少し前のエントリにコメント入れてくださったみきさんという女性がいる。

 次のような内容のコメントである。



妊娠が判明して断薬、離脱症状が厳しい

私は今、離脱症状に苦しんでいます。約10日前まで、ランドセン、デパケンR、サインバルタ、ユーパン、リリカ、ハイペン、フルニトラゼパム、リスミー、ヨウテチン錠、デパスを飲んでいました。約10日前に妊娠がわかり、産婦人科の判断で今はユーパン、リリカ、フルニトラゼパム、リスミー、ヨウテチン錠、サインバルタのみを飲んでいるのですが、薬を一気に止められてからとにかく動悸が激しく、苦しくて……。耐えていたら、今度は感覚麻痺状態で歩くのが困難になってしまいました。

そして、寝込むようになって昨日のこと、携帯の文字が逆に見えたり震えが止まらなくなったり、思考回路が回らなくなったりで、精神科の担当医に相談したくて電話をしたら取り次いでもらえず……。「30分後にかけ直してください」と言われて、言う通りにかけ直したら外来の女の看護師さんが「先生からは、我慢してくださいとの事です。赤ちゃんに何かあっても責任取れないので」とだけ言われました。「せめて予約を早く出来ませんか?」と聞いたら、「予約いっぱいなんで無理ですね」とあっさり言われました。

これは私の我が儘かもしれませんが……赤ちゃんがいるからこそ、この状態では出産が出来ないんじゃないかと不安な中で、離脱症状も日に日に悪化していて、今まで出来ていたことが出来なくなり悩んでいる患者に対して、「我慢してください」って、何をどこまで我慢したらいいのかわかりません。不安は募るばかりで、今では布団からトイレまでの距離すら動悸で苦しい上に、感覚もままならず地獄です。」



最初はただ呼吸が苦しかっただけ

みきさんは現在31歳。最初に精神科(心療内科)にかかったのは、18歳のときである。

そのときは、ただ呼吸が苦しいという症状だけで、あちこちの内科を受診したが、どこにも異常が見つからず、精神科の受診を勧められたのだ。近所の心療内科に行ったところ、自分もうつ病だという女医さんが、みきさんをパニック障害と診断した。レキソタンと、あとははっきり覚えていないが、青い錠剤とピンクのカプセルが処方された。

その後、眠れなくなると、医師は今度は不眠症と診断した。


「当時はまだ18歳で、負けず嫌いだった私は、その女の医師が信用できず、自分で治してみせると、精神病の本を読みあさっては自分で出来ることはどんな事でもしました。

その結果、電車にも乗れるようになり順調だったんです。毎日毎日、一駅ずつ乗って、やっと快速にも乗れるようになった時に、今通っているパニック障害専門医に出会いました。

その医師は精神科病院の院長で、2年でパニック障害を治しますと断言し、最初は心強かったのですが……そのうち病名が増えていきました。」


当時みきさんは22歳……結婚したばかりで、周囲に誰ひとり知り合いもなく、ただ「毎日が不安です」と医師に言ったところ、うつ病自律神経失調症と診断された。出された薬を飲むと、身体中がすごく痛くなり、それを医師に告げると、今度は緊張痛だと診断された。

結婚をしたばかりの女性に対して、薬と妊娠についての話や注意など一切なかったという。

その後も、症状の改善はなく、薬は増え続けた。階段から落ちたり、道端に倒れてしまったり……それを医師に言うと、脳波一つとることなくてんかんという診断が下された。さらに、動悸が激しくなり、呼吸が苦しいと話すと、不安神経症という診断がついた。

新しい診断名がつくたびに薬の量と種類も増えていき、副作用にも悩まされた。全身に湿疹がでたり、ときには体がまったく動かなくなってしまったり、薬の量だけが増えていく日々。

妊娠が判明する直前まで飲んでいた薬は、前記の通り、

ランドセン(ベンゾ系抗てんかん薬)、ユーパン、フルニトラゼパム(ロヒプノールorサイレース)、リスミー、デパス――ベンゾジアゼピン系抗不安薬睡眠薬

リリカ(疼痛治療薬)、 デパケンR(気分安定薬)、サインバルタ(抗うつ薬)、ハイペン(非ステロイド鎮痛薬)、ヨウテチン錠(ビタミン剤の一種)

