「世界ベンゾ注意喚起の日」(711)において、今年はその日に(その日は土曜日なので、正確には7月10日)厚生労働省に7つの要望を提出することになったのは、先日お伝えした通りです。

 その中で「5」については後日説明するというでした。以下、こんな要望です。

 

5、研究の内容について質問があります。

厚生労働省の研究事業である「向精神薬の処方実態の解明と適正処方を実践するための薬物療法ガイドラインに関する研究」平成29年度~30年度 総合研究報告の中で、「向精神薬の減薬・休薬を試しみた際の問題点」について以下2点質問があります。

1)ベンゾジアゼピンを減薬する際の問題点の1位が、「患者が嫌がる」となっています。

患者が嫌がるとは具体的にはどのような事でしょうか? 何故嫌がるのでしょうか?

2)そもそも、本アンケートは医師だけを対象にしているようですが、当事者の声は対象にしないのでしょうか?

 

 

 厚生労働省は科学研究の一つとして、秋田大学の三島和夫氏を中心に、2018年、向精神薬の処方実態についての調査を行っています。その中で、ベンゾ(抗不安薬と睡眠薬)に関しても処方実態が調査されました。

 もちろん、その他、抗うつ薬、抗精神病薬、ADHD薬、気分安定薬についても調査されており、かなり興味深い結果が出ていますが、今回はベンゾに限っての話をします。

 実態調査についていくつか紹介します。

 

 

 

これを見ると、多くの精神科医(心療内科医)は睡眠薬、抗不安薬については「症状が改善したら中止すべき」と考えていることがわかります。

その理由として「副作用の懸念が大きいため」と、これまた「精神科医はわかっている」実態が浮き彫りにされていますが、ただし、「症状改善から減薬開始までの期間」が、睡眠薬、抗不安薬どちらも「6カ月以上1年未満」が多いです。そこまで飲んでしまうと、常用量依存が形成され、減薬には苦労が伴うことになりますので、医師が本当にどこまでわかっているのかは、疑問が残ります。

 一方で、「中止すべきではない」医師も1割弱います。理由は「再発防止」あるいは、「患者が継続を望むから」となっています。

「再発防止」とは、減薬した時に離脱症状が出て、それを「再発」と考える医師がいるということでしょう。(この手の医師が、ベンゾを10年も20年も処方するのです)。

そして、「患者が継続を望むから」という回答が、要望書に書いた「5」へと続いていくわけです。

 要望書で言っているのは以下の調査につてです。

 

 

 

 睡眠薬、抗不安薬において、「減薬・休薬を試みた際の問題点」として、「患者が嫌がる」という回答が圧倒的に多いのです。(ついで離脱症状となっています)。

患者が嫌がるというのは、医師から見ると、患者のどのような言動を言うのでしょうか。

すでに中毒状態となっているため、「薬がなくてはいられない」、そういう患者が多い、ということでしょうか。

ではなぜ、中毒になってしまったのでしょうか?

また、離脱症状が別の項目として立てられていますが、「嫌がる」理由として「離脱症状が出るから」ということもあると思われます。複数回答なので、そういう意味で回答した医師もいるでしょう。

 

 ともかく、このアンケートは医師に対してのみ行われたものです。

しかし、「ベンゾの減薬、休薬を試みた際の問題点」として、患者側からの意見は、医師の意見より、今後のベンゾ問題を考えたとき、より重要なものになるはずです。なぜなら、ベンゾについては医師より患者のほうが、体を通していろいろなことを知っているからです。

 

厚生労働省は当事者ではなく、医師の方を向いています。

実態調査と言いながら、患者の声が拾われていないのは、実は「実態」とは程遠いと言えるのです。

このような当事者を参加させない研究を元に医療(精神医療)を考えていく限り、「黙ってこの治療を受けていればいい」(薬を飲んでいればいい)といった「上」から「下」への下賜的医療からの脱却は望めないでしょう。