夜遅く、埼玉に着いた。

車内に残った私と息子2人。


その時、突然
本当に驚くくらい突然、

息子が激しく泣き出した。


息をするのも苦しそうなくらい、むせび返しながら

大声で叫ぶように。

『嫌だ。仙台に帰りたい。みんなと離れたくないよ。仙台がいいよぅ。』

初めて感情をあらわにしながら激しく泣いた。


そんな息子を初めて見た。

今まで、一言もそんなことは口にしなかった息子。
普段からどちらかというとひょうひょうとしていて

『転校さみしい?』と聞いても、
『うん、さみしいよ。』と言う割には、
拍子抜けするくらいあっけらかんとしていた息子に

『子供だからまだ別れの意味が分からないのだろう』と、ある意味、大人の都合でいいように捉えていた。



2人で泣いた。

車の中でずっと泣いた。


子供だから、と、鷹をくくっていた自分を激しく責めた。


大人と違って、この子達にとっては、
もう自分達の力ではどうしようもない見えない力。

会いたくても会えない大切な友達。


学校から帰ってくると、玄関にランドセルを放り出し、大声で

『友達と遊びに行っていい⁉︎』と
毎日同じことを聞き、

『いいよ。』

と言うと
本当に嬉しそうな笑顔で一目散に公園に出かけていっていた毎日。


ごめんね。

本当にごめん。


涙の止まらない息子を抱きしめながら
ようやく私も気づいた。


この子達にとっては、もう仙台がふるさとだったのだ。


気づくのが遅くてごめん。

ふるさとを奪ってしまってごめん。


息子の涙を見て
ようやく覚悟が芽生えた。

私がこの土地に帰ってきた意味。
またこの地に帰ってこの地で生きていく意味。


子供達にこれ以上辛い思いはさせない。
この子達を守っていく。
埼玉でもたくさんの思い出をいっぱい作ってあげる。



ふと、自分の小学生の頃を思い出した。

名古屋の友達。

もう二度と会うことは叶わないと思っていた友達とも
今はSNSのおかげで、大人になって繋がった。


卒業アルバムには載らない息子。

みんなが大人になって、息子を探せるように
息子の名前を忘れないように

ちゃんとママが繋がっていてあげる。


仙台のお友達にも会いに行こうね。
仙台のお友達にも遊びに来てもらおうね。


高速道路を運転しながら
この5時間の移動が、心を鎮めるワープの通り道なんだと言い聞かせながら走っていた。

もう戻れない過去。
これから待っている未来。

ずっと抑えていた感情の涙が
最後の最後に
息子のおかげで私も吐き出せた。

これでやっと前に進める気がする。

ガラスの仕事に対しても、引越しのドサクサでちょっとブレかけていた気持ちが
完全にリセットされた。


HAKU。


そう、またまっさらになって初めからリセットする。

日々の暮らし
何もかもがまたここからのスタート。

積み重ねはもういらない。

また新たにここから始めよう。