今宵の1枚は
ピョートル・チャイコフスキー
1.交響曲 第4番 ヘ短調 作品36
エクトル・ベルリオーズ
2.序曲《宗教裁判官》
3.序曲《ローマの謝肉祭》
パリ音楽院管弦楽団
指揮:アルベール・ヴォルフ
録音:1955年6月20-22日 パリ、メゾン・ド・ラ・ミュチュアリテ(2,3)、1959年5月5、6日 パリ、メゾン・ド・ラ・シミ(1)
前回に引き続き、
またまた古い録音。
指揮者のアルベール・ヴォルフ(1884~1970年)は、ラヴェルやプーランクのオペラ初演を手掛けたり、オペラやバレエ音楽の指揮に定評のある指揮者です。
何と20世紀の大巨匠フルトヴェングラーと差ほど年齢は変わらず(フルトヴェングラーは1886年生まれだから2歳年下)、19世紀生まれの音楽家でステレオで録音が残っているとは、凄いことです。
逆にフルトヴェングラーが短命すぎた(彼があと10年長く生きていれば20世紀の指揮者界は全く違うものとなっていたと思います)。
さて、ヴォルフのCDの魅力は、何と言ってもこの時代以降徐々に聴ける機会が少なくなったバソンを始めとするフランス式管楽器の独特な音色の豊かな響き聴けること。
ビブラートの掛かったホルンの響きなど、もう今のフランスのオーケストラからは聴くことできない音色です。
パリ管弦楽団も設立当初は、フランス式管楽器を使用していたのですが、バレンボイムが音楽監督時に不安定な音色のフランス式より音色の安定するドイツ式管楽器に入れ替えてしまったので、この時代の古きフランスオケの音色は本当貴重な音源。
余談ですが、パリ管弦楽団の初代音楽監督ミュンシュが急逝したあと、音楽顧問として赴任したカラヤンがバソンを使ってるのを聴いて『未だに使ってるの?』ってビックリしたって話もあるので、世界に通用するフランス最高のオケとしてグロバール化を目指す上では、必要なことだったかも知れませんが、21世紀の現代はローカルな響きが薄れ、お国訛りのなくなった昨今のオケは正直寂しい気もします。
ただ時代の流れではジェンダーやグロバール化は当たり前なので、致し方ないんでしょうね。
その内、日本の伝統でもある歌舞伎や相撲(こちらは国際化の方はしているが)もグロバールやジェンダーの時代は来るんでしょうか。
演奏の方は、バレエ音楽が得意とあったので、優雅なチャイコフスキーを想像してましたが、これが全くのハズレで、かなりダイナミックにグイグイとオケを煽る熱演‼️
フィナーレの叩き込みは、木さん的にはムラヴィンスキーと同格かな。
古き良きフランスの音色に彩られたダイナミックなチャイコフスキーこれは推しです。
録音も年代の割には良好。
余白のベルリオーズの序曲は、ヴォルフもパリ音楽院管弦楽団も面目躍如。
名演です。
パリ音楽院管弦楽団のフランス語表記『Orchestre de la Société des Concerts du Conservatoire』って素敵な響きですよね。
因みに同コンビによるグラズノフの『四季』も素敵な演奏ですよ(但し『四季』の録音は音の潰れなど古さを感じます)。