東大の研究会が新型コロナの影響で延期になりましたので、そこで発表する予定だったいくつかのことを少し公開していこうと思います。

 

 まず、発達障害の一つであるADHDに投与されるコンサータについて、少し掘り下げて考えてみます。

 コンサータがなぜADHDに処方されるのか?

 それにはまずADHDの症状がどういう仕組みで起きているのかを見ていく必要があります。といっても、これはあくまでも「仮説」です。

 ADHDの症状は、ものすごく簡略化して言ってしまうと、脳内の神経伝達物資である「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」濃度が低いために起こるとされています。

 それで、コンサータは主にドーパミントランスポーターに結合し(ストラテラはノルアドレナリントランスポーターに結合し)、再取り込みを阻害する(70%阻害)ことでシナプス間のドーパミン量を増加させる働きをします。それ以外に、直接神経に作用し、ドーパミンの遊離を促進する作用があります。

 図を見るとよくわかると思います。丸いシナプス小胞には赤い点々で表された神経伝達物質が入っていて、それがシナプス間隙に放出され、それを受容体がキャッチすることで、私たちは情報の伝達を行っているのです。

 このシナプス間隙の濃度を高めるために、トランスポーターの口に蓋をするのが薬の役割です。

 コンサータはドーパミン。

 抗うつ薬はセロトニン濃度を高めるために、セロトニントランスポーターに蓋をします。

 

https://h-navi.jp/column/article/35027521?registration=1

 

 しかし、コンサータ(あるいはリタリン)の作用機序の裏付けとなっている「仮説」=ADHDはドーパミン濃度の低下にその原因があるという仮説は、アメリカのCHADD(チャッド)という団体(製薬会社の出資を受けたADHDの子どもと大人の当事者会)が作り出したものです。そこにどれほどの信ぴょう性があるのか、ないのか。

 製薬会社の出資を受けた団体の主張ははなはだ疑わしくなってきます。にもかかわらず、コンサータがドーパミン濃度を高めるのは、確かなことです。もし、ADHDとドーパミンの関係が「仮説」のようなものでなかったとしたら……? 脳内のドーパミン濃度が必要以上に高まるだけの結果になります。

 この「仮説」は単に薬の売り上げを伸ばすための方便に過ぎなかったとも言われているくらいです。ちなみに、日本のADHDを啓蒙する団体「えじそんくらぶ」の代表者はCHADD会員です。

 

 もう一つの神経刺激薬である「ビバンセ(リスデキサンフェタミン)」=昨年12月に発売となりました――これはドーパミンとノルアドレナリンの両方の再取り込みを阻害し、さらにリスデキサンフェタミンは体内に入ると覚せい剤材料のアンフェタミンに変化しますが、それが作用して、シナプス内のドーパミン、ノルアドレナリンの遊離を促進するとされています。

 

 コンサータやビバンセなど神経刺激薬の問題は、副作用ももちろんですが、長期服薬の弊害があります。

 次回は、長期服薬についての最新の研究をお伝えます。