シロウが家を出たのはユウコが家を訪れた三分後だった。

それもユウコの放つ騒音に彼が折れた形だった。


学校に向かっている最中、ユウコは終始不機嫌そうに顔を膨らましていた。


「もっと早く出れたのに、」

「これ以上早く出て何をする気だ?」

「あんた、今日の朝は英語の小テストするって聞いてなかったの?」

「そう、だったか?」


そう答えるシロウにユウコはあからさまにため息をついた。


因みに彼女は彼がバンパイアである事を知らない。

いや、もっともな事を言えばシロウ自身がバンパイアである事を知らないのだ。

その理由も後々語るといって言葉を濁さなくてはならないのは非常に心苦しい。

がそこは我慢して欲しい。


「どうせ忘れて勉強して無いだろうからって、わざわざ起こしてあげたのに。」

「感謝してる、感謝してる。」

「二回言った事は本当のことじゃないって聞いたわよ。」


ギャアギャア言い合っているうちに二人は学校へ入り、上履きに履き替え、教室に入っていった。

教室内には時間も時間なので既に生徒が八割ほど埋められていた。


一応の社交儀礼でおはようを連呼してシロウが自身の席へと向かった。

彼の後ろの席では品のない笑顔を浮かべた男がヘッドホンをはずした。


「おやぁ、二人仲良く登校ですかい?」

「るっさいわよ、」

「無理やりね、英単語帳かして。」

「ほいよ、」

「アンタはいいの?」

「おいらぁ、とっくに諦めてらぁ。」


そういって彼はまたしてもヘッドホンをつけ、自身の世界へと旅立っていった。

ユウコがやれやれといったように溜息をついたその時、シロウは英単語帳を穴が開くほど見ていた。


旅立った彼の名前は細波謙一。同じくハタ中学二年生。

性別 男。

特技 堂々サボり。
長所 能天気

短所 無責任

シロウにとって親友と表すに等しい人物であり、ユウコにとっては天敵と表すに等しい人物である。


彼の英単語帳のおかげでシロウは難を逃れた。