『自分の中に毒を持て』(岡本太郎著)を読みました。
もう読む前からわかっていたことですが、本書では岡本太郎が圧倒的な熱量で「真に生きるとはどういうことか」を語っています。
車でいうなら、はじめから終わりまでアクセル全開で突っ走って行ってしまう感じでしょうか。
だからといって、読んでいてまったく疲れません。むしろ励まされる、元気をもらえる、そういう一冊でした。
太郎の言葉は、ただ怒りに任せているわけでもなく、説教調になるわけでもなく、魂に直接訴えかけてくるところがあります。
「人間にとって成功とはいったい何だろう。結局のところ自分の夢に向かって自分がどれだけ挑んだか、努力したかどうか、ではないだろうか。夢がたとえ成就しなかったとしても、精いっぱい挑戦した、それで爽やかだ。」
「それで爽やかだ」って、格好いいですね。
この「挑む」であるとか、「一瞬一瞬」「運命をひらく」というような言葉が本書のキーワードになっているように感じます。
いい暮らしをするとか、地位や名声を得ることが成功ではない、結果よりも、やるべきことに対して自分がどれだけ挑んだかというプロセスの方に価値があり、命を燃やすような喜びがある、ということなのでしょう。
言っていることはシンプルです。ただ、実行しようとすると簡単ではありません。そもそも「自分の夢」を持っていない人はどうしたらいいのかという声が聞こえてきそうですが、太郎はそういう人に対しても、言葉を残しています。
「まず、どんなことでもいいからちょっとでも情熱を感じること、惹かれそうなことを無条件にやってみるしかない。」
「何かすごい決定的なことをやらなきゃ、なんて思わないで、そんなに力まずに、チッポケなことでもいいから、心の動く方向にまっすぐに行くのだ。失敗してもいいから。何を試みても、現実ではおそらく、うまくいかないことのほうが多いだろう。でも、失敗したらなお面白いと、逆に思って平気でやってみればいい。とにかく無条件に生きるということを前提として、生きてみることをすすめる。」
とにかく、理屈をこねる前に、できない理由を探す前に、小さいことからやってみろ、ということですね。弱者の背中をそっと押してくれるような言葉です。
「失敗したらなお面白い」と言っているところが太郎流で、たしかに、失敗を恐れておどおどしてる人よりも、失敗して晴れやかに、堂々としている人の方が遥かに魅力的ですね。
そして、さしあたり惹かれるものがなかったら、本を読むのもいいと言っています。
「どんな本を読んだらいいかというと、星の話でも、文化人類学でも、旅行記でも、哲学書でもいいし、小説でもいい。ただ、小説の場合、興味本位だけで、だらだらと空しいものが多い。読んでしまって、あとに何も残らないなんて、時間のムダだ。そうじゃなくて、ほんとうに新しい自身の人生観がひらくような本がいい。」
小説だけ条件付きになっていますが、「生き方を見きわめるような本」「新しい自身の人生観がひらくような本」がいいとして、太郎自身は、グリム、アンデルセン、アラビアンナイト、ガリヴァー、西遊記、モーパッサン、トルストイ、ツルゲーネフ、ショーペンハウエルなどに熱中したことが記されています。
この読書のすすめは、私もこれからやっていきたいことなので、太郎もそう考えていたのかと嬉しくなりましたが、重要なのは、自分の生き方がひらく本を選ぶということなのでしょう。
「よく世間一般で完成された人は素晴らしいというが、この世の中には、完成なんてことは存在しないんだ。熟すということは技能や熟練とは関係がないというのがぼくの信念だ。芸術はもちろん、スポーツも歌も会話もすべて、下手なら、むしろ下手こそいいじゃないか。そう思って平気でやればいい。もっともっと下手にやろうと決心すれば、かえって人生が面白くなるかもしれない。ー中略ーだからといって自分からひきさがって、ジメジメして下手であることを認めては駄目だ。そうじゃなく、自由に明るく、その人なりのユニークな下手さを押し出せば、逆に生きてくると思う。また、その方が人に魅力を感じさせる。」
ちょっと長いですが、本書でもっとも響いた一文です。
これをざっくりとまとめると、
この世に完成なんてことは存在しない、熟すということは技能、熟練とは関係がないんだ、下手なら下手でいいからその人なりのユニークな下手さを押し出せ。
ということになりましょうか。
この「下手こそいいじゃないか」の精神で生きていければ、今よりも堂々と楽しく生きていけるのではないかと感じました。
ただ、下手を押し出すといっても、実際にやってみようとすると難しいことに気づきます。昔ながらの習慣で、無意識のうちに人と比べている自分がいるからです。まずはそういう自分と戦う必要があるのでしょう。
下手を平気で押し出して自由に明るくふるまう、いきなりこれはハードルが高いけれども、少なくとも自分は下手だとジメジメする必要はまったくないなと思いましたし、少しずつ自己肯定感を高めていって、平気で「ユニークな下手さ」を押し出せるようになりたいと心から思いました。
「出る釘になれ!」「芸術は爆発だ」など、まだまだこの一冊には熱い言葉がたくさん盛り込まれています。特に何かに迷っている人は背中を押して貰える本なので、一読をおすすめします。