そして、妊娠が判明すると同時に、産婦人科医の判断によって、下線部の薬を一気に断薬することになったというわけだ。



離脱症状? いや、本来のあなたの姿です

このコメントの後、みきさんとメールの交換をするようになり、状況を知らせてもらった。

まず、産婦人科医の意見は――、

「この離脱症状がどうにもならないなら、今回の妊娠はあきらめるしかない。薬に関しては、産婦人科としては禁止すべき薬を禁止するしかない。あとは精神科とよく相談してください」

 ということで、その後、精神科を受診。そのときの様子をみきさんは次のように書いてきた。

「精神科、行ってきました。

結果、離脱症状というものをまずして認めてもらえず…薬を中断しての体調の悪化は、本来のあなたの姿ですって言われました。

そして、産婦人科から禁止されていない薬も、妊娠を継続するなら飲まないようにしなくてはいけないと言われて…でも、薬を中断しただけでそんな体調が悪いなら先は難しいと言われました。

結果、今までの薬に戻り、妊娠継続をあきらめることになりました。

断薬したランドセンもデパケンも、特にデパケンに関しては離脱症状は起こらないと言っていましたが、何か信用出来ないです。」


妊娠継続を断念し、薬を戻したところ、体調は少しよくなったという。こうしたことから、やはり離脱症状だったのではとみきさん自身、思っている。

薬を中断して悪化した場合、それはあなたの元々の症状が出てきた……というのは、じつによく聞くセリフである。しかし、みきさんの場合、中断した薬を見れば、離脱症状であることは確かだろう(医師の言うとおり、百歩譲ってランドセン、デパケンで離脱症状は起こらないとしても、デパスもやめているのだ。そうしたことを考慮せず、一方的に「本来のあなたの姿」とは……。)

デパスの添付文書

重大な副作用

1. 依存性(頻度不明)

薬物依存を生じることがあるので,観察を十分に行い,慎重に投与すること.また,投与量の急激な減少ないし投与の中止により,痙攣発作,せん妄,振戦,不眠,不安,幻覚,妄想等の離脱症状があらわれることがあるので,投与を中止する場合には,徐々に減量するなど慎重に行うこと.



そうやって医師は患者をコントロールしようとする。医師にこう言われてしまえば、離脱症状というものを知らない限り、患者はそうなのだと受け取るだろう。そして、律義に薬を飲み続ける。みきさんも医師のこの言葉を聞いて……、

「薬を飲まない状態(ひどい状態)が私の本来の体であるのなら、これから先…赤ちゃんがいない状態でも、減薬など出来ないという意味にすら聞こえました。」



産婦人科の対応

みきさんはあまりの離脱症状に妊娠継続をあきらめ、それを産婦人科に伝えに行ったが、今度は産婦人科医の対応もひどかった。みきさんのメールから。


「昨日産婦人科へ連絡をしたら、すぐ来てくださいと言われ行きました。「精神科の医師に妊娠継続は無理だと言われました」と伝えたら、産婦人科の医師が急に態度を変えて、持っていたボールペンを机の上に放り投げ、「精神科に無理と言われたから中絶するなんておかしい! 世の中には、てんかんでも薬を飲みながら出産する人や、膠原病でも出産する人、癌でも出産する人がいるんです! 結局、あなたの問題でしょ!? あなたがだらしないからでしょ!? 一つの命ですよ!!」とすごい剣幕で言われました。挙げ句、「中絶が終わって、1週間後に子宮の検査が終わったら、あなたみたいな人が今後、妊娠しないように避妊治療を行うので、通ってください」と。」

 

 じつはみきさんは、最初妊娠がわかったときは、家から少し離れた産婦人科を受診して、薬のことも伝え、減薬を提案されたのだが、今回行ったのは、同じ病院でも、家から近いところにある分院のほうだった。本院の対応と、分院の対応のあまりの違いに唖然としたが……。


「本院で赤ちゃんのことを考えてくださり、禁止された薬を飲まなくなって苦しみ…精神科へ行き、私だって悔しかったけれど、決断して意を決して分院の先生に伝えたのに…本院と分院で全く言ってる事が正反対。

