もうすでに多くの人がとり上げていることだろうが、松平健さんの奥様の自殺についてである。自殺と聞いて、「精神科医?」「薬?」と、これはもう有名人の自殺の話を聞くたびに、自動的に連想してしまう癖がついてしまっているのだが、やっぱりそうだった。

松平さんが出したコメントには、


パニック障害・不眠症・うつ状態を引き起こし、この三年はいろいろな病院にもかかりましたが、結局、心通じ合う医師とはめぐり合うことができませんでした。」

 という言葉がある。



しかし、大方のマスコミの報道の仕方は、相も変わらずだ。心の病気だったんですね、それも(3つも病名があるから)かなり重い症状だったようです、子育て、介護に頑張りすぎたのでしょう、最愛のお母さまを亡くされて、ついに耐えきれなくなって……。

情緒的な報道がほどんどである。

なにもわかっていないのだ。

精神科にかかりながら自殺したのである。つまり、3年間も、複数の精神科医にかかりながら、誰一人、彼女を治すことができなかった、ところではなく、死なせてしまったということだ。



なぜ、そこを問題にしないのだろう。知識人面して高みから言いたいことをのたまうコメンテーターなる人物の誰か一人でも、そこを突く人はいないのだろうか(私はテレビを全部見たわけではないので知らないが、2,3の番組ではそういう触れ方をした人はいなかった)。

自殺をしたのは心の病を抱えていたため、だから、仕方のないこと、そういう状況、性格を抱えてしまった人の運命みたいなもの。そして、残された者たちは、そうとはわかっていながらも、やはり、自殺を防ぐことができなかった自分自身を責める気持ちになるのも当然……。



私のところに寄せられる報告には、「死にたい」「死にたくなった」「実際自殺企図した」そんな言葉が必ず出てくる。薬を飲みはじめる前まで、そんなことは一度もなかった人たちがである。

松平健さんの奥さまの場合、3年間である。その間にどれほどの投薬がなされていたか。薬を飲むことで、3年間、状態はどんどん悪くなっていった。もともとの病気が悪化したのではない。薬によって悪くなっていったのである。それはもう、いくつもの被害報告が裏付けている事実である。


私は松平さんが出したコメントの、上の個所をテレビで聞いたとき、彼の中に生まれた精神医療への不信感、怒りを感じとった。

彼ら夫婦のような恵まれた環境にいる人でさえ、3年間、さまざまな精神科医にかかりながら、心触れ合う医師に一人もめぐり合うことができなかったのである。たまたまヤブ医者に当たったのではない。彼ら夫婦の立場なら、いくらでもいい医者と言われる医師を紹介される機会はあっただろう。つまり、この日本に、信頼するに足る精神科医はほぼいないということだ。今回のこのコメントはそれを証明してみせている。