私とソラは二人して肩を貸し合ながら川を伝って村へと歩き始めていた。
二人は始めの頃よりも実際の距離としても心の距離としても数段近くになっていた。

「すまない。」
「もういいって、」
「だが、」
「それ以上言ったら怒るわよ。」
しつこいソラの謝罪に私は睨みつけると彼は気まずそうに顔を伏せた。

「・・・、」
「別にアタシを売った家族を恨んでいるわけじゃないの。子供心にアタシみたいな貧しい家の女は売られるのが運命だから仕方ないって知っていた。」

私が話を進めるとソラの体がドンドン縮こまっていくのを感じ取れた。

「だけど諦めたわけじゃないわ、何時か逃げ出してやるって思っていたのよ?」

そんな彼を元気付けるためにも私は明るく言った。
ソラは薄く笑って返す。

「強いんだな。ミコトは」
「よく言うわよ。」

とてもではないが人の戦いをしていない彼にいわれる筋合いはなかった。


日が完全に落ちると、ソラは自身の能力を使って火を木につけて前に進む。
しかし私とソラの呼吸は明らかに荒れていた。

「はぁ、はぁ、はぁ。」

景色が見慣れたものになると私はソラを励まし続ける。

「はぁはぁ、ソラ、もう少しだからがんばって!」
「あぁ、」

最早、返事するのも辛そうなソラは小さく声を出しながらも只管に歩を進めた。
しかし時間をかけて丘を登りきった私は目の前の光景を受け入れられなかった。

「な、なにこれ?」
「どうした?ミコト、」

ソラが私の見つめる先を見た。

そこにあった筈の私が生まれた村が形をなくして壊されていた。



私とソラは壊されて見る影もない村の中を見て回っていた。

「どうなっているの?」

家屋の残骸が連なっていて壊れていない家は存在していなかった。
圧倒的な質量で押し潰されたようなそんな印象を持たせる壊れ方だった。
そして村人も誰もいなかった。

「ここがミコトの故郷か?」
「う、うん。」

家の残骸にソラは腰掛けると静かに言った。

「所々土砂が積もっている、恐らくは水害だろう。」
「誰もいない、誰も・・・」

私が落ち込んで顔をうつむかせるとソラは慌てたように言葉を付け足した。

「も、目測で数日はたっている。もし生きているのなら他の村に避難しているだろう。だから死んだと決まったわけではないぞ。」

ソラの余りの必死さに私はおかしな気分になってしまった。

「慰めているの?」
「・・・まぁな。」

顔を逸らすソラに私は不謹慎にも笑みを浮かべた。

「ふふっ、ありがと、」
「はは、」

ソラも微笑むとそのまま倒れこんでしまった。

「ソラ!?」
「はは、限界だ。すこし休む。」
眠るように意識を失ったソラと残された私はアタフタとするしかなかった。

「どうしよ、どうしよ、どうしよ、何もないのに。」

私は何も出来ない不甲斐なさに涙を流しそうになった。その時、

「お~い!」

遠くからの声に私は気付いて振り向いた。