倒れこんだハルメッヒは僕の腕に抱きかかえられたまま、力を振り絞って話を始めた。

「お、お、おら、たくさんの人の笑い声を聞くのがす、す、好きだったから」

ハルメッヒは震えながら言った。

「あ、あのお金さえあれば、み、み、みんなおらと楽しく笑ってくれた」

ハルメッヒはそう言うと僕の目をじっと見つめ、決心したような口調でゆっくりと僕に言った。

「あ、あんたは、おらの友達か?」
「うん」僕は言った。
「よ、よ、よかった。それこそおらが一番欲しかったものだ」

そう言うと彼は初めてニコリと笑い、「もう思い残す事はない」と言った。

そしてその瞬間、ハルメッヒの体は、砂の様に一気に崩れ去っていったのだ。

それは瞬きほどの速さで完了し、僕に理解の時間さえも与えてはくれなかった。

こうして最後のスペレッツェもこの世から消えてしまった。

僕は何度も彼の名前を大声で呼び続けた。

でも、僕の枯れた声はもう2度と彼に届く事はない。

しばらくして低く立ち込めていた黒雲から、大粒の雨が一気に糸を引きながら落ちてきた。

激しい雨に頬を打たれながらも僕はその場を動けずにいた。