シロウはアパートに一人暮らしである。

それは親がいないとかではない。

ただ実家から通うには遠すぎるという理由だけで親が彼を追い出したのだ。

さて彼の身辺状況は例によって後々に語るとして


少しだけ考えてみて欲しい、

学校の目の前にある上に一人暮らし。


「シロウの坊ちゃん。なんか食うものねぇの?」

「この部屋に客人にだすものはない。」
「けっ、時化てやがるなぁ、おい。」


其処が生徒達の溜まり場になるのは仕方の無いことだ。

その証拠に学校を終えてアパートに帰ったシロウは部屋でくつろぐケンイチを見た。

それも日常の光景になりつつある為かシロウは動揺もなく質問した。


「お前、劇の練習サボって帰ったんじゃないのか?」

「いやいや、サボったんじゃなくて逃げ出した。」


時は既に七時を越えている。

劇の練習につき合わされて下校時間を越えて帰宅した。


「夕飯どうするぅ?」

「食っていく気か?」

「いえいえ、ただ頂くだけですよぉ。」


やはり品のない笑顔を浮かべるケンイチにシロウは言い放った


「食い物なんてこの部屋に無いよ。」

「そうそう、冷蔵庫中にも無かった。」


勝手に見たのか?という疑問がシロウの溜息に含まれていた。

するとケンイチはシロウの持つコンビニの袋に注目した。

その中には握り飯が二個と男子中学生が食べる量にしては少なすぎた。


「俺の分はぁ?」

「あるわけ無いだろ、」


言葉に無意味に落胆するケンイチはシロウが自分を無視して食事を開始するのを見た。


「裏切りものぉ!」

「裏切ってないし、」


そこにピンポーンと電子音が響いた。

朝の喧しい迎え方と違って、静かにそして無遠慮に家へと侵入していった。


「シロウ、うちのお母さんが持っていけって。あぁぁぁぁぁ!」


ユウコは絶叫した。

持っていた肉じゃが落とさずに、

ケンイチがヤベッと顔をゆがめる前に怒涛のラッシュが始まった。


「アンタ!あれほど帰るなって言ったのにどうして帰っちゃうのよ!?っていうかずっと此処にいたの?だいたいあんた台詞一回も通し練習してないじゃない。そんなの許さないわよ!それにシロウ!アンタ匿っていたの!?」


何時の間にか怒りの矛先がシロウに向けて突撃を敢行した。

ケンイチとシロウが攻撃を受けているが、ここでユウコが肉じゃがを持ってきた理由を説明しよう。


シロウは一人暮らしである、これは先ほど述べたとおりだが。ユウコは彼の住むアパートの隣に住んでいる。

そこで彼女の母親が隣に引っ越してきた娘と同学年の男子中学生の世話を焼きたがっている。

彼はあまり自炊するほうでもない為に時折ご飯に誘ったり、おかずを差し入れしたりと世話を焼いている。


「まったく、明日はキチンと出てもらうからね、」


ようやく、怒りの発作が収まったらしいユウコは本来の目的を思い出した。


「シロウ、ご飯は?」

「いま、食べてる。」


シロウが自身の持っているお握りを指差した。


「やっぱり・・・ちょっと待ってなさい、今軽く作ってあげるから。」

「いやぁ、助かったけぇ。腹減ってさぁ。」

「誰がアンタの分を作るっつたのよ。」


そういうと、ユウコはキッチンに消えていった。