厚生労働省による「重篤副作用疾患別対応マニュアル」の「アカシジア」の項目が平成22年3月に改訂されている。http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm1003002.pdf


そのなかに「薬原性アカシジア評価尺度」があるので紹介する。

例えば、客観症状として、0から3段階に分けて、重度の3は以下のような状態を呈する。

患者は絶えず特徴的な不穏運動をしている。また観察期間中に歩かないでじっと立ったままや座ったままでいることができない。

また、アカシジアの包括的臨床評価は0から5段階に分けられ、

「5」重度のアカシジア

患者はほとんどいつも、あちこち歩き回りたいという強い強迫感を訴える。23 分以上座っていたり横になっていることができない。強烈な苦痛と不眠を伴う持続的な不穏状態。


それにしても、この苦しみは何ゆえのものなのか?

そしてまた、精神疾患患者への差別偏見のひとつの原因に、この目に見える症状、アカシジアがあることは間違いない。精神疾患のための症状ではなく、その「治療」の結果として生じた症状によって引き起こされる偏見である。


いま現在、アカシジアに苦しんでいる人とちょっと電話で話したのだが、こんなことを言っていた。常にイライラ、混雑するレジに並んでいると、前にいる人を蹴飛ばしたくなってしまった。そして、あまりのイライラ感焦燥感、苦しさ不感にこの寒空の中、何十キロも自転車を乗り回していたと。

「一番怖いのは、外に出て、電車にのるためプラットホームにいるときです。発作的に飛び込んでしまうのではないかと……」

おそらく、これで自殺している人間は相当数いるはずである。しかも、本人さえ、その理由がわからないまま。自分でわからないのだから、人にわかるはずがない。

「これが、自殺、猟奇的犯罪の真相かもしれません。この衝動が内に向けば自殺、外に向けば殺人。その差は紙一重かも知れません」


これはおそらく体験した人にしかわからない苦しさだろうと思う。死んだほうがまし、そんな苦しみを一刻一刻全身で受け止めながら生き続けていくというのは……まさに筆舌に尽くしがたい。


以前、このブログでも取り上げたことがあるが、http://ameblo.jp/momo-kako/entry-10654035531.html (向精神薬と攻撃性)、海外の例として、家族を殺害後自殺、あるいは残忍な方法で妻を殺害といったケースの裁判では、いずれも「薬剤性アカシジア」がその原因と判断されているのである。


アクチベーション・シンドロームの中に薬原性アカシジアも含まれているが、日本の裁判において「アカシジア」がその原因と判断される日は来るのだろうか。


アカシジアの出現率について、同マニュアルでは、定型抗精神病薬では平均20~40%。非定型抗精神病薬であるリスペリドンが22.9%、ペロスピロンが40%、クエチアピンが5.2%、オランザピンが17.6%としているが、アカシジアを引き起こす可能性のある薬剤は、それだけでなく抗うつ薬(三環系、四環系、SSRI、SNRI、その他)、抗けいれん薬、気分安定薬、抗不安薬、抗認知症約、消化性潰瘍用薬、抗アレルギー薬、血圧降下薬、抗ガン剤など、実に多岐にわたっている。


現在も自殺予防のためのさまざまなキャンペーンが行われている。精神科への早期受診を促し、その精神科で自殺、殺人への衝動を生じさせる薬を処方されて、結局自殺。まさに漫画のような悲劇が現に起こっているのである。


アカシジアの他、向精神薬の重篤副作用にはセロトニン症候群や悪性症候群など、そのまま生命にかかわる副作用も多数ある。そしてそれらは、街角の、医療設備の整わないクリニックで処方されているのである。重篤副作用に対処できない場所で、重篤副作用を起こしかねない薬が処方されている。はたして、そこに問題はないのだろうか?


アカシジアなど副作用について、あるいは薬による被害の報告をお待ちしています。

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