悔しくて、涙が出そうでした。あなたみたいな人ってどういう意味なんですかね。

それと、薬を飲みながら出産した人もいるという言葉…。私は本院で影響ある薬を禁止されたんです。赤ちゃんのことを第一に考えるからこそ本院の先生は禁止したんだと思います。それなのに…分院の先生の話には言葉が出ませんでした。

これから先、妊娠出産は怖くて考えられません…。けれど、薬漬けは嫌なので自分で色々試しながら進めていこうと考えています。

正直、今の私は精神科も産婦人科も信じられません。1つの大切な命を殺してしまう…。離脱症状に苦しみ、精神科へ行き、無理だと言われ、最終的に決断をしたのは確かに私自身で、産婦人科の先生に色々言われることは覚悟していました。けれど、避妊治療しますので通ってくださいと費用まで説明され…。

一番辛いのは、赤ちゃんです。犠牲になり…振り回されたのも赤ちゃんです。

中絶は○日に決まりました。その日にちすら、「空いてるとこに入れちゃって!!」と私の目の前で看護婦さんに言っていました。

どうしてこんな思いをしなくてはならないのでしょうか。本当、何なんですかね…。

精神科は、中絶することをわかっていながら、いつもと変わらず、「1ヶ月後にまた予約取ってくださいね」って…平然な顔でした。

今日、携帯で初めて通っている精神科のホームページを検索したら…『薬漬けにしない』という記載には目を疑いました。病院のホームページはいいことばかり書かれています。(当然ですが)それを見た、苦しんでいる人達は、すがる思いで病院に行くと思います。そして毎回同じような見たことある患者さん達…。病院の敷地内に設置されている喫煙所には、まるで友達同士のように「久々だね、どうだった?」とか色々な会話が飛び交ってます。

私は何なのか…精神病である私が間違っているのではないか、そういう気持ちです。赤ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいです。

中絶したら…立ち直れるか正直、自信ないです。けれど、中絶をした後、その胸のうちを精神科に伝えるつもりはありません。だって精神科に話したところで、大切な命は返ってきませんから…。」



再び服薬

手術は無事に済み、現在のみきさんの服薬はほぼ以前同様に戻っている。

漢方23番と20番 ×3(朝昼夕)
ランドセン1mg1錠 ×3(〃)
ユーパン錠0,5mg1錠 ×3(〃)
レパミド錠100mg1錠 ×3(〃)
ヨウテチン錠100100mg2錠 ×3(〃)
デパケンR100mg1錠 ×2(朝夕)
リリカカプセル75mg1錠 ×2(〃)
サインバルタカプセル20mg2錠 (夕)
睡眠前ランドセン1mg1
フルニトラゼパム錠2mg1
リスミー錠2mg1
ゾルピデム酒石酸塩10mg1
頓服薬で、デパス錠1mg1



離脱を認めず、それを彼女の元々の症状として、医師はこの薬をずっと飲み続けさせる考えなのだろうか? やめるにやめられない状況を自分の処方がつくっているという意識は皆無なのだろうか? 妊娠可能の年代の女性に対する薬の処方をちらとでも考えたことがあるのだろうか?

産婦人科の医師は医師で、処方薬によって依存に陥った患者に向かって、医師とも思えない言葉を(たとえそれが産婦人科医としての思いから出ている言葉であったとしても)、すでに十分傷ついている患者であることがわかっていながら、叩きつける。おそらく薬物中毒という視点でしかみきさんを見ていないのだろう。離脱症状というものを、この医師も知らないのだろう。


最初はただ呼吸が苦しいという症状で、心療内科(精神科)への受診となった。それからいくつもの診断名をつけられて、「薬漬け」。やめるにやめられない状況での妊娠である。

以前にも、服薬中の妊娠、断薬して離脱症状のため中絶となってしまった女性の体験談を紹介した。http://ameblo.jp/momo-kako/entry-10684324223.html


女性への投薬は常に妊娠という可能性を考慮しながら行われるべきものであるはずだ。人生そのものにかかわる問題である。あまりに安易……安易などという言葉では片付けられない、医師としての無責任さを感じる。

 ちなみにデパスの添付文書から。

「妊婦(3カ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること.〔動物実験により催奇形作用が報告されており,また,妊娠中に他のベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム)の投与を受けた患者の中に奇形を有する児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査報告がある.〕