ユウコが再び男二人の前に現れた時、

彼女は一人分の食事を用意して現れた。


「さっすがぁ、ユウコちゃんだ。いい嫁さんになれるぞぉ。」

「食べるな、これはシロウの分なの。」

「冷蔵庫の余りものでよく作れたな。」


呟くシロウの前には温かいご飯と味噌汁、さらに肉じゃがと中々豊富な品揃えを誇っていた。

しかしケンイチの目の前には既に冷めたお茶がポツンと置かれていた。


「ぬうぅ、扱いに差を感じるぅ。」

「シロウは劇の練習がんばったから良いの、努力した者はキチンと評価する、これがアタシのモットー。」

「ケチ。」

「なっ!!劇の練習抜け出して、一人ここでサボっている男に恵んであげるほどアタシは優しくないのよ!」

「だからケチといったんだ、やぁーいケチ!」

「あんたねぇ!!」

「・・・ん、うまい。」


ギャアギャアと叫び散らす二人を無視してシロウは目の前にあるご飯に食べていた。

幸せそうな表情を浮かべるシロウと、ケンイチとユウコの争いが対極的に深まっていった。


十分後、彼は両手を合わせて姿勢正しくお辞儀をした。


「ふぅ、ご馳走様。美味しかったよ。」

「どういたしまして、あぁ、疲れた。」


シロウは最期に一服、お茶を飲み干した。

彼の目の前にはもう口喧嘩に疲れ果て、体中から力を抜いているユウコとケンイチの両名がいた。


「食っちまったかよぉ、腹減ったのに、」

「自業自得でしょ。」

「まだ言うかぁ、」

「これ、食うか?」


シロウが指差したのは彼が買い、まだ手をつけていないお握りだった。

それを確認するまでもなくケンイチは神速で奪い去ると一気に食べ始めた。

だがその動きはものの数秒で止まり、ゆっくりとシロウに顔を向けた。

その顔色は何故か先ほどの元気な肌色に青色を落としたような色をしていた。


「これ、具は何だぁ?」

「本日発売の苺のジャムオニギリ」

「ぐあはぁ、」

「汚い!吐き出さないでよ。」

「こんなもの食えるか!」

「うん、興味買っただけだからあげるよ。」

「いるかぁ!!」


喧しい夜は過ぎていく。