NHKのBSテレビを録画して見ていました。その時私は40年前の自分の体験を思い出していました。
まずは、番組の紹介から
自身に吃音がある研究者が自身の体験から
「吃音は幼児期に吃音をきつく注意されたことで起こる」
という仮説を立て、孤児院で実験を行った。しかし、研究者の仮説を裏付ける結果とはならなっかため、その報告は62年間もの長きにわたり闇に葬られてしまった。
仮説通りの結果とならなかった論文を闇に葬った研究者に対して、番組のコメンテーターの人たちは、
「科学者ではない!!」といっていました。
実験は、4つのグループに分けられた。
1:吃音がある子供に強く吃音を矯正するように命じたグループ
2:吃音があるが、自由にさせたグループ
3:吃音が無い子供に、強く吃音を指摘し、吃音を矯正するように命じたグループ
4:吃音が無い子供に、自由にさせたグループ
結果はどのグループも、実験前と実験後では差はなかった
というものです。この実験の怖いところは、実験が終わった後に、吃音が現れ、高齢になっても吃音に悩まされている人がいることです。この実験をモンスタースタディと呼んでいるとか・・・。
私の体験は、当時1つ目の会社に勤務していた時のことです。その時の仕事は、試作品(体外診断薬)の性能を評価する仕事でした。私の仕事は単調な仕事で誰でもできると考えられていましたが、その結果次第では、試作品を試作グループに差し戻すか、それとも試作品から商品化への研究に進むかを判断する大切な実験でした。
私が出した結果が思わしくなく、試作品グループに差し戻す結論を出さざるを得ないデータがでた時は、研究所中が大騒ぎとなり、
「もみじの手技に問題がある。やり直せ!!」
とか
「実験方法に問題がある。」
等と、私の実験手技にケチをつけたり、実験方法を変えるように言って来たりしました。そして、計画通りに商品化へと進ませたい一心で、会議を終わらせて、強引に商品化へと進ませてしまいました。
実験手技にケチをつけられた時は、試作品グループの男性と、私の上司(東大君)とで、同じ実験をし、誰が一番上手かを比べた結果は、私が一番きれいなデータを出しました。それはそうです。会議ばかりしていては、実験手技は落ちて行くものです。私のように毎日実験室にこもって実験した人にかなうわけはありません。「私をバカにしないで!!」といいたかったし、実験結果が出た時は、「謝罪して!!」といいたかったです。
あの時何で言わなかったのだろうと、今でも後悔していて、こうして仕事も家事もしないで1日中痛みをこらえている生活をしていると、頭は暇なので、ふっとこのことが浮かんでは、私を苛立たせ、心が乱れ、とても辛いです。
実験方法にケチがついた時は、大学病院に試作品を出し、実験をしてもらったところ、もっとひどいデータが出たため、即回収し、試作品グループに差し戻されました。私が大学病院の実験方法の問題点を指摘した報告書を書いたところ、大学病院の人からは、「もう実験はしない」といわれました。その後は、私のデータがそのまま大学病院の実験データとなり、論文に掲載されるようになりました。もちろん、私の名前はその論文に掲載されませんでした。
こんなことをするくらいならば、評価グループなんて必要ない。どんな性能であろうと、好き勝手に商品化すればいいでしょ!!
と私は思ったものです。
ある日を堺に試作品グループから横やりをいれるようなことがなくなりました。私は私の手技や実験方法が認められたのかと思っていましたが、そうではなく、別の研究所から移動になった人が、
「こんなことは止めましょう!!」と強くいったことが理由だったと、何年も経ち、私が評価の仕事から離れていた時に知りました。
今、番組を見ながら、当時の企業の研究員たちは皆が皆、科学者ではなく、企業人なのだ!!
と私は改めて思いました。
研究者たちは旧帝大や早慶などのご立派な大学出身者で、学部卒は珍しく、ほとんどが修士や博士の学位を持っている人たちでも、科学者ではなかったのですね。
私の学歴はお粗末なものですが、データはうそをつかない、だから学歴は関係なく、私の実力は正当に評価されるだろうと考えて入社したことを、今更ながら後悔しています。もし、今の悪賢さを持ったまま過去に戻れるならば、別の会社に就職したいと思います。