笠陽一郎医師のセカンドオピニオンからこちらのブログにお便りをいただいた方のケースを紹介します。

 メールをくださったのは、奥様(K子さん)がかれこれ18年も、精神科で治療を続けられているご主人のKさんです。




 K子さんは、18年で5カ所の病院に通院・入院を続けてきましたが、一向に改善の兆しを見せず、ついに今年の8月、笠先生のセカンドオピニオンを受ける決心をしたそうです。

5カ所のうち、最後の2カ所では本当にたいへんな思いをされました。

症状がよくなるどころか、さらに悪化し、悪化すればそれに沿って、薬の種類と量が増え、さらに状態は悪くなる――精神医療のまさに悪典型そのままの経過をたどることになりました。

転院のたびごとに、K子さん自身の家族歴、成育歴、過去の辛い体験など主治医に話したそうですが、結局それが治療に反映されることはなく、たんに症状を抑えるための投薬が繰り返されるだけ。




うつ病の診断から始まった

 K子さんの18年前からの経過をざっと記します。

①18年前、高熱を出し、突然意識不明の状態で倒れることが頻繁に起きるようになった。3日も意識不明の状態が続いたため、地元の大学病院に1ヵ月半入院。

 心因反応ということで、退院後も半年ほど通院を続け、経過がよかったので、治療を終了した。

(じつは、この出来事の1年ほど前、K子さんは1人目の子供を妊娠していたが、実父が台風に備えて屋根の修理をしているときに、強風にあおられ落下し、亡くなっている。)



②それから2年半ほど経過したとき、K子さんの母親が白血病となり、K子さんも体調を崩して同じ病院に入院。メニエール病との診断。

 この時、K子さんは二人目の子を妊娠中。出産後10日目で母親が他界し、それをきっかけに、精神的に不安定になり、同病院の精神科に通院するようになる。

 うつ病との診断で、トリプタノール、アナフラニール、ソラナックス、レンドルミンが処方される。

③3ヵ月ほどで、神経内科クリニックに転院。

診断は同じくうつ病、処方も前病院と同じような内容で薬物治療が続けられた。

 その後、摂食障害(拒食)、意識不明で突然倒れる状態も繰り返していたので、長期的な入退院を繰り返した。

入院中、死ぬためなのか、病院を抜け出し、県外にまで飛び出すこともあり、病院側が入院を拒否。




躁とうつの繰り返し(薬剤性)

④今から12年前に、地元のI病院に転院した。

 最初はやはりうつ病との診断で、トリプタノール、ドグマチール、眠剤などの処方だったが、症状が改善されないため、パキシル、ルジオミール、ドグマチール、セルシン、ワイパックス、リスパダールなど多くの薬が処方されるようになる。

 病名も、うつ病→境界性人格障害→躁うつ病……へと変わっていく。

 そして処方は以下のとおり。




躁転時処方

・ロドピン(ゾテピン)抗精神病薬
・リスパダール増量(リスペリドン)抗精神病薬
・ヒルナミン(レボメプロマジン)抗精神病薬、非常に強力な鎮静作用
・ベゲタミンT
塩酸クロルプロマジン配合剤鎮静剤
・リーマス(リチウム)200mg×T 気分安定薬
・ワイパックス(ロラゼパム)ベンゾ系催眠鎮静剤抗不安薬
・ロヒプノール(フルニトラゼパム)2mg×T ベンゾ系睡眠導入剤
・アキネトン(ビプリデン)抗パ剤

うつ時処方
・ルジオミールorパキシル(マプロチリン・パロキセチン)四環系抗うつ薬・SSRI
・ドグマチール(スルピリド)定型抗精神病薬
・セルシン(ジアゼパム)ベンゾ系精神安定剤
・アキネトン
・ロヒプノール



当然のことながら、躁転時の処方で過沈静となり、うつ状態になる。

そして、うつ状態になったら、今度は「気分を上げなくてはいけない」と医師に言われてルジオミールが処方される。そして、またしてもすぐに躁転。

薬によって上げたり下げたりを繰り返し、結局、3~4ヶ月ペースで入退院の連続。



Kさんからのメールにはこうある。

「このときの本人の様子は、顔に表情が無い感じで(止まって一点を見つめるような状態)、目が上転・口の不随意運動・手のふるえがあり、いかにも精神病患者という感じでした。主治医に薬の変更などお願いすると、全く聞き入れず挙句の果てには悪者扱い。

そんなに意地とプライドがあるくせに、診察に同席するとこんな感じでした。

医師~「調子はどうですか?」
 家内~「気分的に落ち込んでいます」
 医師~「そう。それじゃあ薬は何にする?」
 家内~「わかりません」
 医師~「気分が落ちているから、上げなくてはいけないから、ルジオミールを出しておくね」
 終わり



