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さて、昨年末に「日本生命倫理学会」が次のような講演をzoomで行いました(第129回くすり勉強会との合同開催)。
「治療抵抗性統合失調症治療薬・クロザピンをめぐる規制の変化と最新のエビデンス:定説は覆るか?」
話題提供:齊尾武郎(フジ虎ノ門整形外科病院、当部会幹事)
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主旨:クロザピンは1969年を国際誕生年とする古くから使用されている医薬品だが、1975年の本剤投与による無顆粒球症の報告を機に世界各国で本剤は販売が停止され、開発が中止された。
その後、既存薬では治療困難な統合失調症に対する本剤の有効性から、本剤投与による副作用モニタリングを実施しつつ、1989年の米国・英国を皮切りに世界各国で臨床応用が再開され、治療抵抗性統合失調症の治療薬として広く使用されるようになった。本邦では2009年に製造販売承認が取得されているものの、海外と比べ普及していない。
(ちなみにクロザピンの副作用。無顆粒球症(白血球減少)や心筋炎などの重篤な副作用がある。そのため、特別な管理体制(CPMS)のもと、入院での治療開始と定期的な厳重な血液検査が義務付けられています。)
本講演の論旨は以下の通り。
①世界の本剤に関する医薬品規制は緩和へ向かっている。
②我が国の政策として本剤を難治性統合失調症治療に広く普及させる方向性が示されている。
③本剤の有効性に関する現今の最新のエビデンスからはそうした動向の正当性には一定の留保がつく。
④本剤抵抗性統合失調症(クロザピン抵抗性統合失調症)の薬物療法の現在についても概説する。
各国の診療ガイドラインによれば、本剤の投与は治療抵抗性統合失調症の治療の中核をなしており、世界的にはすでに本剤は治療抵抗性統合失調症治療の基本薬として定着している。しかし、本剤の有効性に関する最新のエビデンスを鑑みれば、治療抵抗性統合失調症および治療抵抗性ではない統合失調症に関する薬物療法戦略の見直しが必要である可能性がある。
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残念ながら私は参加できませんでしたが、参加した友人の話から。
(上記、赤字にもあるように)一般的に言われているほど効果のある薬ではないのではないかとのことでした。
それにしても、そもそも「治療抵抗性」(さらには「超治療抵抗性」という括りもあるようです)という診断名自体、へんな日本語です。医師の治療が「下手」だから、良くならないのではないですか。それをあたかも、患者が治療を素直に受け入れないから良くならないとでも言いたげなこの言葉。
だから、赤字にもあるように、「統合失調症に関する薬物療法戦略の見直しが必要なのですが、治療しても良くならないのは、そもそも統合失調症ではないから、という視点はゼロです。
薬の重ね着をして、それでも良くならなければ、一気に命に関わる副作用のある治療薬に切り替える(あたかも、特効薬のような前振りで当事者家族を勧誘します)。しかし、そのクロザピンの有効性にクエスチョンマークがつくわけです。
講演ではどこまで話されたのか定かではありませんが、じゃ、なぜクロザピンを処方するのかの考察はあまり聞こえてきません。
精神医療における診断の不確かさは、統合失調症に限らずですが、その曖昧な診断を元に、けっこうな副作用のある薬(しかもやめにくい薬)をひょいひょいと処方するところに、この医療の大きな瑕疵があると思います。
講演者は精神科医ですから、そこまで踏み込んでの発言はないでしょう。だから、この医療は「百年河清を俟つ」なのです。ある程度いいことを言っても、あくまでも「ある程度」にとどまります。
(ちなみに医療観察法病棟ではこの薬が一種の「罰」として使われているようです。罪を犯す精神障害者=治療抵抗性統合失調症患者=クロザピン、という図式を作り上げ、本来なら裁判で判断されるべき「罪」を、医療が「治療」と称して「断罪」しているのです)。
