希望の病院が空くまで点滴で体力を付けることになった。
5月12日。
朝母から連絡があり、胃カメラの前に家族と話したいと医師が言っているので来られるか?と聞かれた。
特に用事はなかったので行くことにしたけれど、
胃カメラなんて勝手にやってくれて構わないのになと思っていた。
けれど、医師が話し始めたのは、病状の説明だった。
朝、転院予定の病院の医師が来て、相談したと言っていた。
CT画像を見せながら、食道が狭くなっていることを教えてくれた。
これは腫瘍、つまりがんができているからだと。
それから、大動脈や心臓に近いので、手術は選択肢に入らないこと、
体力的に抗がん剤もつらいこと、
放射線治療がベストだろうということを丁寧に話してくれた。
治療は転院先で行うので、その前に胃カメラをやってしまいましょう、と締めくくった。
…確かに「胃カメラの説明」だったけど。
まさか食道がんを宣告されるとは思っていなかったので、
親子でポカーンとしてしまった。
2人とも、ショックなのではない。
本当に、ポカーンという状態だった。
そしてすぐ、母はあれほど拒んでいた胃カメラを、ポカーンな状況でどさくさに紛れるかのように飲まされた。
幸い、麻酔で何も覚えていないという。
こんなことなら早く検査させれば良かった。
ポカーンとした中で、唯一私が思ったことだった。