(1からの続き)
薬の副作用
薬を飲み始めて半年の5月に、記憶障害が出ました。
料理の時に醤油がきれ、数歩歩くと醤油の前で何をとるために歩いたのか覚えていないのです。そういったことが何度かあり、医師に言いました。
「記憶がおかしいんです。歩くと何をしようとしたのか覚えていないのです」
「それでは薬を出しましょう。夜寝る前に飲んでください」
それはリタリンでした。リタリンは覚醒剤と化学構造が似ていて、ナルコプシーという突然眠ってしまう人に服用される薬です。学習障害のある子供に適用されたもので、外国では抗うつ薬として認められていません。しかし、日本だけが抗うつ薬として服用が許可されているものです。
でも、このときはそんなことは全く知らず、この薬がリタリンとわかるのに6年ほどの歳月がかかりました。
しばらくすると、ものすごくだるくなり、仕事が辛くなりました。それだけではなく、感情や判断力や行動がおかしくなりました。
他の学年の児童を強い口調で叱ったり、そういうことが問題になりました。非常に感情的になり、ひどく疲労感を感じるようになりました。でも、私はそれを薬のせいだとは考えませんでした。
それでも、こんなものを飲んで大丈夫なのかとちらっと考えたりもしましたが、それよりも、私は自分のうつ病が悪化したと考えました。
そこで医師に話し休養を取れるようにし、校長に申し出て、1月療養休暇をとりました。
その間もおかしく、頭がよく働かないのに、クルマを運転し、遠くの美術館に行ったり、友人に会いに行ったりしました。クルマの運転中は思考が止まっているような状態で、行き先を地図で追うのが大変だったのに、行かなければならないという強い衝動に駆られていました。
それでも、学校を休むとひどい疲労感はかなり軽減しました。そして、9月に通常勤務はしていますが、担任は外されていますので勤務できました。
あるとき医師に、夫とのトラブルを話すと
「夫と別れなさい。あなたは専門職。離婚して1人でもやっていけます。」
と離婚を勧め、トリプタノール・イミプラミン・リチウム・デパスの薬を倍処方されました。
薬を1年半飲むと、立っているのも辛いほどのだるさを感じました。
だるさを訴えるとトリプタノールからイミプラミンへ。そして、イミプラミンからトリプタノールへ、医師はその切り替えを繰り返しました。
体にもこの間異常が起きていました。朝起きると、枕に髪の毛がたくさん抜け落ちていることがしばしばおきました。
まぶたもむくんでいることが多くなりました。
生殖器官がおかしくなり、膣乾燥をするようになり、ガンジダ菌に汚染され、夏に毎年婦人科にかからなければなりませんでした。
足のすね毛もだんだん短くなり、腋毛はなくなり、陰毛は赤く茶色になっていきました。
眉毛も薄くなり、内側の3分の1が抜けました。
便がウサギの便のようになり、便秘がひどく、医師に伝えると便秘薬が出るようになりました。
夜寝るのに30分かかるようになったと話しただけで、睡眠導入剤が出されました。
「睡眠導入剤(ニトラゼパム)ですが、軽~いお薬です。」
睡眠薬は知っていたが、睡眠導入剤は睡眠薬とは別物と思いました。何しろ、睡眠はその頃7時間とらないと起きられないような状態になっていました。医師はどれだけ寝ているのか全く質問せず、この睡眠導入剤の服用をさせました。
飲み始めると日中眠くなり、出張先で眠ってしまったり、午前中学校で眠ってしまうことが起きるようになりました。
そして、生理の時に立っていられないほどの腹痛がおきるようになりました。その度、年休をもらい、自分でクルマの運転ができずに、タクシーを呼んで帰りました。
疲れを改善しようとコーヒーをたくさん飲みました。そのせいか、体は10キロも太りました。
突然の断薬
あまりにもおかしいので他の病院に行きました。医師は
「あなたは躁うつ病なんかでないですよ。精神疾患は見られません。断薬して様子を見ましょう。」と言いました。医師が調べると、私がかかっていた医師は内科の医局を出ていて、精神科の医局は出ていないと話していました。
突然の断薬……1週間ほどは、体が元のように楽になりました。
しかし、それ以降、筋肉の脱力を感じるようになり、医師に伝えましたが、断薬は変えませんでした。
立つことが苦しくなり、呼吸困難になりました。何度も救急車を呼ぼうかと思うほどでした。頭皮がブヨブヨになり、ふけが異常に多くなり、吹き出物が出ました。
1週間ほど体が焼きつくような筋肉痛に襲われました。さかさまつ毛になり、痛みがありました。歯肉から血が出て、歯がぐらつき、物を噛むことができなくなりました。
吐気・頭痛が続き、食事ができませんでした。食事ができるようになっても、野菜など消化できず、ニンジンなど噛んだ状態で便として出るようになりました。
水を飲むと喉に痛みを感じ、飲み込みにくくなりました。
ベッドに寝ているのにジェットコースターに乗っているような感覚が何日も続きました。私はベッドにしがみついていました。
文字が思い出せなくなり、ひらがなしか思い出せませんでした。「箸」など日常生活で使う名詞も思い出せませんでした。
電話をかけたくても1文字さえ記憶できず、かけられませんでした。
味覚もなくなり、砂糖の甘みも15ccに4杯も入れないと甘みを感じなくなりました。が、その後、甘さ、からさ、すべての味覚がなくなりました。
爪は紙の様に薄くなっていきました。
睡眠は4時間……医師が睡眠不足のせいでこのような症状がでていると主張し、睡眠薬を飲みましたが、1晩眠れなくなり、2晩目からは4時間中2回目が覚めるようになりました。しかも、飲まなければ翌朝、目を突き刺したような痛みを感じるようになりました。
体重は1月で14キロ減り、生理がとまりましたが、その後体重は増えました。
夏になっても暑さを感じず、寒いくらいで、電気毛布に包まって、冬の靴下を履いていました。
料理も思い出せない、思考も全くできない状況で、私は薬のせいではないかと医師に尋ねましたが、違うと言うのです。
これ以上廃人になってはと考え、自殺をすることに決めました。
木にビニールロープを取り付け、首つりをしましたが、首が苦しいだけで数分後にはやめていました。何度やってもだめ。
ビニール袋に顔を入れましたが、ビニール内が暑くなりだめ。まだ動けるときに、排気ガス自殺をしようとしましたが、臭くて1分しか車内にいられません。睡眠薬を飲みましたが2週間分飲んでも24時間後には目が覚めてだめ。毒草ではと思い、すずらんを食べましたが、下痢も起きませんでした。
冬になり、川に飛び込みましたが、足がついて沈みません。泳いで川の中に入りましたが、どうしても岸に戻ってしまいます。寒さで死ぬのではと思いましたが、体が逆に熱くなり、諦めて自宅に帰りました。