「この病院で家内はとどめを刺されました」とKさんは書いている。

 病名も最終的には、統合失調症となった。

 体重も48㎏だったのが、105㎏に激増していた。



「こんな調子でしたので私もさすがにキレました。「妻は、お前のモルモットではない!!!」と目一杯文句を言って病院を去りました。」




転院しても……

⑤そして、今から4年前、N病院へ転院。

主治医には、前病院で薬の変更をまったく聞き入れてもらえなかったことを告げ、処方についてはスタビライザー(リーマス、デパケンR)を主体にしてほしい旨伝えたところ、処方は、

・リーマス200mg×T
・デパケンR200mg×T
・サイレース2mg×T
ワイパックス1mg(頓用)



となったが、1ヶ月間隔で、軽躁と軽うつの繰り返し

そしてイライラすることが顕著にあり、そのことを主治医に話すが、まるで聞く耳持たずだったという。

医師の言うことといえば「旦那が悪い」「義理母が悪い」など低レベルの対応のみ。

1年のうちに2度躁転し、3ヶ月ほどの入院を繰り返したため――

「1年半前、家内もこれ以上再発を繰り返したくないという思いが強く、たまたま病院に置いてあった「リスパダールコンスタ」の冊子を主治医に見せたところ、

「おおっ!いいねぇ~」と言って注射することになる。(何がいいねぇ~なのか意味不明?)」




 こうして躁転の兆候が見られると、処方にコントミン、リスパダールコンスタが加わり、リスパダールをやめてほしいとK子さんがお願すると、代わりにインヴェガが処方された。

 そして処方についてお願いをすると、主治医は「私の治療方針にはしたがってもらう」との返事。

 そうしたなか、K子さんは今年の6月にまたしても躁転し、入院、1ヵ月で軽快し退院するも、7月14日、再度入院となった。



本人も度重なる再発と、躁転した時の社会的ダメージ、そして回復した後に、なぜあんなことをしたのだろう悔やんでしまう。悪循環です。」




セカンドオピニオン

 このとき、Kさんはセカンドオピニオンを決意したという。

そして、笠先生にメールをして、電話でいろいろアドバイスをうけ、8月8日、K子さんを退院させ、笠先生より紹介された医師の診察を受けている。

じつは、Kさんは、笠先生のセカンドオピニオンについては以前よりHPは見ていたが、K子さんの病状が悪化する中、メールをする気力さえなくしていたという。



8月15日、初診時の様子。

家内の幼少期からの発達障害、結婚後の衝撃的出来事のトラウマ、フラッシュバックなどを見抜いてくださり、薬も大幅に変更 そして減薬の方向でいくことになりました。」

K子さんの成育歴、例えば、中学生のときに起きたある出来事や、K子さんが20歳くらいのときに2度自宅に泥棒が入ったこと、2度の妊娠中に父母が突然亡くなっていることが、後々のトラウマやフラッシュバックにつながっていることなど、丁寧な説明があったそうだ。



 そして、処方は以下の通りとなった。

・リーマス200mg×3錠  1週間ごとに200mg減らしていき、完全に止める予定

・デパケンR200mg×3錠 寝る前600mg

・レキシン(カルバマゼピン)100mg×1/2錠 寝る前50mg 

・ツムラ小建中湯エキス顆粒 朝夕2包 ツムラ漢方99

・ツムラ十全大補湯エキス顆粒 朝夕2包 ツムラ漢方48

・サイレース2mg×2錠 減らす予定

・屋久島産の春ウコン 1日2回(先生より売っている場所まで教えていただきました)



「まだ今から治療がスタートしたばかりですが、笠先生とお話できたこと、そして良い先生にめぐり合わせていただいたことで希望の光が見えたようで とても嬉しい気持ちになっています。(家内も良かったと言っています)




単なる薬屋?

 それにしても、このような被害報告をいくつも聞かせていただくと、どうしてこうも日本の精神医療は、どこを切っても金太郎ではないが、同じような経過をたどることになってしまうのだろう。

 薬剤性の症状を病気の悪化、あるいは新しい病気の出現?(病名変更)ととらえて薬を増加、変更し、薬によって出てきた症状をさらに薬で抑えようと躍起になり、上げたり下げたり、Kさんではないが、まさに患者はモルモットとなる。

 自分で処方している薬がどのような作用を及ぼすものか知らないのだろうか? 

 ブレーキとアクセルを同時に踏めばどうなるか、想像できないのだろうか?

 Kさんも、

何故にここまで無知なのか!? 怒りのやりどころがないくらいです。

 セカンドにたどり着くまでの精神科医に対しては、怒りを通り越して無能というか、無知というか、呆れているの一言です。」

  そして、いくら成育歴や辛い体験など話しても、医師の反応は、「それは大変だったね~」といった程度だったという。

 それなら精神科医の仕事とは何か? 単なる薬屋さんか? いや、あのような処方しかできないのだとしたら、薬屋さんの資格さえない。


メールアドレス

kakosan3@gmail.com