こんばんは。
最近読んで面白かった本を紹介します。
中学生になって嫌いになる教科の第1位が「美術」なのだそうです。
そう言われてもふしぎではありません。受験科目ではないですし、大半の学生にとって、将来何に役立つのかと考えたときに具体的なイメージが湧きにくいのかもしれません。
そういう私も苦手意識がずっとあります。まず絵心がずばぬけて無い…。そして、美術館に行けば絵の解釈もできず、絵の横に書かれている解説文だけを読んで何となくわかったような気になっている、といったありさまです。
現役の美術教師でもある著者の末永さんは、冒頭から熱く語りかけます。
「美術」こそ大人が学び直すべき科目だと。
いきなりそう言われても半信半疑でしたが、読み進めていくうちに…
大事かもしれない…
いや、
「めっちゃ大事じゃん!!」と実感するに至り、これまでアートを軽んじてきた自分を大いに反省させられました。
本書では、まず「アート作品」と「アート思考」の違いについて、たんぽぽの花で譬えながら書かれています。
ざっくりと言ってしまうと、「アート作品」は黄色い花の部分、「アート思考」は花の根元にある種や土のなかにふかく伸びている根っこの部分などを指します。
そもそも、たんぽぽの花は1年のうちに1週間ほどしか咲きません。つまり、「花」はたんぽぽにおけるほんの一部分でしかないということ。残りの目には見えない種や根のほうにこそ、アートの本質がありますよと著者は言っているのです。
では「アート思考」とはどういうものなのか、言葉にするとこうなります。
「自分の内側にある興味をもとに、自分だけのものの見方で世界を捉え、自分なりの研究をする」
これ、どうでしょうか。
たとえば仕事で、このように思考する人としない人では、「成果」や「やりがい」に大きな差が出てくるのではないでしょうか?
一枚の絵画の前に立ったときも同様で、まず自分はどう思うのか、なぜそう感じたのか、と深堀りしていくことが大事なのであって、解説文を読んだだけで絵から離れる…なんてことをしていては、いつまで経っても「アート思考」は育たず、アートを楽しむことさえできません。
「しかし、ビジネスだろうと学問だろうと人生だろうと、こうして『自分のものの見方を持てる人」こそが、結果を出したり、幸せを手にしたりしているのではないでしょうか?じっと動かない1枚の絵画を前にしてすら『自分なりの答え』をつくれない人が、激動する複雑な現実世界のなかで、果たしてなにかを生み出したりできるでしょうか?」
一冊のなかでもっともひびいた一節です。
なぜ「美術」が学ぶべき科目なのか、なぜ「アート思考」が大切なのか、その問いに対する著者なりの答えがこの一文に詰まっていて、瞠目させられます。
「自分なりのものの見方」と言っても慣れない人には難しいかもしれません。私も本書のなかのワークでやってみて、簡単ではないと感じました。
ただ、ちゃんとそういう人にでもできる練習法が紹介されています。
著者おすすめの「アウトプット鑑賞」がそれです。
作品を見て、気づいたことや感じたことを声に出したり、紙に書き出したりして「アウトプット」するという簡単な方法なのですが、これは、とっかかりとしてはかなり有効だと感じました。
何より、楽しいのです。
的外れなことを書いちゃうのではないかと恐れるよりも、自分なりのものの見方で言葉にするときの「ドキドキ感」、これを味わうことの方がよっぽど大切と、ワークを通して実感しました。
さらに他の人と鑑賞を共有することができれば、思考の幅がひろがっていいのかもしれません。
この「アウトプット鑑賞」はアートの鑑賞以外にも、自分がどう思っているのかを知りたいときに使える方法と感じました。
ピカソやアンディー・ウォーホルなど、本書には6つのアート作品が紹介されています。中には「どこがアートなの?」というような問題作もあって手強いですが、そこは著者が歴史も踏まえて丁寧に解説してくれています。
この本は構成がとても良く、楽しく自問自答しながら読み進められます。
「アート思考」を今から育てておかなければ、後々痛い目にあうな、と気づかせてくれたことに感謝します。
コロナが明けたら必ず美術館に行こうと決めました!
