合で「精神病」を発症している……。これは医原病です。