読者の方から届けられたメールを紹介します。
 9つ離れた妹さんについて心配されているお姉さん(Mさん・30代前半)から、遅発性ジストニアについての問い合わせです。

 2年ほど前、Mさんの妹さんはパニックを伴ううつ傾向となり、大きな単科の精神科を受診した。そこでの処方は、抗うつ剤、抗不安薬、睡眠導入剤。
Mさんは認知症のグループホームに勤めていることもあり、精神薬に詳しいため、その薬を見て、初診にしては多いのでは? との疑問を抱き、別の心療内科を受診するよう妹さんにアドバイス。この医師はMさんも信頼できる人で、そこでの処方は、ごく軽い安定剤と漢方の抑肝散、レンドルミン、デジレルとなった。
 その後、医師との相談で、処方は、ワイパックス(ロラゼパム)、就寝時のマイスリー(ゾルビデム)とデジレル(トラゾドン塩酸塩)、そしてパキシル(パロキセチン)10㎎。
 その後、妹さんの症状は少しずつ回復していった。以前パニックの際は、泣き叫ぶ、体を出血するほどかきむしる。体調を崩して外に出なくなる、気分に波があるといった症状だったが、これらが少し落ち着き、経過観察となった。
しかし、一年ほどたつと、再び衝動的思考、うつ傾向が出現し、パキシルを増量することに。それが去年の夏である。
そして、パキシルを増量してから1ヵ月ほどたった頃のこと。
アカシジアのような症状(体のさまざまな部位が無意識に動く)が出て、Mさんはアカシジア?と疑問を抱いた。
症状は次第にひどくなり、ついに大きな発作を起こして夜間救急病院に搬送された。
医師からはジストニアの疑いがあると言われ、Mさんも、これはアカシジアではなくジストニアだったと納得。大きな脳外科を緊急受診したところ、ジストニアとミオクローヌス発作の混合型との所見が出た。ついでメージュ症候群の所見もみられる。
しかし、脳外科では、医師たちから、なにが原因か解明できないようなことを言われ、ある女医からは「現在の精神薬はこの症状と関係がないから、薬をストップしなくてもよい」と言われたそうだ。
結局、脳外科で、デパケンR(バルプロ酸ナトリウム徐放剤)(200㎎)とアキネトンが頓服で処方となった(アキネトンはほとんど飲んでいないとのこと)。
パキシルを処方した心療内科の医師は、ジストニアの原因をパキシルとは断定できないが、事例としてないわけではないと、副作用を認めている。しかし、数種類の薬を長期服薬後の症状なので、原因薬剤の特定は難しいとの意見だった。
以後、パキシルを始め、他の薬も中止の方向に向かい、現在、妹さんはパキシルは完全に止めて、マイスリーのみの服用でなんとか落ち着いているが、ジストニアが残ってしまった。局部の軽い痙攣。また、倦怠感、ときどき胸痛、動悸がある。


「私が気になるのは、この症状が治まり、完治するようになるのかと言うことなのです。妹も以前は、私と同業者でして、仕事をとても誇りに思い、毎日お年寄りに関わらせていただいていたのに、この病になったばかりに、仕事を去るまでになってしまいました。将来は また福祉現場に戻りたいと話していますので、なんとかしてやりたいと思っていた時期にかこさんのブログを知り、しばらく読ませていただいていました。このようなケースで、完治し、社会復帰ができるのか、お考えを聞かせていただけると幸いです。」


 向精神薬を服用し、Mさんの妹さんのように一応は症状が治まっても(あるいはまったく変化がないどころかさらに悪化した人も大勢いるが)、結局、薬の副作用によって社会復帰が阻まれる。
たとえ最初の症状は抑えられたとしても、「原疾患は軽減しました、しかし、副作用で社会復帰できません」と、これが現在の精神医療で行われている、ひとつの「治療結果」なのだ。
 まだMさんの妹さんが救われるのは、医師が副作用であることを認め、パキシルなど減薬、断薬に努めてくれたことだろう。

 薬剤性のジストニアは遅発性ジストニアと呼ばれ、主として向精神病薬の長期投与中(数か月~数年)によって起こるとされている。しかし、ドーパミン遮断作用をもつ抗うつ薬、抗めまい薬、制吐薬、胃腸薬、カルシウム拮抗薬によっても起こり、主な症状としては、頸部・躯幹の不規則なつっぱり・ねじれ、斜頸、後頸、後弓反張など。原因はドーパミン、アセチルコリン、ノルアドレナリンなど多様な神経伝達物質の異常と考えられている。
 また、遅発性ジスキネジアは、口周囲の不随運動(口をすぼめる、舌のもつれなど)、頭部、四肢、体幹の筋肉の異常行動を発現し、アカシジアは、一般的に静坐不能のことを指す。

 以下はジストニアではないが、統合失調症の薬を1ヵ月飲んだ5歳の女の子が、服用中止後2日目で発症した遅発性ジスキネジアの映像である。
 わずか5歳で・・・あまりに悲惨な副作用と言わざるを得ない。



 また、妹さんの所見の一つになったメージュ症候群は、眼瞼痙攣のことで、両眼の瞼が自分の意思とは関係なくこわばって開眼が維持できない状態のこと。
 ミオクローヌスは、自分の意志とは無関係な運動を起こす不随意運動の一つで、ごく簡単に表現すれば、全身のあちこちの筋肉が小刻みにすばやくピクピクする現象のことをいう。
 ちなみに、妹さんに処方されていたデジレル、パキシルには、副作用のセロトニン症候群の一つとして、ミオクロヌスが明記されている。

 副作用であるこれらの症状は、もちろん、症状の軽重にもよるが、社会復帰を困難にする。
 ジストニアについては、NPO法人ジストニア友の会があり、治療機関や治療法などある程度は紹介しているが、
http://www.geocities.jp/dystonia2005/
 薬剤性の遅発性ジストニアについては、また別の考え方もあると思う。

これまで向精神薬による副作用、ジストニアを経験された方のご意見をお待ちしています。
どのような薬剤で出現し、どれくらいの期間続き、対処法、改善法など、どのようなことでもいいですから、お知らせください。
コメントでもメール でも結構です。kakosan3@gmail.com