さくらさん(仮名)という方から、息子さんについてのメールが寄せられたので、紹介します。



離れて暮らす息子の異変

 息子さんは現在29歳。

大学を卒業し、就職をした22歳からずっと、仕事の関係上、同じ県内の、車で(高速を使って)30分ほどのところにアパートを借りて、一人暮らしをしている。

さくらさんが、ときどき帰省する息子の異変に本格的に気がついたのは、11月下旬、一カ月ほど前のことだ。

もちろん、それ以前にも、おかしいと感じる出来事はいくつかあった。

たとえば、今年のお盆休暇で帰省したとき、全身に小豆大のあずき色をした丘疹発疹が皮膚面から隆起した状態)を見つけた。びっくりしたさくらさんが皮膚科受診を勧めたところ、息子はひどく興奮し、暴言を吐いて、そのままアパートに帰ってしまったという。

イライラや興奮、暴言はそれ以前にもたびたびあり、そのたびごとに、捨て台詞を吐いてアパートに帰ってしまうことが何度もあった。

そして、今年の11月19日。帰省していた息子さんが突然、仕事を3ヶ月休職すると宣言した。よくよく話を聞いてみると、抑うつがあったため、アパート近くの医院を受診し、その担当医が休職をしたほうがいいと、すでに10月には診断書を書いていたというではないか。しかし、仕事の都合もあり、休職できずにいたのだが、医師からの再三の休職の勧めに、とうとう診断書を会社に提出したらしい。

さくらさんはそんな息子を慰めるつもりで「うつは誰にもあることだから」と何気なく言った。

ところが、息子はその言葉に突如興奮して「差別主義者」と叫び、「信用できないんなら医者に確認してみろ」と言って、会社と医院の電話番号を紙に書いて、そのままアパートに帰ってしまったという。

翌日、部屋の掃除をしていると、ゴミ箱からリスパダール6錠分の包装シートをさくらさんは発見した。ネットで「リスパダール」を検索し、統合失調症の薬であることを知る。何か重大なことが息子の身に起きているのではないか……。その思いで、さくらさんはその後、必死にネットで薬のこと、副作用のことを調べまくった。



医師との面談

と同時に、息子が通院している医師にも面談を申し入れ、11月29日に会っている。

そこで判明したのは、まず息子は5年も前の平成18年3月に、この医院をアトピー性皮膚炎治療のために受診していたということだ。医院は、内科・小児科・心療内科・皮膚科という4つの科を標榜し、一人の医師が兼任していた。

そのときに出された薬は柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう) ――炎症やかゆみに効く漢方、アレロック――抗ヒスタミン、リンデロン――副腎皮質ホルモン剤、ビタミンCなど。

その後、柴朴湯(サイボクトウ)など、緊張や不安に効果のある漢方が出されるようになっている。

さらに、平成20年ごろから抗うつ薬のルジオミールドグマチールが処方され、ほぼ2週間ごとに通院して、同薬が処方され続けていたものと思われる。

そして、平成22年1月、息子さんの全身に「とびひ」ができた。

この「とびひ」はアトピーとは関係なく、全身に広がる膿を持った皮膚炎で、医師は「貨幣状皮膚炎、膿疹」と診断。10円硬貨くらいの大きさの湿疹がいくつも現れ、強いかゆみがあるのが特徴だ。

医師は息子さんが「とびひ」で受診して以来、精神状態が悪化と判断。そこで、リフレックスデパス、抗生物質、に処方を変えた。そして、緊張が強いときに、リスパダールが処方されていたらしい(いつから処方が始まったのか不明であるが、11月22日までは処方されていた)。

その後、「とびひ」は治まったものの、精神状態は不安定となり、仕事の人間関係に疲れる。悪口を言われたり、無視されたりする……と訴えている。

また、「とびひ」で受診の際行った血液検査では、中性脂肪大、脂肪肝との結果が出た。

そう言えば、細めの体型だったのが、今年半ばから太りはじめ、MサイズからLサイズになった。また、大量に水やお茶、コーヒーを飲むようになったのは、薬の副作用だろうか。



さくらさんによると、医師は、「これまで抗うつ薬を増やしても効果がなかった」と言ったという。不安がある、眠れない、気力がない、そして、皮膚のかゆみ、イライラ。さらに言語にまとまりがなく、「統合失調症の疑いで大学病院の精神科に紹介状を書いた」とのこと。

