今日、ある団体のある機関誌を編集する方と会ってきました。

 その機関誌で「子どもと向精神薬」について触れたいので……ということで、取材ではなく、私が原稿を書くことになりました。

 子どもと向精神薬についてはこれまでも折に触れ考えてきた問題ですが、やはり一番大きな問題(数が多いという意味で)は、発達障害に対する安易な投薬だろうと思います。

 以前も、ブログで取り上げたところ、「発達障害の子どもたちは薬漬け」という現実を伝えてくれるコメントがたくさん入りました。

 しかし、なかなかその実態が数字として出てきていません。

 現在、子どもの何人に一人が向精神薬を服用しているのか(発達障害の診断の元、あるいは精神疾患の診断の元)…そういう調査が行われたことはあるのでしょうか?


 それにしても、児童施設や特別支援施設での実態もかなり問題をはらんでいるようです。ある読者の方から教えてもらったのですが、ある施設長は、ちょっと問題行動のある子どもを早く医療につなげるよう親に勧めたり、あるいは、陰で「あの子、早く、薬を入れてしまえばいいのに」とつぶやいたり……。

 こうなると、薬を飲むのは「その子のため」というまやかしの言い訳さえすっ飛んで、もはや「厄介払い」そのものです。

 発達障害の診断は親にも大きな影響を及ぼします。診断されると不安になって、一刻も早く薬を飲ませなければ大変なことになると勘違いしている親。薬が「病気」を「治してくれる」と、積極的に服薬の方向へ向かう人もいます。

 子どもの頃の向精神薬の暴露は、将来的に決していいものではない……という想像力があまりないのでしょうか。妊娠中には市販薬にも気を配るはずなのに、自分の子どもが他の子どもとちょっと違う言動をとったりすると、それを何とか「治さなければ」と思ってしまうのでしょうか。

 子どもと薬の関係は、子どもを取り巻く環境(社会、家庭、学校等々)にまったく手を付けないところから出てくる課題です。そういう面倒な問題をスルーして、子どもという「個」を「医療化」することで、その場しのぎの解決を図ろうとするものです。しかし、そこには真の解決もなければ、子どもの未来への配慮もないように思われます。

 他人と違う行動をとることで、子どもが自分を否定的にとらえてしまう、それが子どもにとってどれくらいマイナスであることか。薬を飲ませたがる人たちはこういう論理を持っています。一見もっともらしいですが、裏を返せば、他者と多少違ったところのある子どもは、薬を飲んででも、他と「合わせ」なければいけないということです。「個性」などいらないということです。

 あるいは、ある親御さんからお叱りの意見をいただいたこともあります。発達障害をもつ子を育てるのがどれほど大変なことか……薬を飲めば多少扱いやすくなる、だから飲ませたくないけれど、飲ませざるを得ないのだと。

 発達障害と子どもへの投薬について、さらなる体験談を募集します。

 コメント欄に書かれても結構ですし、メールをお送りくださっても結構です。

 kakosan3@gmail.com




きょうの健康 (今日は抗うつ薬についてでした)

「うつ病が治らないあなたに」は今日も大した内容もなく、終わりました。

 24歳以下の若者への抗うつ薬投与は慎重にと、自殺リスクの増大に触れていましたが、かなりさらっと。

 また、一応副作用についてもそれぞれの薬について述べていましたが、これまた上っ面のものばかり。

 そして結局は、途中でやめないで1年くらいは続けてくださいと(しかも、やめ方について、漸減すべきとは一言も言わず)、さらに吐き気の副作用が出たら、吐き気止め(たぶん、プリンぺラン等ドパミン作動薬)を飲めばいいということです。

 過剰処方については触れていました。本来なら単剤で、しかし2剤までなら効果があるという研究があるとのこと。そういう研究について言及するなら、別の研究――イギリスのアービング・カーシュが行った研究――抗うつ薬は重度のうつ病にしか効果がない(中・軽度のうつ病には効果がない、2008年)は無視ですか、と言いたいです。

 渡邊さんは、番組冒頭で、「薬に反応するのは4割弱」と言っていましたが、どこから出てきた数字なんでしょうか。

 また、2剤なら効果があるが、3剤以上で効果があるという研究はない、とも言っていました。しかし、診療報酬の改定で、今年度から、多剤で減算措置になるのは、抗うつ薬の場合、4剤以上です。つまり、3剤までは多剤とはならない……しかも、それが効果があるという研究はない、にもかかわらず、3剤まで処方してもいいことになっているという日本の精神医療界の現実。

 いい加減なものですね。

 で、最後のほうで司会者が早口で言っていました。

 2剤の抗うつ薬に、プラスして気分安定薬、さらに抗精神病薬を処方する。それは効果があるという研究があると、これまた早口で渡邊さんが答えていました。

 抗うつ薬+抗精神病薬……いわゆる慶応処方です。慶応大学病院が好んでこの組み合わせをやるようです。しかし、これは、アクセル踏みながらブレーキを踏むようなもので、頭の中は混乱することでしょう。

「うつ病が治らないあなたに」と題したこの番組のメッセージは、つまりうつ病が治らない人は、こういう処方にすればいい(主治医にお願いする)ということなのでしょうか。でも、余計に悪くなっちゃうかもしれません。

 

 それにしても、前エントリのコメント欄で、「コロ助」さんが怒っていますが、ご指摘の通りと私も思います。この番組は「あなたに」といいながら、医療者側がいかにきちんとした診療をしているかをアピールし、治らないのは、主治医にきちんと相談しない「あなた」のせいと言わんばかりなのですから。