ブラックオイル | てきとーな美術辞典

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 ブラックオイルは、基本的に乾燥の遅い油絵において、めずらしくきわめて乾きの早いオイルである。

 シルバーホワイト(鉛白)はもっとも伝統的な白色顔料の一つにして、その毒性によって大量の犠牲者を出した曰く付きの顔料だが、油絵においては乾燥促進剤としての作用も持っている。化学的には塩基性炭酸鉛といい、鉛化合物で、鉛は油の酸化を早める作用がある。つまり、乾性油の乾燥を早めるのである。

 

 このシルバーホワイトと乾性油を組み合わせ、乾燥性を高めた油がブラックオイルである。名前の通り、濃い焦げ茶色をした油となる。

 以前はクサカベから販売されていたようだが、現在店頭では見ない。自作はできる。ただし、シルバーホワイトを粉の状態で扱うのはその毒性のゆえ、おすすめしない。「そんなことしてたら死ぬよ」くらい言っておく。

 

 作成の方法は、リンシードオイルに対しシルバーホワイトを5%程度を添加し、ビーカーや鍋などに入れてまぜる。シルバーホワイトを粉で扱うのが怖い人は、絵の具の状態で入れてもかまわない(絵の具でも毒性には気をつけるべきではあるが)。まぜたら、火にかけて180℃くらいに熱する。このとき、底が焦げやすいので、できればセラミック金網をしいて、ひんぱんにかき混ぜるのがいい。天ぷら用温度計は用意しておくべきである。不用意に火にかけていると油は思ったより高温になり、突然火柱を上げる(実体験)。そういう事故にそなえ、ぬれ雑巾や消化器を用意した方がいい。火にかける時間は一時間半~二時間程度である。色はだんだんとコーヒー牛乳色からコーヒー色に変わっていく。

 できあがった後も顔料のカスみたいなものが沈殿しているので、瓶などに保存するとき、ガーゼやストッキングで漉すと不純物のない油がとれる。

 

 ブラックオイルは乾燥は猛烈に早い。薄塗りのグレーズに用いた場合など、翌日には加筆できる。ただし、煮た油独特のいやな脂っこさや、色の暗さから明色に使いづらいといった短所も持っている。

 

 あるお方が、かつての巨匠たちは乾燥の遅さの問題を解決するため、このブラックオイルを用いていた、と説いていた。私はこの説には懐疑的である。なぜなら、ブラックオイルはそもそもあまりに汚い油で、顔料のうつくしさを尊重した昔の人たちがそれを鈍らせる油を選択するとはとても思えないというのが一つ。もう一つに、色が綺麗で乾燥も早いサンシックンドという方法もすでにあったからである。ブラックオイルはおそらく、錬金術的方法によって必然的に発見されたとはいえ、その用途は習作に限られたのではないかと思っている。

 

 余談だが、シルバーホワイトは油と煮ることなしに、乾燥促進剤として作用する。絵の具の状態で他色に微量を混入するだけで、乾燥は幾分早まる。これは鉛化合物としてそういう性質を持っているからで、この特徴を拾ったシッカチーフブランという乾燥剤もある。液状で、無色透明、おだやかな乾燥作用がある。

 だが、とにかく繰り返し注意したいことには、シルバーホワイトは死人を出しまくってる顔料ということである。粉で取り扱うのであれば、自己責任で、そして他人が出入りする空間では粉で展開してはいけない! 水銀化合物やカドミウム化合物よりヤバイと、心して、できれば粉では扱わず、やむをえない場合はマスク手袋を着用するように。