3月10日の朝日新聞デジタルに以下のような記事が掲載された。
都立病院顧問、製薬会社の謝礼700万を申告せず
東京都立小児総合医療センター顧問の男性医師が2013~14年度、製薬会社2社から講演や原稿執筆の謝礼などとして計約700万円を受け取ったが、国の指針に基づく規定に反してセンターに申告していなかった。9日、都が明らかにした。
顧問は、日本発達障害ネットワークの理事長などを務める市川宏伸氏。2社は注意欠陥・多動性障害(ADHD)の治療薬を販売する日本イーライリリー(神戸市)とヤンセンファーマ(東京都)。都は事務的ミスによる申告漏れで問題はなかったと判断したが、新年度には顧問職を解く方針だ。
厚生労働省は補助金を使う研究者が同じ企業や団体から得る収入が年度内に100万円を超える場合、所属先に申告することを義務づけている。市川氏は厚労省の補助金を得て、児童の精神疾患などの研究をしていた。都の調査に対して「失念していた」と説明したという。都は製薬会社への利益誘導はなかったが、手続き違反があったと判断した。
ずいぶん市川氏側に立った書き方だが、「事務的ミス」「失念」というのはどうも怪しい。なぜなら、それ以前からこの問題を都に追求していた人がおり、その時点ですでに一度本人に確認し、問題ないという報告を受けていたからだ。そして、今回、改めて問題が追及され、ついに白旗を上げたということだ。
それにしても、2年間で2社から700万円……。
市川宏伸氏は、都立小児総合医療センター顧問のほか、日本ADHD学会の理事長、また日本発達障害ネットワークという当事者団体の理事長も務めている、いわば日本の発達障害(とくにADHD)の第一人者、ドンといった人物である。
利益相反に関しては、いまは製薬会社のホームページから、個人情報を伝えたのち、一般の人にも見る権利が与えられている。製薬会社としては透明性を前面に出した格好だが、報告すればいいというものではないだろう(もちろん、報告すらしていないというのは、論外。「失念」で済む問題ではない)。
これだけの金額をもらえば、その会社の薬を使う、宣伝する(より多く)のは当然。いや、それが人情というものだろう。
子どもたちを過剰にADHD と診断し投薬を行い、その陰で、それらの製薬会社からお金をもらい私腹を肥やす……。
ところで、先日の3月6日、さいたま市で市川氏が理事長を務める日本発達障害ネットワーク(一般社団法人)のセミナーが開かれ、2500円の大枚を払って参加してきた。
埼玉県教育委員会が後援のセミナーだったが、そこには3人の精神科医が出席していた。
もちろん、市川宏伸氏もご臨席。もう一人は、埼玉医科大学小児精神診療の副部長の横山富士男氏。さらに、北海道で「こころとそだちのクリニックむすびめ」を開いている田中康雄氏の3人だ。
講演の冒頭、横山氏は「特に利益相反等はございません」と断りの言葉があったが、田中氏、そして市川氏からはそうした言葉は聞かれなかった。
市川氏は今回のように700万円。そして、田中氏……彼は講演では、薬のことには一切触れず、いかに親や教師と連携して、困っている子どもたちを救っていけばいいのか……さらには「医療はでしゃばる必要はない。黒子でいい」などと発言し、「話せる医者」と感じさせたが、じつは彼、日本イーライリリーが作成した「小児ADHD理解のために」のアニメーションの監修を行っていたりする。(イーライリリーの「企業活動と医療機関等の関係の透明性に関する情報」をざっと見ただけだが、田中氏は2014年度に、445,480円の報酬を得ている。またこれによれば、イーライリリーはこうした謝礼を2014年だけで10億4000万円以上使っていることがわかる。)
講演の中で薬物療法について積極的に話した医師は一人もいないかった。
質問の中でようやくそれについて話したという恰好である。(もちろん、私も質問をする用紙に、薬物療法についての考えを聞かせてほしいと要望しておいた)。
答えたのは、市川宏伸氏。ほぼ、その通りを書きだしてみる。
「薬を使うことに否定的な人が多いようだ。薬がいいとか悪いとかいう話ではなく、事実だけを述べることにする。
オーラップという薬がある。40年前の薬で、子どもにも使える薬だが、当時の治験のやり方が今とはちょっと違うので、本当に効果があるのかどうかわからない。薬というのは10年毎に再評価されるが、一つしかない薬については再評価しない。つまり、ずっと使い続けるということ。
しかし、この2月、リスパダールが小児自閉症に認可された。そして、この夏にはエビリファイ……これは今治験が終わっているので、自閉症の興奮に対して使えるようになる予定だ。
ADHDに関しては、コンサータという、これは徐放性のメチルフェニデートで、平成19年にリタリンが中止になってから使われるようになった。飲んで1時間半で効きはじめ、12時間効果が続く。
以前、リタリンは日本だけうつ病に適応があって、成人など、気持ちがよくなって依存性が問題となり使えなくなった。しかし、子どもにリタリンを出しても当時副作用はほとんど起きていなかった。
もう一つADHDの薬として、ストラテラというのがある。これはゆっくり効いてくる。2~3週間しないと効果がない。体重によって量が決まり、朝と夕に飲む。しかし、副作用もほとんどないので、こちらを使う人も現在は多い。
しかし、日本の場合、これ以外、子どもに認可されている薬は今はない。
ただし、現在治験中で、来年の夏にはADHDの薬がもう一種類出る予定。アメリカでは10種類くらいある(のに比べて日本は少ない)。
よくある質問に、薬を飲んだ方がいいのか、飲まないほうがいいのかというのがある。
でも、「この薬、本当に効くのかな」と思って飲んでも、効くわけがない。
また、大人のADHDの人にはパンフレットを渡すようにしている。
副作用は、食欲が落ちる、睡眠が悪くなる。だから、消化薬も一緒に処方したりする。
簡単に薬を勧めるドクターもいるが、疑問があったら、質問をすること。
薬がなくてももう少し頑張れるんなら頑張ればいい。
「学校の先生が薬を飲めと言ったから来ました」という人には、私は薬を出していない。」
現在のADHDの流行は、私には、15,6年前のうつ病キャンペーンを思い起こさせる。
病気を啓蒙して、受診率を上げる手法だ。
製薬会社のホームページを見れば、当時(主にGSK社が)盛んに行っていたように、病気の宣伝、知識を伝え、この病気にはこんな症状がある、放置しておくと大変なことになる、治療法の説明(薬物療法については遠慮がちに説明)、そして、チェックリストがあり、これで何点以上だと、この病気の可能性が高いとして、最後に、病院検索ができるようになっている。
こうした点、うつ病のときとやり口はまったく同じであり、それはまた別の病気(それぞれの「病気村」がある)においても、そこに群がる「専門家」たちが必ず存在する。
そして、そのどこにも「患者」「当事者」の姿はない。
もし、向精神薬がなくなれば、製薬会社の収入は半分ほどになるという。製薬会社を生きながらえせさせている向精神薬。病気でもないものを病気として、そこに薬を使うことで成立している会社といったら言い過ぎだろうか。
しかし、統合失調症が100人に1人(あるいはそれ以上)いないと困る人たち、あるいは発達障害が子どもの1割以上いないと困る人たちがこの世にたくさんいるということだけは確かだ。
仙台茶話会のお知らせ
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以下は、この茶話会のお世話をしてくださっている女性からのメッセージです。
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かこさんを中心に、精神医療や薬のことで困ってる人、不登校・いじめ・発達が心配なお子さんがいらっしゃりこれから精神医療につなげようか迷っている人たちの小さな談話会です。後半は広瀬川沿いを散策します。