先月の12月26日、都立中野特別支援学校で開かれた講演会に参加してきました。

スピーカーの1人として、NPO法人東京都自閉症協会に所属する片岡聡氏がいます。

片岡さんは2010年にアスペルガー障害と診断が下るまでの間、精神科でさまざまな病名をつけられ、結果、多くの向精神薬を処方され続け、その副作用に苦しまれた経験があります。(ちなみに、アスペルガー障害を誤診され(たとえば、初期統合失調症、境界性パーソナリティ障害、難治性うつ病など)、抗精神病薬等を漫然と大量に処方された経験をもつ人はたくさんいます)。

片岡さんは、現在、そうした薬害の被害者という立場もさることながら、成人した当事者としての立場から、誤診の問題、発達障害啓発のため、さまざまなところで講演活動をされています。

そして、先日お伝えした「精神科早期介入問題を考える会」では、片岡さんにお願いして、講演会に出席された方々に、以下のようなパンフレットを資料とともに添付していただきました。

講演会の聴衆はほとんどが都立の高校の先生、特別支援学校の先生です。

日常的に生徒に接する現場の先生方に、この「早期介入」がいかに危険であり、胡散臭いものであるか、そのことを知っていただくことで、すでに動き出している「早期介入」とはいえ、せめて水際でそれを食い止めることができればと願っています。

 片岡さんもご自身のブログで記事を書かれていて、たいへん参考になりますので、ご覧になってください。http://ameblo.jp/iris-japonica/entry-11134351305.html

(なお、片岡聡さんについては、彼をサポートする方たちがHPを作っています。

http://outdoor.geocities.jp/irisjaponica2128/




 ブログから、一部を引用します。

「この資料でPLEs というのは Psychosis Like Experiences の略で、「精神病様症状」と邦訳されている。「精神病の症状」つまりは、明らかな幻聴や被害妄想ではなくて、直訳すれば「精神病のような体験」に過ぎないことに注意しなければならない。しかもここに列挙された4つの精神病様症状は、自閉症スペクトラム障害でも頻繁に見られ、なんら「統合失調症等」の発症前に特異的な症状ではない。」




   その生徒、本当に精神疾患ですか?

 ご存知のとおり、現在、厚生労働省により、子どもに対する精神疾患の「早期発見」「早期介入」が検討されています。すでに三重や長崎などの学校をモデル校に、いくつかの「実験」が行われ、いずれはそうした取り組みは全国に波及します。

 しかし、東京都立松沢病院の岡崎祐士院長を座長とするこの研究には、大きな問題があるのをご存知ですか。



 精神病様症状(PLEs

①超能力などによって、自分の心の中をだれかに読み取られたことがある。

②テレビやラジオから、あなただけにメッセージや暗号が送られてきたことがある。

③誰かに後をつけられたり、こっそり話を聞かれたりされていると感じたことがある。

④他の人には聞こえない「声」を聞いたことがある。



 この中のひとつでも当てはまれば、その子どもは「PLEs群」として選別されます。PLEs群は、のちに統合失調症等を発症する確率が高くなるから、精神科医、看護師、心理士などが「早期支援チーム」を組み、いち早くアプローチするというわけです。

 この研究はオーストラリアの研究を基礎にしています。

しかし、その本家本元のオーストラリアでさえ、現在「早期介入」に関しては、誤診の問題や、レッテル貼りという倫理的な側面から、精神科医の約60%が反対し、大きな社会問題になっているのです。

事実① 早期介入の有効性を示す科学的根拠は乏しく、長期的効果にも疑問がある。

事実② PLEs群の子どもの75%は、15年後いかなる精神疾患も発症していない。

事実③ 将来の精神疾患が予見できる正確な診断ツールは存在しない。

事実④ オーストラリアでは、抗精神病薬を使った子供や若者に対する早期介入に対し、多くの有識者、専門家らから倫理的な問題を指摘され、ウルトラ・ハイ・リスク群(高危険群)を対象とした薬物治療の臨床試験が中止された。



 それをなぜ、いま、この日本で行う必要があるのでしょうか?

 しかも、現在の精神医療は薬物療法が主体です。そして、PLEs群としてピックアップされ、ウルトラ・ハイ・リスク群とされた子どもたちには、日本においては必ず、向精神薬が投与されます。向精神薬は子どもを対象に治験を行っていません。そうした安全面でかなりの問題を孕む向精神薬が投与される精神医療に、子どもたちを手渡していいのでしょうか。

若者を過剰な薬物治療のリスクにさらすことになると、その点も海外では大きな問題となっています。

 幻聴や超能力など、想像力豊かな子どもだったら、ごく普通に体験することです。他の病気によってそうした症状が現れることも大いにあります。

 しかし、この「早期介入」ではそうした「鑑別診断」をまったく考慮していません。

 現在、先生向けハンドブック『心の病気ハンドブック』等も作られ、「危険因子」を持つ子どものスクリーニング手段が伝授されています。

 スクールカウンセラーはもちろん、養護教諭、はては子どもに対してまで精神疾患教育が行われ、「お友だちに当てはまる人がいたら、親や先生に相談しましょう」と呼び掛けています。



「こじれる前に、専門家に相談させましょう」――こんな言葉に惑わされないでください。

 早期介入が実施されるということは、結局、子どもたちは先生によってスクリーニングされ、友だち同士でさえスクリーニングしあい、告げられ、病人へと導かされていきます。

現場におられる先生方には、ぜひともそうした「現実」を真正面からとらえていただき、世界的に見ても批判の多い若者への精神科「早期介入」について疑問の声を一緒に挙げていただきたく存じます。



 

一連の早期介入教育の洗脳を解くには、繰り返し訴え続けていかなければならないと感じています。




 このブログ開設以来、多くの方から精神医療の被害を教えていただき、すでに被害に会われてしまった方々に対していかなる力も持たない自身の非力を省みて、せめて今、自分にできること、それを精一杯やっていこうと思っています。

 皆さんもどうかこの問題、一緒に考えてください。



 


   早期介入による被害報告をお願いします


 先生、スクールカウンセラーから、あるいは小児科、内科などから精神科につながれた結果の被害報告をお待ちしています。

 とくに、モデル事業の対象となった三重県、長崎県の方。お心当たりの体験談をお寄せください。もちろん、匿名、HNでも結構です。


 kakosan3@gmail.com