前回、イレウスを発症した方の受け入れ拒否問題を取り上げましたが、今回、アモキサン(三環系抗うつ薬)による副作用報告として便秘と排尿困難の体験談が寄せられました。
以前にも紹介したWさん(男性・30歳)からです。
Wさんの場合、重大なことに至らず、薬の中止によって症状は改善していきましたが、単なる便秘ではなく、薬物の副作用による便秘、排尿困難とはこのようなものなのかと、あらためて知らされた感じです。
医師もアモキサンの副作用と認めていたそうです。また、Wさんが参加したうつ病患者の集いでも、アモキサンを飲んだ人5人中3人くらいが便秘の話をしていた記憶があるそうですから、多くの人が体験する副作用のようです。
アモキサンの添付文書より
重大な副作用 4. 麻痺性イレウス(頻度不明) 腸管麻痺(食欲不振、悪心、嘔吐、著しい便秘、腹部の膨満あるいは弛緩及び腸内容物のうっ滞等の症状)を来し、麻痺性イレウスに移行することがあるので、腸管麻痺があらわれた場合には投与を中止すること。なお、この悪心、嘔吐は、本剤の制吐作用により不顕性化することもあるので注意すること。
その他の副作用 6. 抗コリン作用注3)(0.1~5%未満) 便秘、排尿困難、視調節障害 |
重篤副作用疾患別対応マニュアルからの引用
麻痺性イレウスは、腸管の動きが鈍くなり、排便が困難になることにより起こる病気であり、医薬品により引き起こされる場合もあります。
主な症状として、「お腹がはる」「著しい便秘」「腹痛」「吐き気」「おう吐」があり、排便、排ガスの停止、腸内のガスの増加などが認められますが、腹部の圧痛や打痛はなく、また発熱は認められないことが多いとされています。麻痺性イレウスは、徐々に症状が現れるため、上記のような病状に気づきにくく、注意が必要です。
麻痺性イレウスが生じた場合、医師の指示に従った服薬の中止など、速やかに措置をとれば問題はありませんが、気づかずに長期使用すると重くなる場合があります。
(以下メールを紹介します)
便秘
もともと便秘がちだったので、しばらく便通がない日が続いてもあまり気にしなかったが、アモキサンを飲み始めてから便意を感じること自体が極端に減りました。
ふと最後にトイレで大をしたのはいつだったか?と考えた時に、2週間近く前だったことに気づき驚いたのが便秘の最初の自覚です。その間、
2週間近く便意がなく、ようやくもよおしても、
それ以降も、4、5日おきに若干の便意を感じるが、ほとんど便が出ない。幸か不幸か、お腹が張る等その他の症状は全くなく、しんどくはなかったが、自分の体を薄気味悪く感じた。
あまりにこの状態が続くので、肛門科で診察を受けたが、便が内部で溜まっている様子はないとのこと。当時はきちんと食事がとれていたし、むしろ太っていた頃。自分が食べたものはどこへ行ったのか?と気持ち悪かった。
苦しくないが、あまりに全然出ない。
うつの主治医に説明したら、
便秘用に酸化マグミッドという下剤を処方される。
酸化マグミッド服用後、便意はあるが全部水の状態で出る。便秘の上の部分が薬で溶かされて便の隙間から水として出ているような感じがして気持ち悪い。
掲示板上では酸化マグミッドの大量服薬や市販の強烈な下剤の話等
3ヶ月くらいたったあたりと思うが、
さらに時間の経過(半年くらい?)でさらに少しだけ改善。とは言え、普段の状態には程遠く、
それ以降は、
驚いたのは、
急速に便通が改善していき、1,2週間は信じられないほど快便の日々。いわゆる健康なバナナ型の便が1日に2、3回出る日々。どこにこれだけの便があったのかと思ったくらい。
よほどアモキサンの便秘は強力だったのだと実感した。現在は、
排尿困難
自覚したのは便秘より少したってからだったと思う。
アモキサンを調べたら「抗コリン作用で排尿困難が~」とあったのでこれだなと思った。
状態としては、尿意を感じてトイレに行ってもすぐに出せない。下腹部に結構強めの力を入れた状態のまま、2、3分待ってようやくちょろちょろ出るという状態。そんな状態なので、しんどい時はトイレが面倒くさかった。
また尿が出ても勢いが全然ない。そのため、家庭の洋式便所で立ったまま排尿した場合、便器の中に尿が入らず、床を汚す。また、あまりに弱い時はそもそもきちんと飛ばずズボンや下着にかなり付着した。だから、座ったまま排尿せざるを得なかった。
特にひどかった時期は、勢いが弱いので全部の尿を出しきれない。一部残ることが多かった。どれだけ全部出そうとしてもダメで、トイレが終わってしばらくしているうちに、下着内で勝手に漏れることもあった。
今思えば、お年寄りの尿漏れはこれのひどい状態かなと思う。
また、職場ではトイレで尿を出そうとしている間に、
こちらもアモンキサンの中止とともに改善の兆し。特に、
重篤副作用疾患別対応マニュアルには、次のような症例が掲載されています。
【症例4】40 歳代、男性
既往症:統合失調症(向精神薬長期大量服用中)
統合失調症に対し、ハロペリドール、レボメプロマジン、カルバマゼピン、クロナゼパム、ビペリデン、ゾテピン、アメジニウム、リマプロストアルファデクス、センナ、センノシドを使用していた。前夜より腹痛を訴えていたが、腹部膨満・腹部全体の鼓音・腸蠕動音の低下を認め、ショック状態となった。レントゲンでは、左側結腸に多量の便塊・上行-下行結腸の著しい拡張を認めた(中毒性巨大結腸症:toxic megacolon)。保存的治療に反応せず、開腹下にガスと便を吸引し、横行結腸人工肛門作成。しかしその後全身状態改善せず、翌日死亡。(渡辺逸平ら:ICU と CCU 21: 1059-1065, 1997)
「麻痺性イレウスをおこしうる医薬品を2 種以上使用すると、相加的に麻痺性イレウスをおこしうる」とマニュアルには書いてあります。
ところが、この薬の量はどうでしょう。
統合失調症のための服薬で、イレウスとなって、開腹手術を受け、ガスと便を吸引し、人工肛門をつけられて、翌日死亡の原因は、結局、上記のような多剤大量の薬を服用しつづけた結果です。それを処方したのは、いったい誰なのか?
そして、命に変えてもこれほどの薬を飲み続けねばならぬほど、統合失調症とは恐ろしい病気なのでしょうか?