ショスタコーヴィチ
チェロ協奏曲第1番変ホ長調op.107
チャイコフスキー
交響曲第1番ト短調op.13「冬の日の幻想」
《ソリストアンコール》
J.S.バッハ
無伴奏チェロ組曲第2番ニ短調BWV1008~サラバンド
チェロ:アレクセイ・スタドレル
コンサートマスター:山本友重
指揮:ミヒャエル・ザンデルリンク(ドレスデン・フィル首席指揮者)
ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲でソロを担当したスタドレルさんは、お名前も演奏も今回初めて。
先月聴いたカプソンさんも素晴らしかったけど、お初のスタドレルさんも深々とした重厚なチェロの音色にうっとり。
サンクトペテルブルグ生まれのまだ若いチェリストですが、東京文化会館に朗々と音色を響かせ、同郷の大先輩でもあるロストロポーヴィチに捧げられたチェロ協奏曲を堂々と聴かせてくれました。
ミヒャエルさんがチェリスト時代最後に演奏したのがこのチェロ協奏曲だそうで、チェリストと指揮者の立場からこの曲を知っていることや、またスタドレルさんをチェリスト時代に指導したこともあるので、スタドレルさんの音色も熟知しているはずですから、スタドレルさんのチェロの響かせ方や音色を活かし、都響を巧みにドライブした素晴らしいサポートでした。
但し、ミヒャエルさんは後半チャイコフスキーにも感じましたがオケ(都響の特性もある)を明晰に鳴らす傾向があるので、スタドレルさんの濃厚な唄い回し対して、ドライな伴奏をしていたような気がします。
アンコールのバッハも広大な東京文化会館に響き渡り、素晴らしかったです。
(ミヒャエルさんは、ホルン奏者の隣にちょこんと座り、スタドレルさんのアンコールに耳を傾けていたのが、若きチェリストを見守っている感じで印象的でした)
さて、後半はチャイコフスキーの作品の中で一番大好きな交響曲第1番「冬の日の幻想」!!
この曲を実演で聴きたいと願いつつやっと願いが叶いました!!
しかも、ミヒャエルさん都響なんて!!
最高に幸せ!!
聴く前からテンションは最高潮(笑)
もちろん演奏は、思い入れのある曲であることを差し引きしても大満足!!
40分ちょっとの演奏時間が瞬く間でした。
大好きな第1楽章からチャイコフスキーの紡ぎだす冬の幻想世界へ。
冬の日の幻想を聴いてると故郷の冬の日が瞼の奥に浮かびます。
故郷は、真冬だと日中晴れても氷点下という日があり、そんな空気までも凍りついた感がある故郷の冬はまさにこの交響曲が描き出す世界にピッタリです!!
第2楽章は、炬燵でうとうとしているようなまったり感。
第3楽章は、粉雪が舞っているような情景。
第4楽章は、打って変わりドンちゃん騒ぎ!!
都響の技術力の高さと透明感ある演奏は、相変わらず素晴らしく、ミヒャエルさんも洗練された明快な演奏を意図していたのか都響と持つ方向性とは合っていたと思います。
あまりにも都会的に洗練された演奏だったので、この曲の持つスラブ臭や土俗的なものが少なめに感じたのは、完璧な演奏を聴き、ないものねだりだとも思いますが…それはスヴェトラーノフさんのスラブ魂が爆裂した演奏をCDを聴くことで我慢・我慢(笑)
この演奏を聴き、若きマイケル・ティルソン・トーマスさんがボストン交響楽団を指揮した爽やかな演奏(名盤です)を思いだし、ミヒャエルさんと都響も敢えてロシアのオケの伝統でもある豪快・重厚に響かせ厚ぼったくなる解釈を避け、楽譜に忠実に表現し、本来のチャイコフスキーの持つ魅力を余すところなく都響から引き出したミヒャエルさんは流石です!!(コントラバス6本の14型の弦の編成も厚ぼったくなるのも避けたような気がします)
フィナーレのコサックダンスぽいところのリズムも刻みもアクセントを付けオケを鳴らしていたものミヒャエルさんの拘りが感じられ、とても満足した演奏会でした。
東京文化会館のドライな響きも今回のプログラムと合っていたと思います。
2015.12.10(THU)
19:00
東京文化会館