8月12日看護記録

5時 「帰るから、開けて」

8時 「ちょっとでいいから出してくれない?」

 離院要求あり。ドアの前に立ったりはするが、ドアをガチャガチャさせたり、出ようとしたりすることはない。

12時40分 休憩室のイスに座って、ウトウトしている。体はぐったりしており、鼻汁流涎が見られる。ふらつき強く、歩行おぼつかない。

17時20分 ふらつきながら、自分でトイレに行っている。介助しようとすると、いちいちうるせえんだよーと怒鳴る。

19時 食事促すも、眠気強く摂取できず。


8月13日看護記録

深夜 「ここはどこですか? みんなは? オムツしてたんですか?」

 「昨日、おやじとここに来たの? ちょっとわからないんですけど」

 入院時から最近までの記憶がない様子。徐々に思い出すからと話すと納得する。

12時「ちょっと今から家に帰ってくる。箸が折れたので、新しいのを持ってきます」

  離院要求あり。日付を問うと、正答できず。

18時50分 テーブルの上を何か物をつかもうとしたり、空をつかむ動作。

19時 「鍵かして。外に出してほしい」 呂律まわらず、はっきりとせず。

 床にかがみこんで、何か物を必死につかもうとしている。

 発汗著明にあり、床に流れ落ちている。

 悪性症候群の恐れあり

20時 発汗著明、半開眼したまま入眠している

21時 刺激に対して反応するが弱い。


同日の医師の記録

離院要求などの言動は変わらない。記憶はまだ。

11日よりのLodopin300㎎が身体にきすぎているため、12日より、150㎎に減量した。


8月14日看護記録

9時 顔面より大粒の汗、落ちている。全身も発汗著明。流涎めだつ。呂律回らぬ様子。聞き取れず。前傾姿勢で、立位不安定。

16時 Nsコールあり、行くと、本人キョトンとしている。手先、つまむしぐさあり。

 せん妄か? 様子見る。

17時30分 夕食、自室に運ぶと箸を一度もつが、集中できす、結局摂取できず。夕薬、手渡されればスムースに内服する。

 仰臥促すも、タッチガードを気にしたり、ベッドの下をのぞき込んだり、何もない床で物をとる動作をしきりにする。せん妄か?

19日30分 窓を指さし、何か話したり、空をつかむ動作みられる。


8月15日医師の記録

朝から発汗、流涎著明。歩行もおぼつかない。物をつまむような動作あり。

Lodopin off

抗パ剤 追加 Bicamol6㎎

 

 悪性症候群のため、ロドピン(非定型抗精神病薬)が中止となり(他の薬はそのまま)、副作用止めの抗パ剤ビカモールが処方された。


8月16日看護記録

11時 訪室すると、「なんでこんなことをするんだ」と暴言を吐く。文句を言いながら、オムツを外しだす。

15時 尿失禁あり。

17時30分 「犬がいる、犬がいる」布団を指さして言っている。

18時30分 自床でブツブツ言っているが、何を言っているか聞き取れず。

20時 入口ドアの所で、四つん這いになり、しきりに床をさわっている。


8月17日看護記録

深夜 休憩室や自室、廊下をウロウロ。流涎あり、発汗著明。

 病棟出入口ドアをガチャガチャさせたり、家政係の人が出る時、ドアのそばへ行こうとするなど離院行動見られるが、無理やり出ようとはしない。

12時 昼食時、休憩室にて、ようやく食べ始めるが、食事中、食べ物を故意ではないが、他患の顔にぶつけてしまう。「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ」

 他患に暴力をふるわれ、病棟の中をNsに手を引かれながらウロウロし、どこか逃げ場はないかとドアをガチャガチャさせている。

 これ以上のトラブル、危険防止のため、Ns3人、Dr1人で、610号室(注・ECTを行う部屋)へ誘導。タッチガード装着しようとするが抵抗強いため、ドアの施錠のみ行う。

 窓の外を眺めたり、部屋の中をウロウロしたりしているが、610号室へ移床し安心した様子。

18時 ベッドサイドに座り込み、何かをつかもうと手を動かしたり、ドアを手で叩くことあり。叫ぶことはない。

22時 ECT用のベッドで、入眠している。

 610号室(ECT室)は施錠され、つまり、今度はここが隔離室の役目を果たすことになった。

                                 (つづく)