また、上述の薬については、長年にわたるので、一部しかすぐにはわからないが、多剤処方はしていない。単剤処方であるという。



さくらさんからのメール。

「本人も、アトピーがストレスで増大すると思い、就活時のストレス以来アトピーが悪化したと医師に相談したらしいです。ネットでの情報をいつもたくさん集めていて、今の社会と「うつ」、アトピーが結びついたと思います。

この医師は、親の面談に対して、「これはどこかに提出するのか」と何度も聞きました。

私は「いえ、私の頭の中を整理するためにメモしています」と言いました。

医師は「単剤でいろいろ変えて処方している。良くなる時もあるが、結局だめだった。気分に波があり、薬の効果はあるにはあるが、根本は環境を変えること、薬は補助です。しかし、色々やったが限界です。アトピーが悪化している。反応が悪い。紅皮症に近い。体全体に皮疹が出ていると言いました。

そして、大学病院の精神科への紹介状に、メンタル不安、抗うつ剤に反応なし。アトピーも悪化と書いてありました。さらに、「表情が暗い。言動にまとまりがない。失感情症。不安がある。抗うつ剤を増やしてもだめだった」と。

アトピーが初診の目的ですから、大学病院の皮膚科に紹介すべきではとの私の問いに、「まず精神科。その返事を待って皮膚科です。2度紹介状を書かねばならないから」とのこと。

もうお手上げなので、大学病院に統合失調症として、丸投げしたいのでしょうか。おまけに、親もうるさく処方薬について聞いてくるし……。」



皮膚疾患、肝臓、精神症状――どれも薬の副作用?

これ以降、さくらさんはさらに薬や副作用について、あるいは精神医療そのものについて、毎日必死に、ネットを通して調べ始めた。その結果、目に見える皮膚疾患に始まり、肝障害、息子さんのおかしな言動など、薬の副作用に思い当たる節があまりに多いことに驚かされた。

何といっても、精神的な不安定さである。激しい怒り、攻撃性。そして被害妄想的な発言等々。

一昨年の正月は、何に腹を立てたのか、突然激怒して勝手にアパートに帰ってしまった。また、2月14日のバレンタインデーは、いつもならチョコレートを喜んで受け取るのに、それを無視して、またしても家族をののしりアパートに帰っていった。

そして、母親の料理や手作り菓子など、たちの悪いいやがらせとしてゴミ処理する。「持ってくるな」と怒鳴り散らす。あるいは、「会社の人たちが悪口をいっている。無視する」、「祖母の死に仲間からの見舞いがない、他の人の場合はあるのに」、「両親は厳しく、姉にたいしては劣等感がある」……。暴力やあばれることはなかったが、暴言がひどかった。

さらに、平成22年11月20日から12月8日まで、原因不明の高熱を発し、肺炎を起こした。

その他、脱毛、目のかすみ、口の渇き、便秘、不安、焦燥……。一時は猛烈な食欲。多飲。不眠。多眠……。




さくらさんが調べた医薬品医療機器総合機構のホームページ(添付文書情報メニュー)によると、まずルジオミールの重篤副作用として当てはまるのは、薬物性肝障害悪性症候群スティーブンス・ジョンソン症候群高熱(38℃以上)を伴って、発疹・発赤、やけどのような水ぶくれなどの激しい症状が、比較的短期間に全身の皮膚、口、目の粘膜にあらわれる病態)である。

また、リスパダール、デパスなどにも、悪性症候群薬剤性肝障害精神障害(不眠、不安、激越、うつ、被害妄想など)皮膚症状(発疹)、過敏症(紅斑)などが明記されていた。



薬の危険性をさくらさんが説くと、息子さんは、「医師や薬より、親の考えの方が正しいなんてわけはない」と反論したという。しかし、さくらさんは諦めず、さらにこう言って息子さんを説得した。

「医師にとって、あなたは何百人もいる患者の中の一人、他人にすぎない。でも、私はあなたの親なのだ」と。


しかし、こうした事実を知ったさくらさん自身、たまらなく不安になった。

調べれば調べるほど、精神医療への不信感は膨らんでいき、厚労省が一応行っている副作用報告に長いメールを送ったりもした。そして、眠れない日々が何日も続いた。



それにしても、もともとアトピーを持っているアレルギー体質の患者に、医師はそうしたことを考慮した気配もなく、皮膚への副作用のある精神薬を長期に投与している。そして、皮膚症状の悪化はアトピーの悪化とみなして、薬の副作用を疑ってもみない。紹介状の一件からみても、医師は精神科は精神科、皮膚科は皮膚科という考え方しか持っていないようである。                    

                     (2へつづく)