前回の記事を読んで、ある男性(被害当事者)からメールをいただきました。

この方も精神科病院への入院経験があり、多剤大量服薬の数年間を経て、現在は減薬中。その離脱症状に苦しんでいる最中ですが、ご自分の体験を振り返っての思いがつづられていました。

いつも思うことですが、一度、精神科領域に足を踏み入れてしまうと、次から次へと止めようもなくこのような状況に陥ってしまうのかと暗澹たる思いになります。


入院だけはしないほうがいい

「前回の『精神病院入院でPTSD』を読み、私も以前精神病院に入院しているとき、看護師たちの暴行を目撃してショックを受けたことを思い出しました。それは今でもトラウマとなっています。

 入院中は薬のせいで、目の前で行われていることが、どこか映画のスクリーンの中の出来事のような感じで、ただ呆然と見ていただけでした。他にも食堂で何十人もの患者たちが見ていたはずですが、だれも騒がず、黙々と食事をしていたのは、まさに狂気の世界です。

私も薬で人生を狂わされ、入院してみて、ずいぶん昔のことですが、日本医師会会長の武見太郎氏が「精神科は医業ではない、牧畜業である」と放言し、物議をかもしたことを思い出しました。

今となっては、何と正直な人だったのかと思います。

精神医療は変わった、昔とは違う、などという宣伝にのせられた私ですが、入院してみて、本質は何も変わっていないことを知りました。表面をいくら取り繕っても、牧畜業のDNAはしっかりそこには残っています。

精神科を受診しないように、薬を飲まないように啓蒙することはまず一番に大切なことだと思いますが、すでに薬を飲んでしまっている人には、入院だけは避けるように訴えたいと思います。あの中に入ってしまうと、人は、人ではなくなるのです。いくら訴えても「キチガイの言うことだから」で終わりです。

ただ流れとしては、精神科にかかるとかなりの確率で、入院する羽目になるのも事実です。



負のスパイラル

薬によって被害を被っている人たちというのは、自分が被害をこうむっていることさえ気がついていない人が多いと思います。だから、自分の調子が悪いのが本当は離脱のせいなのに、そうとは知らず(知らされず)、薬を飲めばよくなると信じて薬を飲み続けています。そして、離脱の場合なら、薬を飲めばたしかに調子が良くなって、それでどんどん依存が進んでいき、ついに医師の処方限界量まで来て、それでもすでに耐性がついているので効かなくなるのです。

そうすると医師はより強力な薬を処方するようになって、そして、薬が変わる度に病名も、睡眠障害→うつ→双極性障害→統合失調症と、どんどん負のスパイラルに陥っていくのです。

そして、ついには入院です。

今私には、数年前の精神科受診から入院、そして、現在の廃人までの流れが、まるで自動車工場のベルトコンベアに乗った流れ作業のように感じられます。それくらい、どこか必然的な流れだったように感じるのです。どうにも止めようがなかった流れのように……。

もし、このコンベアに乗ってしまったら、できるだけ早く飛び降りればいいのですが、しかし、なかなか難しいのも事実です。なんせ頭は薬漬け、思考力が奪われていますから、論理的に物事の判断ができず、医師の言うまま、従うことしかできなくなっているのです。


不利なことばかり

私は途中で薬に対する大きな不信感(薬だけではありませんが)から減薬を決心しましたが、減薬するにしても、医師に薬を処方してもらわねばなりません。そのとき、患者は医師に向かって不満を漏らしたり、疑問を持ったりしてはいけないのです。

実際ある病院に入院中に不満を漏らしたとたんに、「はい、あなたはもう治りました、退院してください、通院も必要ありません、お薬も出せません」と放り出されました。気に入らないとなれば、医師は患者にこんな仕打ちもできます。さらに、近所の精神科にも処遇困難患者として情報を回され受診ができず、薬を手に入れるため私は遠くの病院を探してようやく薬を手に入れました。

精神科医同士のネットワークは恐ろしいばかりです。

大体ほとんどの精神科は転院する時には、前病院の紹介状を要求しますし、そこに書かれた病名をまず前提としますから、セカンドオピニオンなんてほとんど意味がないと思います。



また、救急隊員の方のブログで読みましたが、精神疾患の人が精神病以外の急病で、救急車を要請した場合、病院から受け入れを拒否される場合が多そうです。(病院の受け入れ拒否の順番は、一に精神病患者、次がホームレスだそうです)

精神科を受診していると、急病になっても、病院をたらい回しにされ、命を落とす可能性が高いということも知ってほしいと思います。精神科にかかるということは、こういうリスクもあるのです。」