以前このブログに「向精神薬・15年の闘い」として取り上げさせていただいた山桜さんが、さらに詳細な薬の副作用について書いてくれたので、公開したいと思います。



 山桜さんは15年ほど前、躁うつ病の診断を受け、まず、トリプタノール、エチゾラム、炭酸リチウムを処方された。そして半年後には記憶障害が出たので(物を取りにいくのに3歩歩くと、何を取りにいったのか忘れてしまっているというほどのひどい症状)、医師に相談した。




リタリン処方

 医師は山桜さんにリタリンを処方した。しかも、眠る前に服用するようにとのこと。

リタリンは現在は抗うつ薬としての使用は禁止されていて、外国ではもともと抗うつ薬としては認められていない薬物だ。しかも、リタリンはいわば、精神賦活剤とか精神刺激剤と呼ばれ、ナルコレプシーなどの治療に使われている。そのような薬をなぜ寝る前に飲むのか? 

しかし、彼女は最初その薬がリタリンとはわからなかった。わかったのは6年後のこと。今から思えば、まったく理屈にあわない処方だが、当時は記憶障害の治療のためと、言われた通りリタリンを服用し続けた。

それからさまざまな障害があらわれるようになった。

山桜さんは次のように書いている。

「リタリンを服用するようになってから、精神の崩壊が明確に現れている。興奮しやすくなり、思考、判断力は明らかに低下していった。」




人格の崩壊

①異常なほどの疲労感に襲われる。

②1年生の児童を、大きな声で叱り飛ばす。(教師として、そのようなことはこれまでないことで、今でも覚えているが、このとき私は心身ともに興奮気味で、わけのわからない怒りにとりつかれているようだった。)

③友人が美術展に作品を出品したと聞き、2時間以上もかかる美術館まで車を飛ばして出かけていった。しかも場所もよくわからないのに、いい加減に道を選んで、朦朧とした状態での運転。私は本来、車の運転はするが、ほとんど夫の運転に頼るような生活だった。

④友人が公民館で講習会を開くので出かけていったが、朦朧とした状態で、なかなか公民館にたどり付かなかった。地図を見ても、自分の行くべき道がよくわからない。

⑤従兄弟の新築祝いに3万円の絵を贈った。私は元来ケチなほうなのに、従兄弟が風景画を玄関に飾りたいと言ったので、絵を描く友人に3万円で依頼したのだ。

⑥自分の2人の子どもが車の中で口げんかを始めたのでかっとなり、町はずれ(自宅から2キロほど離れた場所)に置き去りにする。夜、真っ暗になっているにもかかわらず、子どもたちを見知らぬ場所に捨ててきたのである。家に帰った私は子どもの心配はしていなかった。数時間してから義妹が子どもたちを家に連れ戻してくれたが、私はとくにひどいことをしたとか反省した記憶はない。

⑦薬を飲んで徐々におかしくなっていく私に家族は「薬を飲まない方がいいのではないか」と何度も言った。しかし、当時の私には思考力もなく「薬を飲まないとやっていられないんだ!」と吠えていたという。




性衝動?

⑧服用後の1年半で転勤となった。私は仕事を前任者から引き継ぎ、その際、前の書類の入っているフロッピィを譲り受けた。それだけで感激して、私は6つも年下で新婚の男性教諭に好意を抱いたのだ。単なる好意ではなく恋愛感情だったと思う。「空き教室で待っているからね」と言った覚えがある。もちろん相手は来なかったが。

担当の精神科医に好意を持つ。60歳ほどで、超肥満体。相手は悩みを聞くだけ。私が家族の悩みを話すと、薬を倍にして、「早く離婚しなさい」とささやいていた。怒鳴らず話を聞いてくれるという理由で好意を感じるようになったのかもしれない。

 夫から薬のことで責められたとき、夜の8時頃、自宅兼医院の医師の家を訪ねていったことがある。この医師は妻を膠原病で亡くして独身だった。チャイムを鳴らしたが医師は出てこなかった。うっすら記憶に残っているのは、この医師が望むなら結婚してもいいという思いがあったように思う。

