ラザレフが刻むロシアの魂SeasonⅢ ショスタコーヴィチ4
ストラヴィンスキー
バレエ音楽「妖精の口づけ」
チャイコフスキー(タネーエフ編曲)
二重唱「ロメオとジュリエット」
ショスタコーヴィチ
交響曲第9番変ホ長調作品70
指揮:アレクサンドル・ラザレフ
ソプラノ:黒澤麻実(ジュリエット)
テノール:大槻孝志(ロメオ)
ソプラノ:原彩子(乳母)
コンサートマスター:木野雅之
ソロ・チェロ:辻本玲
一筋縄ではいかないショスタコーヴィチの真髄にして問題作「第9」。
ラザレフとのショスタコーヴィチ。大好評を受けて今シーズンも継続しております。今回はディヴェルティメント風の交響曲第9番がメインです。「第9」と言えば作曲家の誰もが恐れおののくベートーヴェンのそれが思い出されます。それは約70年前のソ連でも同じことでした。そんな国家や民衆の期待を嘲笑うかのように、一見ピエロ風のこの交響曲が生まれました。この屈折ぶりがショスタコーヴィチの真髄でしょうか…?
前半にはラザレフ自身が熱望したストラヴィンスキー「妖精の口づけ」を並べました。チャイコフスキーの引用が含まれ、偉大な先達に捧げられたリスペクト作品とも言える素敵な楽曲です。また同じくチャイコフスキーの有名な序曲「ロメオとジュリエット」の旋律に歌詞をつけたタネーエフのデュエットもめったに聴くことの出来ない逸品です。(公演チラシより)
日本フィルハーモニーのコンサートは、いつも素敵♪
でもラザレフさんが指揮すると日フィルの素敵さが倍増する…そんな至福のひと時でした♪
前半、ストラヴィンスキーの「妖精の口づけ」は、コンサートチラシにありましたが、ラザレフさんが熱望した演奏が実現した一曲♪
この作品は、ストラヴィンスキーの新古典派主義時代…プルチネルラや交響曲ハ長などの作品がこの頃の代表作…の作品でチャイコフスキーのメロディ(歌曲やピアノ小品等)を引用しつつ、乾いた響きが特徴です。
正直、冗長な部分もあり作品としての完成度は、彼の有名曲と比較すると劣るのですが、ラザレフさんはこの作品を愛しんでるだけあって、結構聴かせてくれたのではないかと思います♪
また、日フィル奏者のソロが活躍する部分も多く…辻本さんのチェロ、伊藤さんのクラリネット、藤原さんのトロンボーンなど…さながら裏管弦楽のための協奏曲(本家バルトークは、代々木で同日パーヴォさんがN響で指揮してます)って感じでした(笑)
ストラヴィンスキー自身、後年、全曲から抜粋し、ディヴェルティメントとして発表し結構お気に入りの曲だったみたいです♪ラザレフさんの意図も後半ディヴェルティメント風なショスタコーヴィチの9番との対比を考えたのかも知れません。
最後静かに終わる部分もラザレフさん音が消えても空中で手をふらふらと動かし、この曲の余韻までも指揮していたの流石名匠!!
もちろん会場の聴衆もフラブラなどなく、ラザレフさんが手を降ろしてから拍手。
この素晴らしいマナーもラザレフさんと日フィルを愛する聴衆だからこそだと思います。
休憩を挟み後半1曲目は、チャイコフスキーの有名な幻想序曲「ロメオとジュリエット」の旋律も元にタネーエフ(チャイコフスキーの弟子でもあった)が編曲したもので、歌詞の内容から有名なバルコニーのシーンを二重奏で描いたものです♪
有名な美しい旋律をソプラノとテノールの二重奏で聴かせるのですから、もうチャイコフスキーファンには堪らない1曲です♪
こんな佳曲を実演で聴けてことに感謝とプログラムにさり気なく入れるラザレフさんの見識の高さには驚きます♪
この曲…二重奏とありますが実は乳母役のソプラノがほんの一瞬出てきます。
今回の公演でも乳母は、ジュリエットを探し呼びかける設定から舞台後方(残念ながら木炭の席から見えず想像ですが)に位置していました。
二人のソプラノ歌手を要するとは贅沢な曲ですね(笑)
さてメインのショスタコーヴィチの交響曲第9番♪
もうこれは素晴しいの一言としか言いようがありません。
ラザレフさんいつもながら早目のテンポで駆け抜けるので、スピード感は半端ないのですが、実はこの曲の裏にある皮肉や哀愁と言ったものも上手く表現していて、単なるディヴェルティメント風な軽妙な交響曲でなく正にショスタコーヴィチの真髄を聴かせてくれたと思います♪
鈴木さんのファゴットソロなど日フィルの名人芸ぶりには目を(耳を)瞠るし、ラザレフさん強弱の対比の微妙な表現とそれに応える日フィルの上手さは絶品!!
最後、振り終えてドヤ顔で客席に振りかえる様は、してっやったりって感じです(笑)
カーテンコールで嬉しそうにオケの面々に握手や労いの言葉を掛けるラザレフさん、その姿を見るとオケと聴衆から愛される理由が分かります♪
毎回、毎回思うのですが、ラザレフさんと日フィルの関係は、見ていてこちらまで嬉しくなってきます♪
たまたま前日のNHKFM、DJクラシックで広上淳一さんが日フィルのことを「手作りのおにぎり弁当」と仰っていましたが(手作りのおにぎりの様に温かみがある)、その言葉を借りるとラザレフさんと日フィルはさながら「愛情たっぷり手作りのおにぎり弁当」って言葉がぴったりです♫
終演後、ラザレフさんのサイン会がありました♪
2015.10.24(SAT)
14:00
サントリーホール