生のリンシードオイルを(ポピーでもなんでも油ならよい)、水を入れた水槽などに薄く張り、埃が入らないように蓋をしといて、毎日かき混ぜながら太陽に晒して作るオイルである。日光による漂白と、水による洗浄によって油が綺麗になるほか、自然にある程度乾燥するので生の油より乾きが早くなる。紫外線が強まる五月~夏季にやると早く仕上がる。作るとき、放置していると皮膜ができてしまうので毎日かき混ぜるのは忘れないよう気をつけなければならない。蜂蜜のようにどろっとなるまで濃縮すれば完成だが、好みで早めに引き上げてもいい。
サンシックンドオイルはもっとも伝統的な加工油で、現在も多くの画家が自作しており、各人の創意工夫が聞かれる。エアーポンプを仕込んでいればかき混ぜる手間が省ける、というものなどである。これは有名な手で、私も試してみたが、あまりに早く油が空気を含んで濃縮してしまい、若干日晒し期間が不足してしまうのを感じた。
その他、少量を作るときはペットボトルに入れておけば混ぜるときは振り回すだけでよくて手軽、だの、水にアクアリウム用のバクテリア石を入れておけば雑菌臭くならない(サンシックンドオイルは水槽を長期間野ざらしするのでどうしても臭いが出る)、だのの工夫がある。この二つは私が自分流にやったことなので、うかつに信用しないでほしい。
オイルが十分濃縮したと思ったら、おたまなどで掬い、ビンに移して保存する。もしくは、安全を期すならオイルをいったん鍋などに入れて加熱してからの方がよい。
というのは、サンシックンドオイルは長期間水と混ぜさせられていたので、若干の水分を含んでいるのである。水と油、などという慣用句もあるが、このこたちは意外に混ざる。これは振動エネルギーによるものである。
その水分が含まれたままビン詰めされた場合、稀にではあるが中で水が蒸発して破裂する危険がある。そのため一度加熱して水分を飛ばして安全性を高める。市販されているサンシックンドオイルが茶色いのはこのためで、事故を起こさないため煮ているからだ。自作したオイルはそのままだと明るい色である。
まあ、破裂は滅多に起こらないし、水分を含んでいるからこその利点もある。テンペラなどに油を添加する場合、こういう水分を含んでる油は水と親和性が高いので、混ぜやすく使いやすい。また明るいサンシックンドオイルは自作ならではのものだ。自分で釣った川魚を自己責任で刺身で食うようなもの……なのかな。
ボイルする場合は130℃ないし150℃で数時間煮る。昔はもっと高温で煮ていたようだが、そうすると油が暗くなると思う。いずれにせよ乾燥はより早くなる。
また煮るときにマンガン、鉛、コバルトなどの乾燥促進剤になる金属を入れたり、管か何かで息をふーふー吹き込んだりすると更に乾燥が早いオイルになるらしい。これは私はやったことないので、伝聞である。
ちなみに晒したのちボイルした油はラングレは伝統的な方法として肯定しているが、デルナーは市販のものに限ってはボイル油は絵画に用いるべきではないと言っている。
またラングレ「油彩画の技術」では、油を煮るときににんにくを入れると温度や煮え加減が分かるから絶対に入れろ、というパチェコの処方を紹介している。にんにくは昔の文献にはしばしば登場するが、その万能ぶりに涙させられる。塗れだの搾りいれろだの……本気か?
サンシックンドオイルの使い方としては、生のオイルよりも濃いので、中層~仕上げで使うのが普通だと思われる。極端に希釈するか、あるいはかなり早い段階で引き上げた油だったら、描き始めから生の油と同等に使っても大丈夫だろう。特性を活かすのであれば、ツヤがあり、なめらかなエマイユ(釉薬)状の絵肌を作るのに向いている。煮てない状態だと前述の通り水分を含んでいるので、緊密な乾燥状態を作るなら樹脂を少量添加したほうがいい。にんにくとの併用は寡聞にして聞かない。情報を求めている。