12年前にバンコクで知り合った友人が
レコードバーのカウンターを間借りしてコーヒー屋を開業したと知った時
「会う機会をくれてありがとう」と思った。
普段は写真家・研究者として日本中、世界中を回っている彼が
個展や講演会の機会もなしに人前に出ているのも珍しいなと思ったし
革工芸を手掛けるアーティストでもある人が
どんな思想や哲学でコーヒー豆を焙煎し、淹れているのか、その味にも興味が湧いた。
2012年、私はタイの首都バンコクにはたった2日しか居なかった
古都チェンマイでマッサージ学校に通っていたので
空港のあるバンコクには到着日と帰国日の2日間しか滞在しなかったのだ
その2日間で一体何ができたかと言うと、お散歩くらいしかない。
川沿いをぶらぶら歩きながら野良猫や川を撮影していたら
たまたま珍しい刺青をしている人が目に入って
彼に挨拶をしてみた、そんなきっかけだった気がする。
国籍は何人でも良かった、何をしている人でも良かった、ただタトゥーが「生身のアート」が面白いと思った。
EUの大学で美学美術史を専攻していた当時
日本の出版社で、その頃展覧会が開催されている画家の本(主に年表部分)を書く仕事をしていた
客観的事実のみを述べるのであれば、今はAIが代筆すれば充分に事足りる
「その人にしか書けない」文章と言うならば
どうしても私小説やエッセイのかたちをとらざるを得ないし
アートを観て、ただ「綺麗ね」で済ますのではなく
「どうしてだろう」と表現の意図や文化的背景に思考を巡らすのも、また芸術鑑賞に於ける世界解釈なのだ
個人の経験は、その擦り合わせのためにあるのだろうと思う
マッサージでも写真でも茶道でも
人が表現をする行為とは
何かを介在して他者とのコミュニケーションを取ること
なので
喜怒哀楽、何某かの化学反応を起こせたら成功
だから、生があるうちに、生身のアートに触れたいのです
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