⑩服用3年半後、転院先の担当医師にも好意を抱く。背が高くて鼻筋が通った顔に好意を抱いたような気がする。廊下で会うとドキドキした記憶がある。




浪費癖

⑪夫の友人が赤いエステマを買ったのを見て、自分もその車がほしくなり、夫に貯金をおろすので買い替えてほしいと迫った。私はもともと、車は消耗品で、走ればいいと考えていたくらい。買い替える必要は全くなかった。

⑫その冬、生まれて初めて3000円だけ宝くじを買い、かなり興奮する。3億円当たったらどうしようと真剣に悩み、ふらふらと歩道を歩いていたのを覚えている。




衝動的行動

⑬服用3年目ころ、イチジクを買ったら一つだけ腐ったイチジクがあり、8キロも離れたスーパーに戻って、男性従業員に文句を言う。店員に怒りながら、「薬のおかげで怒りたかった感情が表現できるようになった。いつも人から怒鳴られるばかりで怒鳴り返せなかった」と感じていたのを覚えている。

⑭夫に子どもたちの養育を怠っていると指摘を受け、怒りを感じたので、他県の実家に子ども2人を連れて帰ってしまう。4日間。子どもたちは早朝家を出て、学校に通った。

⑮児童に幽霊の話をせがまれたので、話したが、そのとき教卓の上にのって幽霊の真似をした

⑯職員と口論をする。いろいろ事情はあるが、相手が怒鳴ったので怒鳴り返した。それまでの教員生活でどんなことがあっても、私は一度も怒鳴ったことはなかったのに。




私は殺人者?

 リタリンを飲み始めた夏、私は子どもを殺しそうになった

 子ども2人と私と、3人でお風呂に入っている時のこと、子どもたちは湯船にいた。何が気に入らなかったのか覚えていないのだが、突然子どもたちに怒りを感じ、風呂の蓋を子どもめがけて振り落とした。何の躊躇もなく、思い切り蓋で湯船の淵を叩いたので、真っ二つに割れたが、それでもどこかに理性というものが残っていたのだろう、子どもをわずかに避けていた。もし、子どもたちの頭上に落としていたら、ありったけの力で振り下ろしたので、子どもは死んでいたかもしれない。

 なぜ腹が立ったのか、原因はまったく覚えていない。子どもたちはただ楽しく風呂に入っていただけだった。恐怖に怯えた子どもの顔だけは覚えている。


リタリンは脳の中枢神経を興奮させ、精神活動を高めるという働きがあります。服用後、すぐに気分が高揚して、うつ病の場合などは一時的にですがうつから抜け出すことが出来るというのが特徴です。ただし、現在リタリンは現在、うつ病には処方できなくなっています。

リタリンは、かつては抗うつ剤があまり効いていないときや、ナルコレプシー、注意欠陥多動性障害などに効果があるとされ、処方されていましたが、あくまで対症療法の薬であり、うつ病などを治すことはありません。

 また、リタリンは持続時間が3時間程度と、かなり短いクスリです。こうした短時間作用型のクスリは、薬効がシャープな分、服用した者は自分の意識の変容を実感できるため、依存に陥りやすくなります。そして、こういうタイプのクスリは、クスリが切れたときの気分の落ち込みもまた大きいのです。うつ病患者の場合は、気軽にうつの波から抜け出すことが出来るのですが、リタリンが切れた後、どん底を味わうことになるため、躁鬱の落差が大きくなっていきます。

医師によって、リタリンへの評価は二分されると思います。「絶対処方しない派」と「やむを得ない場合には処方する派」。前者は、リタリンの依存性を危惧して処方しないといった感じ。 後者の場合は例えば、ナルコレプシーで活動する気力をも失ってしまい、ずっと布団の中で一日を過ごしてしまう様な人に対して「引きこもり」になってしまうよりはまだマシであるなどと判断した場合に、やむを得ず処方することもあると いうタイプです。

http://zusu.net/mentalhealth/ritalin/ (参照)