ベンゾジアゼピン系薬剤の減薬の際、微量の減薬を可能にするため、散剤処方にしてもらって量を調整している方も多いと思います。

今回はそうしたケースで、調剤薬局で起きた事故についての体験談をお伝えします。

 

 伝えてくれた男性Aさんは、2013年からあるベンゾ系抗不安薬・10㎎を服用していました。

 しかし、ネットや新聞情報で、ベンゾ系の薬に対する危険性が伝えられ、アシュトン・マニュアルも日本語で出たこともあり、2018年8月から、散剤処方にしてもらって(漢方薬を併用しながら)ベンゾ系抗不安薬の減薬を開始しました。

 散剤にしたのは、急激な減薬は離脱症状が大きく出るということも知っていたからです。Aさんは安全性を重視し、ゆっくり、少しずつ減薬を進めていきました。

 2019年4月時点で、ベンゾ系抗不安薬散10%(製剤量80mg、成分量8mg、1日0.08g)まで減薬しました。

 つまり、8カ月で、10㎎から8㎎となり、実質2㎎の減薬です。

 

 しかし、通院していた診療所が2019年3月で閉院となったため、翌月の4月からは系列の病院に転院となりました。

 2019年4月、初めての診察のあと、処方箋をもって調剤薬局に行った際、Aさんは、処方箋の記載が、散剤10%(製剤量80mg、成分量8mg、1日0.8g)になっていることに気づきました。

そこで薬剤師に「これは、1日0.8gではなく、0.08gの間違いです。これでは10倍の量になります」と訴えたのです。しかし、薬剤師が言うには、「成分量が8mgなので大丈夫です」とのこと。

不信感を抱きましたが、薬剤師は大丈夫の一点張り。

それでも10倍の量なのではないのかの思いが残り、それなら、処方された薬の10分の1を飲めばいいのか。でも、もしそれで突然の大減薬になってしまったら……。あれこれ思案しつつも、Aさんは結局、そのまま飲むしかありませんでした。

しかし、その後も「本当に大丈夫か?」の思いは消えず、薬剤師に、2019年5月から8月にかけて繰り返し「間違いではないのか」と強く指摘しましたが、「絶対に大丈夫です」と繰り返し言われたといいます。

 

しかし、2019年9月になって、調剤薬局のほうから連絡が入りました。

「患者さんが指摘した通り、1日0.8gではなく、0.08gの間違いでした。10倍の量になっていました」

薬局として調剤過誤を起こしたことを認め、謝罪があったといいます。

 しかし、後の祭り。

 Aさんの体調は悪化していきました。

通院している病院の主治医にAさんが確認したところによると、以前の診療所からの引き継ぎのカルテに、散剤10%(製剤量80mg、成分量8mg、1日0.8g)と書かれていて、「1日0.8g」という記載は、診療所の医療事務が勝手に記入したとのことでした。

 0.8g=800㎎

 その10%ということなので、80㎎になります。

せっかく8㎎まで減薬してきたベンゾ系抗不安薬を、突然10倍の80㎎飲まされたことになります。(ちなみにこのベンゾ系抗不安薬のマックス処方は日に60㎎までです)。

※(追記)

 実はこのとき、調剤薬局の薬剤師は処方箋の記載内容に疑問を持ち、現在の主治医に疑義照会をしていました。すると、主治医は「大丈夫です」と言ったのだそうです。しかも、その後もAさんは、処方箋の記載内容が間違っていると思ったので、主治医に転院前のお薬手帳の処方内容を見せて、間違いを指摘したそうですが、その都度医師は、「大丈夫です、心配いりません」と言ったと言います。薬に関しては薬剤師が専門ですが、疑義照会をしていますので、この主治医にもかなりの責任があるのではないかと思います。

 

 Aさんはこのようにして、突然の急激な増量のベンゾを5カ月も飲むことになってしまいました。当然、さまざまな副作用が現在も出ています。

 唾液過多・喀痰増加・嚥下困難で、固形物が一切食べられない。Aさんは現在、栄養剤(エンシュア、メイバランス)等の食事しかとれなくなりました。

さらに今年の2月くらいから目の異常も出現。

Aさんは現在も引き続き同じ病院に通院していますが、そしてもちろん、これからも減薬は進めていくつもりですが、10倍になった量からの減薬は困難を極めると言います。

 体への負担を少しでも減らすために微量の減薬を実行したのに、一応専門職と言われる人たちのダブルのケアレスミスによってこのような事態に陥ってしまうとは、なんとも理不尽としか言いようがあります。

現在Aさんは、診療所の医療事務と、調剤薬局に対する訴訟を検討しています。

 

 減薬のための散剤調剤に注意

 Aさんの処方箋に書かれていたのは次のようなものです。

散剤10%(製剤量80mg、成分量8mg、1日0.8g)

 

 「㎎」と「g」という単位を分けて表示する意味は何なのでしょう。

 薬剤師の方がいたら、教えていただけると助かります。

 「ヒヤリ・ハット」事例にもこうした粉薬の処方ミスが多数取り上げられています。

が、この薬剤師がなぜ「成分量が8mgなので大丈夫です」と言い張ったのか、わかりません。何をどう勘違いしたのでしょう。

 ㎎とgで分けられているので、この計算、結構ややこしいものもあり、素人ではなかなか理解しづらいです(そのための専門職のはず)。

 それでも散剤で処方を受けている方、処方のたびに、この点、ちょっと確認してみた方がいいでしょう。ベンゾ系薬剤に過敏症を持っている人にとっては、大げさでなく、命とりになります。

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